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凪の中の突風  作者: NBCG
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94話 雄州大戦

明海十九年 10月27日 航行艦隊 旗艦 栄龍 飛行甲板


俺は三原みはら 雅人まさと


階級は少佐である。


最新鋭の航空母艦に乗る飛行隊の中でも階級は余り高くないが、載せられ、一戦闘中隊の隊長を務めている理由と言うのは、「風切隊の訓練に積極的に参加していた」からという理由である。


俺は今、母国浜綴が宣戦布告した国家、藩泥流の有する南洋諸島の攻略に対する準備中である。


とはいえ、あと5日もしない内に作戦は発動されるため、そのためにどうにかするということもないのだが。


基礎体力の自主鍛錬を行い、体調を整えてさえいれば、特にこれと言ってすることは無い。


南洋諸島へ投入される戦力は、自分たち元からの航行艦隊の所属艦と、航行艦隊に組み込まれた外部からの艦が多少ほどである。


また、唐に駐留している大成帝国の艦隊とも合同で作戦が発動される。


浜綴は航空母艦6隻、超弩級戦艦2隻、巡洋艦8隻、そして駆逐艦や掃海艦、敷設艦、補給艦など複数が主な戦力を成す。


大成帝国は前弩級戦艦2隻、巡洋艦4隻、駆逐艦少数と他少数である。


本当は大成帝国を構成する自治領マルシアの艦隊も組み込まれるはずであったが、マルシアでは白豪主義が主流であり協力を拒否、今回の協力は本国の指示で動ける艦のみである。


対して藩泥流の戦力は、準弩級戦艦1隻、巡洋艦3隻、駆逐艦、駆逐護衛艦、哨戒艦複数と考えられている。


航空戦力は空母艦載機300程度と戦艦と巡洋艦に搭載された水上機数機を合わせ、浜綴が300機強、大成帝国が0、藩泥流も存在していないと考えられている。


大成帝国のものは前時代のものを充てているため、多少心許ない気もするが、この戦力差ではまず、負けることは無いだろう。


当初、軍上層部は消耗を恐れ、新鋭装備艦を多数保有する航行艦隊よりも、各地方基地からの旧式艦を投入する予定であったが、大成帝国が戦力評価としてあまり期待できないと判断したこと、マルシアの支援が行われないと思われたこと。


そして万一藩泥流の軍に航空機が投入でもされていたら……という考えからである。


軍も政治家も、藩泥流が航空機を保有していること自体は把握しており、その機体がこちらにまで回ってきてしまっている可能性を考えたためである。


そして、陸軍との共同作戦でもある。


彼らから装備が不十分などと言われれば立場が危うくなるとでも考えたのだろうか、恐らくそれもあるのだろう。


陸軍の戦力は覚えていないが、それなりの戦力が投入されるらしい。


翠島には、藩泥流の陸海軍基地があり、浜綴陸軍基地と海軍の泊地もあるが、現在睨み合いとなっており、戦闘までには至っていない。


浜綴は軍や大成帝国の支援のための海路を保持するため、藩泥流も海上補給路を断たれたくない為か、海上戦闘を先に進めたい構えらしい。


互いの考えが同期したのか、恐らく初戦にして最も大規模な戦闘になるだろう。


翠島攻略戦に支障が出ないよう、この戦いで藩泥流に対して大打撃を与えなければならない。


「三原少佐、いいですか?」


久寿軒くすのき大尉……、なんだ?」


彼は久寿軒大尉。


自分の隊、空母応龍所属、第九二航空群 第九三一戦闘飛行中隊、射蝶いちょう隊の二番機を務めている。


「第九三三……澄麗すみれ隊の隊長が、作戦発動前に一度、戦闘中隊の隊長同士で話がしたいとのことで」


「姫嶋隊長か……分かった。どこだ?」


「第二会議室です」


「行ってくる」


「了解しました」


刻一刻と、俺の初の実戦が迫るのであった。


同月 30日 大成帝国 首都 マッドフォート


「浜綴が、太平洋戦線に参戦か……」


「宣戦布告してからしばらく経ちますが、やっとですね、首相」


「只でさえ関係ないんだ。巻き込んでしまって申し訳が立たないな」


「しかし、彼らが宣戦布告しなくとも、この物量の差。本土が拙いと感じれば、極東でせめて、と考えて、何れ戦闘は避けることはできなかった可能性も考えられます」


「それはいいんだが……マルシアがなぁ」


「それは仕方ありません。帝国の一部ではありますが、自治を認めたときからマルシアはマルシアの土地に住む者の考えの下でしか動かなくなりました」


「どの国とも、軋轢はなるべく避けたいが、こればかりは……はぁ」


「心中お察しします」


「フランシス王国も役に立たず、苦境に立たされている。明日は我が身だ」


「海軍力の差を考えたら、我が軍は二度三度打撃を与えられても、負けることはないと考えられますが……」


「いつの時代でも、慢心は自らを殺すことになる」


「失礼しました」


「ロマーナとの密約で、なんとか三国同盟を崩すことが出来たのは大きいが……」


「どうこちら側に迎え入れるか……ですね?」


「ああ、数少ない航空機保有生産国の中で、戦力として有力な国家だからな」


首相たちが話をしていると、部屋にノックの音。


「入れ」


「失礼します」


「どうした?」


「軍からの戦況報告が」


「分かった。報告してくれ」


「では、まず……」


雄州は、これ以上ない地獄のような戦場を見せていた。


その報告書にも、各国と自国、そして敵国が生み出す地獄の様相が書かれていた。


「今日も今日とて……か」


「はい。直接の戦場については膠着状態となったまま、形の残っている市街地は民間人被害が未だ増え続けています」


「はぁ……」


首相は再び溜息を吐くのであった。

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