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序章:ペンタの冒険者時代67


序章-97 火竜討伐戦



「この私の気迫で、火竜が堕ちたのを見たかい? これが”栄光の騎士”グレート・ティーポールの実力さ!」

「いや、落としたのはウルディアーナの矢と丸太だからな」


謎のきめポーズをとる、残念なイケメン騎士であるグレートに突っ込みを入れていると、唸り声とともに地上に落ちた火竜が身を起こす。


「げっ、生きてるぞ!」

「そりゃあ、ドラゴンだからな。地上に激突したくらいでは死なないだろう。ここからが本番だぞ!」


翼を傷つけられた火竜は、怒りの咆哮をあげながら、飛び立とうと翼を広げるが、片方の翼はウルディアーナの矢で穴が開いており、もう片方の翼には、丸太が突き刺さっており飛べる状態ではない。

そんな火竜に向けて武器を構えながら、俺は大きく声を出す。


「火竜の攻撃は、噛みつきと前足の爪、それに尻尾と炎のブレスだ! 特に危険なのは、噛みつきと炎のブレス! ブレスは吐き出す前に大きく息を吸い込むから、その予備動作が見えたら、障害物に隠れるか、ジャネットの後ろに移動するんだ!」

「防御はお任せください」

「ウルディアーナとデネヴァは、遠距離から攻撃、ゲンノスケとサスケ以外のケットシーは、二人についてサポートに回ってくれ」

「わかったわ!」「了解」

「「「お任せくださいですニャ!」」」


「さあ、みんな! 火竜を倒してともに栄光をつかもうではないか!」

「ええいっ、こうなったらやってやる! コンラッド、ビビるんじゃねえぞ!」

「おう!」


前衛は俺、ジャネット、それにグレート、ガルサス、コンラッドの5名が武器を構えて火竜と戦い、他のメンバーは遠巻きに遠距離からの攻撃を行う。

そうして、巨大な火竜との戦闘に突入した。



「くそっ、かてえな!」


ガルサスの戦斧が、火竜の前足に振り下ろされる。翼は被膜によりもろかったが、火竜の全身は鱗に覆われており、生半可な攻撃ではびくともしない。

それでも、時間をかけて攻撃を繰り返すうちに、鱗にも傷がついて攻撃が通るようになってきた。


火竜と戦い始めて半時ほど。巨体ゆえに、こちらの攻撃をかわすことがない反面、そのタフさは閉口せざるを得なかった。

最初は俺も、虎徹をつかって攻撃していたが、相手を倒す前に虎徹が折れたりしないかと不安になり、アイテムボックスに収納し、別の武器を取り出す。

巨人の死体人形に使った、杭打機パイルバンカーを取り出すと、火竜に肉薄し、打ち込む!


「ほう、良い音がするじゃないか!」


ドゴン! という音とともに、鱗が飛び散り、火竜が悲鳴を上げる。ぎろりと、自分に痛手を食らわせたのが俺と認識したのか、俺に向かって爪が振るわれるのを間一髪でかわす。

前衛の俺達が攻撃し、鱗をはがしていくと、そのはがされた部分はもろいのか、後衛の矢や魔法が通りだした。

自然と、俺が鱗をはがし、ジャネット、グレート、ガルサス、コンラッド、そしてケットシーのゲンノスケとサスケたちは、鱗のはがれた部分に攻撃する役割分担が出来つつあった。

後衛組は、矢や魔法を間断なく打ち込み、特にウルディアーナは、遠距離から無防備な部位に矢を命中させるという行為を、何度も成功させ、火竜の身体は矢が数多く突き刺さり、また、氷や雷撃の魔法によってもダメージを受け、満身創痍になっていった。



「これならいけるね! 我々の勝利だ!」

「まだ、戦っている最中だぞ、気を抜くな………っ!」


いくら攻撃しても、倒れない俺たちに業を煮やしたのか、火竜はブレスを吐くために、のけぞるように大きく息を吸い込みだす。


「ブレスが来るぞ! 後衛は、物陰に隠れろ! 前衛はジャネットの後ろに!」

「本当に、ブレスを防げるのか!?」


俺の言葉に、ガルサスが不安そうに声を上げる。実際のところ、確信はないが、火竜を抑えるために前で戦っていた俺たちの周囲には、身を隠す場所がなかった。

前衛組が、ジャネットの真後ろに避難すると、吸い込みを終えた火竜が、こちらにむけて口を開いた!



瞬間、灼熱の炎がこちらに向かって襲い掛かってくる!



「はぁぁぁぁぁ!」


その炎をジャネットの持つ大盾が障壁を持って受け止めた! しかし、ブレスの勢いは強く、じわじわ通されるように障壁ごと、ジャネットが後退する。地面に両足をつけて踏ん張っているが、いまにも吹き飛ばされそうに見えた。


「こいつはまずいな………!」

「ジャネット様、頑張ってくださいニャ!!」


押されていくジャネットに従うように、じりじりと下がる俺達。その光景を見ながら、俺はつい先だっての、ドワーフの親方との会話を思い起こした。


『魔力を込めれば障壁を発生させる大盾だ』

「………ひょっとして!」


俺は、ジャネットに近づくと、彼女が両手で持っている大盾に手をかざす。


「ペンタ殿!?」

「ふんばれ、ジャネット! 俺の魔力も使えば障壁はもっと強くなるはずだ!」

「っ、はい!」


そうして、いまだ続くブレスに負けないよう、気迫とともに、大盾に魔力を流し込む!


「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


俺とジャネットの気迫の声とともに、障壁は一回り大きくなり、火竜のブレスを防ぎきる!

そうして、ブレスが収まった後には、焼け焦げてくすぶる地面の先、大きく消耗した様子の火竜の姿があった。


「火竜の野郎、弱まってやがるぜ!」

「ブレスは、火竜にとっても負担が強かったみたいだな」


ガルサスの嬉しそうな声に、俺は大盾から手を放して、武器を構えなおした。


「相手が消耗している、今がチャンスだ! みんな、いくぞ!」


俺の言葉に、前衛組が応じるように声を上げ、後衛組も攻撃を再開する。



そうして、それからも熾烈な戦いを続けーーーー満身創痍の火竜は天を仰いで咆哮する。

まだ何かあるかと、警戒する俺たちの前で、その身体が傾ぎ……ようやく、火竜は力尽きて倒れたのであった

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