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凪の中の突風  作者: NBCG
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103話 再上陸作戦

明海二十年 11月20日 北海 雄州派遣艦隊 旗艦 角端 第一会議室


「再上陸作戦は、前もって予告した通り、明日、11月21日に行われる。今回はその作戦の最終的な確認を行うこととする」


上官がそう告げ、皆の背筋が改まって伸びた。


「今回の作戦は、前回行われた上陸地点からおよそ30㎞東の海岸から上陸を行う。今回は前回の反省を活かし、対化学兵装を上陸部隊は勿論のこと、航空戦力にも中和剤などを盛り込み行う。作戦内容は改めていうと、第一は前回と同様、浜綴の爆撃機、攻撃機、偵察機で対潜哨戒を行いつつ上陸地点に接近。第二に浜成合同航空部隊で敵地上戦力、特に対空兵器と列車砲のような強大な対艦兵器の破壊を行う。第三に上陸部隊の上陸。航空部隊の支援を得つつ、橋頭保を確保。そして最後に、継続的な上陸が出来るように、沿岸の整備と陣地構築となる。また、浮蘭詩王国の戦況報告から、塹壕戦で戦線が膠着することが予想されるが、成会矛が新兵器を開発したということで、それで上陸を円滑に行えるとの予想がなされているらしいが、どこまで信用できるか分からないからそれは暫時状況を見て判断してくれ」


そこで一人、手が挙がる。


「どうした?」


「その新兵器とやらの見た目は分からないのか?場合によっては誤射してしまう可能性もあるぞ」


「それは、上陸後に伝えられるらしい。出来るだけ秘匿しておきたいという、向こう側からの要請だ」


「……分かりました」


そんな作戦の最終確認もあり、作戦は発動された。


同月 21日 成会矛軍上陸地点 上空


『今回は列車砲、飛行機が未だ確認されていない。あと少しで成会矛軍の上陸部隊が到着するが、列車砲の線路と前線に投入される藩泥流の部隊を速やかに叩く。爆撃部隊も気を引き締めろ』


『『『応!』』』


無線越しに暑苦しい声が響いて来る。


それほどまでに今回の作戦に力を入れているということなのだろう。


未だ敵性航空機は見えないので、自分たちは今、哨戒飛行をしている。


浜綴の爆撃部隊は地対空兵器を、成会矛の爆撃部隊は比較的反撃が少ないと思われる、線路の爆撃を行っている。


「暇だな」


「仕事が無いのは良いことだ。また化学兵器を使われるのに比べれば、十二分にマシだろう」


「まあな」


愚痴る小川を宥める。


『上陸部隊の上陸の開始を確認。上陸部隊は陣地構築を開始した。警戒しているが、未だ敵飛行機部隊は現れていない』


『こちら鯖戸隊。陣地南東、距離1200のところに敵部隊と思われる陸上部隊を確認した。海眼、どうする?』


『手すきの爆撃部隊、いるか?やって欲しいんだが』


『こちら耕占隊、その役割を仰せ遣いたい』


『ならば耕占隊、頼む』


『耕占隊、了解』


『こちら鯖戸隊、耕占隊の到着まで、確認した部隊を監視する』


『耕占から鯖戸、申し訳ないが頼む』


『鯖戸隊、了解』


今回の作戦は前回のものとは格段に上手くいっていた。


皆、何かの罠かと疑っていたが、敵が現れると同時に、これが罠ではないようだと思った。


『方位280、距離2300に不明機群。恐らく以前の上陸地点に上陸すると考えていたのか?』


「兎も角、対処することに変わらない。数は?」


『数は30から40程度。詳しくは分からない』


「了解した。静凪隊、これを積極的に迎撃する」


『舞武隊、静凪隊と共に迎撃します』


「静凪隊より舞武隊へ。支援、感謝する」


敵機数は前回の機数の合計より少し少ない程度。


前回の第二波よりも若干多い。


こちらの航空戦力は殆ど変わっていないことを考えると、少し分が悪いか。


前は第二波の化学兵器の投下によって撤退が余儀なくされた。


それらと同様の大部隊を相手にしていると考えると、今が正念場というものだろう。


気を引き締めなければ。


『海眼より全作戦機へ。交戦を許可する!』


その言葉を聞くまでもなく、戦闘態勢へ移行する。


数多くの敵機を掻い潜り、爆撃を行うと思われる飛行機を攻撃する。


「相坂、敵機を一機撃墜」


「小川、敵機、一機撃墜!」


戦闘機は確かに落とせば自らの安全を高めることができるが、作戦自体には影響は少ないだろう。


それに対して爆撃機は、倒しても自分たちの安全には殆ど寄与しないが、作戦遂行には大きく関わってくる。


『芝、敵機を一機撃墜した!』


『原田、一機撃墜!』


『こちら貫井、敵機に命中するも、落すに至らず』


前の経験も活かされ、次々と敵飛行機を落としていく。


『こちら枢、問題は無いが、主翼に被弾した』


「……だが、この敵機……」


「前の時より旋回半径が狭くなっている?」


技術は日進月歩とも言うし、多少改良されていてもなにも可笑しくはない。


だが、脳裏に過る、嫌な考え。


前回、成会矛の飛行機が落とされ、恐らく鹵獲されたことも考えられる。


あれは布張りの飛行機である為、そこまで改良されたとも思えないし、全金属翼の飛行機と布張りの飛行機であれば材質が違い過ぎ、旋回半径には寄与しないはずだし、機関も十中八九関係などないだろう。


それでもその考えがまた頭を過る。


「チッ……」


その考えを少しでも振り切るために、敢えて大きく舌打ちをした。


『敵航空戦力壊滅状態。敵航空勢力、未だ撤退、攻撃の中断をせず。敵は交戦の意思有り。続けて迎撃せよ』


『『「「了解!」」』』


そして続けて、敵機が撤退するまで、この戦いを続けていくのであった。

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