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序章:ペンタの冒険者時代75



序章ー105 ヒムカの里にて(4)



釣った魚を入れた桶をもって、川原で調理をしている場所に向かう。

そこは川原に臨時に設えられた仮設の調理場であり、複数の女性が忙しく働いていた。


「すみません、少し調理をしたいので、調理場の隅でも貸していただけませんか?」

「これは、ペンタ様。調理をなさるのですか?」

「って、リンネだったのか」


調理場で働いている一人の女性に声を掛けたのだが、その女性はマリー嬢のメイドであるリンネであった。

普段のメイド服姿ではなく、割烹着にエプロン姿であり、黒髪に良く似合っている。


「リンネです。マリー様に提供される食事ですので、不備がないかの見張り役ですね。調理でしたら、そちらへどうぞ」


そういうと、調理場の空いているスペースを指で示される。

何もないスペースだが、それならそれで何とかなるだろう。


俺は、そちらに移動すると、アイテムボックスから野営の時に使っている調理道具を取り出す。

小型のテーブルにまな板、包丁、調味料各種、それにキャンプ用コンロも取り出して設置する。

コンロの上には鍋を置き、そこに食用油を注いで熱しておく。


まずは魚をさばき、頭と内臓を切り分けておく。切り身にした川魚に薄力粉をまぶして、次に溶き卵、パン粉の順につける。

そうした一連の作業が終わるうちに、鍋に入れた油が熱されてきたので、そこに魚を投入する。

良い感じに揚がっていく魚。火が通るまで待ち、頃合いで油から上げると、こんがりと色づいた魚のフライの完成である。


「よし。それじゃあ、どんどん揚げていくかな」

「随分と、風変わりな料理ですね………」


と、俺の背後からぼそりと聞こえた声に振り向くと、リンネが興味深そうに魚のフライを見つめている。

リンネだけでなく、その場にいた女性の半分くらいは、興味深そうに、こちらを見ているようだ。


「ああ、これは魚を油で揚げたもので、触感が楽しめる料理だよ。塩や醤油をつけて食べるのが良いけど、食べてみる?」

「そうですね。お嬢様にお出しするのなら、どのようなものか知る必要がありますね。それでは……」


といって、魚のフライに口をつけるリンネ。さくっと良い感じの音がして、リンネの顔が幸福そうにほころんだ。


「これは、美味しいです。普段食べてる川魚は、煮て食べることが多いのですが、このような方法もあるのですね」

「揚げたての熱々だからってのもあるけどな。それじゃあ、ついでだし、他の物も作ってみるかな」


美味しいといってもらえて気をよくした俺は、アイテムボックスから鳥肉と、ジャガイモを取り出す。

鶏肉は下味をつけた後、片栗粉と小麦粉を混ぜた衣をつけて2度揚げした唐揚げをつくり、ジャガイモは薄くスライスしたり、一口大に切ったものを揚げたフライドポテトなどを調理した。


「なるほどねえ。こういう風にやればいいのね」

「うちの旦那が持ってきた鳥肉も、からあげってのにしてみようかしら」


とまあ、そんな風に里の奥様方とワイワイと楽しみながら、油を使った料理を作って時間を過ごしたのであった。



「あ、そうだリンネ。ひとつ頼みたいことがあるんだけど」

「モグモグモグ………はあ、なんでしょうか」


唐揚げを幸せそうに頬張っていたリンネは、名残惜しそうに飲み込むと、俺に向き直る。


「マリー嬢に提供する食事だけど、ご飯には白い米を出したらどうかと思うんだけど」

「白い………米ですか?」

「ああ。もみ殻から出た茶色いのが玄米。それの外側を奇麗にこそぎ取ったのが、こちらになります」

「なぜ最後が敬語に?」


と、テーブルの上にアイテムボックスから出した、白米を積み上げる。ここの里に来てから、米を分けてもらって食べたことがあるが、やはり精米していない米というのは、白米慣れした日本人の記憶を持つ俺としては何とも言えない気分になる。

そんなわけで、米を上手に精米できないかと、風魔法を研究して、米の表面だけをこそぎ取る方法を思いついたのであった。


「まあ、3分クッキング的な? ともかく、これを洗ってから同じように炊いてほしい。栄養素としては、外側の部分がないから少し落ちるけど、味は上がるからね」

「………なるほど、それは味見……確認が楽しみですね」


そういうと、さっそくリンネは白米を回収し、米を炊く場所に持って行ったのであった。



そんなこんなで、マリー嬢が主賓の、宴席が始まることとなった。

ヒムカの郷土料理に交じり、魚のフライ、唐揚げ、フライドポテト、そして白米のごはんが宴席に出され、それなりに好評であった。

なお、こののちに、ヒムカの里では料理の研究が盛んにおこなわれることとなったようだ。


ちなみに、マリー嬢が箸が使いづらいということで、俺がマリー嬢に、あーんと食べさせてあげたのは、些細な出来事であったといえよう。


揚げ物と白米テロ。なお作者はガチの料理人ではないので、つっこみどころがあったらご容赦ください。(*- -)(*_ _)ペコリ

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