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序章:ペンタの冒険者時代80


序章ー109 ヒムカの里にて(9)



「この時期、ヒムカの里では祭があって、その日の夜は、木のやぐらを立てて、そこで太鼓をたたきつつ、みんなで飲めや歌えで楽しむんですよ」


というクオンさんの言葉の通り、里にある広場では木のやぐらの上に太鼓が置かれ、祭りを楽しもうと里の住人が集まっていた。

明かりは松明や、一部はろうそくを入れた紙の提灯などが、夜の広場を照らしている。


「ペン様、これからここで踊るのですよね? パートナーとして立候補してよろしいですか?」


俺にそう言ってきたのは、マリー嬢。奇麗な柄の付いた浴衣に身を包んで、俺に手を差し出してくる。

身を包んだのは白地に藤色の花柄の浴衣で、水色の髪の可憐な彼女に良く似合っている。


「踊るといっても、ここで言う踊りはたぶん盆踊りーーーー並んで一人一人で踊るやつだと思うけど」

「そ、そうなんですか……?」

「こらっ、ペンタ! マリー様を残念がらすとは、何事だ!」


そういって、吠え掛かってくるのはセレスティア。灰色の髪を三つ編みにし、紺色の浴衣でうなっている。

何事だといっても、盆踊りは俺のせいじゃないぞ。そう思いつつ、肩をすくめると、


「まあまあ、セレスちゃん落ち着いて落ち着いて……ペンタ先生、それじゃあ、踊り方を教えてもらえますか?」


などとセレスをなだめながら、リディがそう言ってくる。

リディの格好は、赤をベースとした浴衣に、ポニーテールがぴょこぴょこと動いている。


「おお、いいぞー。ついさっき、クオンさんから踊り方を教えてもらったからな」

「なんだ、お前も初心者ではないか」

「もー、セレスちゃんたら……」


そんな風に、盆踊りの振り付けを教えていると、里長であるジュウベエさんが、やぐらの上にのり、祭りの開催を宣言した。



「よよよよ……うう~、うまくいきませぇん」

「ほら、こうよ。ベルディアーナ」


やぐらを囲んでの盆踊り。おどる輪の中で、目立っていたのはエルフの姉妹、ウルディアーナとベルディアーナである。

似通ったグリーンの色の浴衣を身に纏い、盆踊りの列に加わっているが、よたよたと頼りなさそうな振り付けのベルディアーナと、キレのある動きのウルディアーナが対照的であった。


「ケットシー印の大判焼きだよー。美味しいよー。クレープもできるよー」

「こちらが、列の最後尾となります!」

「わりこまなくても、たくさんありますニャ!」


会場の隅では、儲けどころと思ったのか、デネヴァが鉄板を持ち込んで即席の露店を開いている。

そこそこ繁盛しているのか、里の人たちが列を作り、ジャネットとケットシーは、列の整理を行っていた。


なお、デネヴァは黄色い色の浴衣。ジャネットは紫色の浴衣を身に纏っている。



そんな、にぎやかな会場を、俺たちは歩き回って楽しんでいた。

あちこちで水田を作った影響か、俺に対して親しみを込めて話しかけてくる里の人も多く、和やかな雰囲気で話すことが出来た。

が、里のゴンタさん、自分の娘を売り込んでこないでください。

そういった話をすると、俺についてきているマリー嬢が、笑顔で威嚇するし、セレスティアも怒り出すんで、はい。


「おお、ペンタ殿。どうですかな。祭りは楽しんでいただけておりますかな」

「あ、ジュウベエさん。セツナも……ええ、楽しんでますよ」

「そうですか。それは良かった」


しばらくうろついていると、里長であるジュウベエさんが、セツナをつれてやってきた。


祭り会場の座ってくつろぐスペースに寄り、そこで話すことにした。


「ペンタ殿のおかげで、水田が増えて、多くの収穫が見込めると、みな、喜んでおります」

「俺としても、収穫が増えれば、米を多く変えますから、俺としても嬉しいところですよ。ところで、この祭りですけど、この後、花火とかはあるんですか?」

「花火? はて、それはなんでしょうか」


俺の言葉に、首をかしげるジュウベエさん。まあ、火薬が発展していない世界だし、花火はやはり、ないんだろう。

じつのところ、半ば予想していたので、俺は笑顔でジュウベエさんに提案してみる。


「祭を祝う余興として、俺の知っている、花火をみんなに見せたいんですけど、よろしいでしょうか」

「ほう、そういうからには、祭りが盛り上がるものでしょうな」


にやりと笑って、GOサインを出すジュウベエさん。許可をもらったので、俺は祭り場の中央のやぐらに上ると、大きな声で会場内にいる者たちに呼びかけた。


「さあさあ、これより始まるは、一世一代、ペンタの手による、花火ショーでござーい!」


と、何となくそれっぽく言いつつ、両手を真上に掲げ、魔力をこめる。

【火魔法】【風魔法】【聖魔法】を混合した球を夜空に打ち上げれば、ドーン!! という音とともに、大輪の光の花を咲かせた。


おお! と会場のあちこちから感嘆の声が漏れる。

魔法を使った花火の再現。大きな花火や、連続打ち上げ花火、ナイアガラなど、百発以上の花火を放ち、大きく会場を沸かせることになった俺であった。



なお、祭りの後、どうやったんだ、教えてくれ! と里の人々に詰め寄られたので、簡単な花火の仕組みと、

魔法での再現方法ーーー【火魔法】【風魔法】だけでもできるが、【聖魔法】を加えることで、さらに奇麗にすることが出来る。

ということをレクチャーすることになった。来年の祭りまでに、里の皆で出来るように頑張るらしい。



そんなこんなで、里の祭りを楽しんだ俺達。そろそろ、里からお暇しようかと思ったわけだが、この里には、温泉の出る宿があり、里を出る前に、花火を教えたお礼に、そこに招待されることとなった。

ヒムカの里の温泉宿に向かうのは、俺をはじめ、マリー嬢たちに、クオンさん、リンネ、セツナと。みんなでくつろぎに行くことになったのであった。


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