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序章:ペンタの冒険者時代70


序章ー100 ヒムカの里へ



複数台の馬車にのり、俺たちはヒムカの里に向かう。マリー嬢たちも同行し、彼女を護衛するための兵士も付き従った一行は、それなりの人数の行列となった。


「それでは、リンネ。ヒムカの里について説明してもらえるかしら?」

「かしこまりました、マリー様」


現在、俺はマリー嬢とおつきのメイドのリンネ、ジャネットともに一台の馬車に乗って道を進んでいる。

当初はいつもの面々と馬車に乗っていたのだが、休憩時間の時に、


「長い旅は退屈になりますし、時々は馬車に乗る相手を変えるのも気分転換になるのではないでしょうか」


と、マリー嬢が言いだしたのである。確かに、メンバーを変えるのもありかもしれないと思ったが、


「何をおっしゃいますか! 公爵家のご令嬢が、ご家族でもない異性と、密室である馬車に乗るのはよろしくありません!」


実際に、メンバーを変える際、俺とマリー嬢が同じ馬車に乗ることになると知ると、そんな風に、マリー付きの侍女の一人が、意見をはさんできたのである。

なお、ヒムカの里に向かう際、マリー嬢の身の回りの世話をするため、リンネのほかにも数名、マリーに付き従う侍女が同行していた。


「まあ、ペン様は不埒な真似をなさる殿方ではありませんよ?」

「マリー様がそのようにおっしゃられても、万が一ということもあります」


そういって渋ったものの、マリーの意見が変わらないことと、馬車に乗る際、一緒に乗るのはリンネとジャネットの2名であれば、ということで認められることになった。

黒髪のメイド、リンネは見た目に反してかなりの腕前らしく、女騎士であるジャネットとともに、まずいことがあったら止めに入るようにと、マリー嬢付きの他のメイドに言い含められてから、馬車に乗り込んだ。

俺が信用がないというよりも、高位の貴族の令嬢ともなれば、そのくらいのことはするらしい。



閑話休題



話を戻し、俺たちはリンネからヒムカの里についての情報を聞くことになった。


「さて、ヒムカの里についてですが、複数の集落と、その独特な生活形態が浸透している場所のところがそう呼ばれております」


米という作物を主食とし、食事には2本の棒である箸をつかう。

稲作や狩猟を中心とした生活形態で、畳と呼ばれる草の床や、板敷きの家屋で生活している。

着物と呼ばれる、独特の衣装があるが、最近では他の領土の動きやすい衣装を好んで着る者もいる。

目新しいものを取り入れることにも寛容で、かつての文化を守る家もあれば、タルカンにあるような屋敷を構えている家もある。

………とまあ、日本のようなそうでないような、いうなれば和洋折衷な里であるらしい。


「なるほど、他文化にも寛容な土地柄なんだな」

「ええ、そうですね。とはいえ、マリー様をはじめ、ヒムカの里の生活様式に慣れないところもあるでしょうし、里での宿泊は、我がクスノキ家にご滞在いただくことになると思います」


ヒムカの里出身である、リンネの生家であるクスノキ家は、里でも相応の身分の高さの家であり、家屋の生活様式は、タルカンの家屋と同等のものであるという。

また護衛の兵士たちを寝泊まりさせる家屋も所有しているらしい。


「皆様で我が家に滞在され、お寛ぎいただければ幸いです。なお、里ではこの時期に祭も行われますので、そちらに参加されるのもよろしいかと思います」


その他にも、里長に挨拶したり、温泉が湧いている場所もあるので、そちらに行ってはどうかと提案される。


「おおよその説明は、以上です。他に、何か質問はありますでしょうか」

「あ、それなら田んぼとか見せてもらっていいですかね? 種もみとかもほしいですし」


俺がそう切り出すと、リンネは感心したような目を俺に向ける。


「ペンタ様は、ヒムカの里の食物に興味がおありのようですね。私は生活様式はヒムカの里よりも、他の地域の方が親しみやすかったですが、食事に関しては、ヒムカの里を推奨しております」

「わかります。米、緑茶、あんこ………いいですよね!」

「あなたも、同士ですか」


リンネから手を差し伸べられたので、俺はそれをがしっと握る。

それから、黒髪メイドと、ヒムカの食事について話をして盛り上がっていたら。


「もう、私もペン様と仲良くおしゃべりとしたいのですよ」


と、拗ねたようにマリー嬢から声をかけられたのであった。



その後、休憩をはさんで、リディ、セレスティア、ベルディアーナ、ウルディアーナ、デネヴァ達とも一緒の馬車に乗って、それぞれ親睦を深めつつ、馬車は進む。

そうして、小旅行ののちに、山間部にあるヒムカの里に俺たちは辿り着いたのであった。



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