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序章:ペンタの冒険者時代63


序章-89 エルフの里へ



都市・タルカンに来たこともあり、それなりに近場にある、ウルディアーナとベルディアーナの故郷であるエルフの里に立ち寄ることにした。

近場といっても、片道数週間ほどであり、往復でひと月半ほどはかかる予定である。


向かうのは俺とウルディアーナとベルディアーナ。他にはケットシー達の中から、留守番の数匹を除いた面々が同行する。

留守番なのは料理上手の黒猫タンポポ、事務などの頭を使うのが得意なミケ猫カレン、こげ茶色の毛並みで、おっちょこちょいなヨシオの3匹。

なお、デネヴァやジャネットなど他の人間もお留守番だ。


エルフの里は、よほどのことがない限りは人間を迎え入れることはない。里の危機を救った、俺やデネヴァはさておき、他の面々を連れていくことは、良い顔をされないと、ウルディアーナから聞かされた結果だ。

そのデネヴァは、転移ポータルの研究を続けたいということで残留。彼女一人だと、生活面で不安があるので、上記のケットシー達を残していくことになったわけである。



そんなこんなで、準備を整えた俺たちは、馬車を駆り、都市・タルカンを出た。

エルフの里へ向かう道中は、特に大掛かりなトラブルもなく、狩りなどを行いつつ和気藹々と進んでいく。


エルフの姉妹+ケットシー達と、連日焚火を囲んで食事をしたり、水浴びをしたり、並んで寝たりと旅の間で互いの絆が深まったように感じる。


「ペンタ兄さま、寝床の準備が出来ました!」

「おお、ありがとな。えらいぞー」

「えへへ……」


頭を撫でると、ベルディアーナはうれしそうな顔をして微笑する。

旅の間は、最初は俺はエルフの姉妹とは離れて寝ていたが、どうにも、ベルディアーナがそれが不満だったらしく、ある時から川の字になって寝ることを提案された。

俺が中央! というわけではなく、左に俺、真ん中にベルディアーナ、右にウルディアーナという順序で川の字になって寝ることになっている。


末っ子気質で甘えん坊ということもあり、ベルディアーナとしては、左右に俺とウルディアーナに挟まれて満足なようだ。



そんなこんなで、数週間の旅路ののち、エルフの里のある、大森林に差し掛かる。

以前、大森林に差し掛かった時は、魔人四天王の一人、パルペッティの操る、巨人の死体人形に遭遇したが、今回はそういうこともなく、大森林に生息している獣との数回の戦いはあったものの、俺たちは無事に森の中にあるエルフの里へと到達した。


「帰ってきましたね! ウル姉さま」

「ええ、それにしても、あまり変わってないわね……まあ、当たり前か」


森林内にあるエルフの里は、木造の家が立ち並ぶ自然と共存するような場所であり、空気も澄んでいるように感じる。

立ち止まって息を吸っていると、俺たちの来訪に気づいたのか、建物の中からエルフ達が現れて近寄ってきた。


「ウルディアーナとベルディアーナではないか。里を訪れるとは、何か急を要する事態なのか?」

「そういうわけじゃないわ。近場に寄ったから、立ち寄ってみただけよ。何日かは滞在するかもしれないけど、また出ていくことになるわ」

「そうか………そちらの人間は、この前に一緒に戦った男だな。ようこそ、エルフの里へ」

「どうも」


友好的な態度で接してくる、エルフの青年に、俺は頭を下げる。

そうこうしていると、里のあちこちから、エルフ達がさらに集まってきた。


彼らは、ウルディアーナとベルディアーナを囲んで、外の様子や、人間の街のこと、その他にも質問を次々と投げかけてくる。

ウルディアーナはそれに対して、順番に対応していったが、ベルディアーナは次々と投げかけられる質問に、目を回していた。


「ちょっと、そこ! ベルディアーナが困っているんだし、聞くのは私にしなさい!」

「うぅぅ~ウル姉さまぁ~」


と、そんな騒動があったのち、俺たちは里長である壮年のエルフ、オーグルードと面会した。

エルフの里に数日滞在する許可をもらうのと、里を出てからの二人の行動を報告するためである。


「………なるほど、魔神の迷宮の探索は、進んでいるのか」

「はい。ですが、奥に進むにつれて、敵は強くなり、装備が心もとないので、ドワーフの里に立ち寄って、装備の強化をするつもりです」


俺の言葉に、里長は、眉根をわずかにしかめた。


「ドワーフか………確かに奴らなら、強い武器を作れるかもしれぬが………少し待て」


そういって中座すると、里長は一張りの弓を手に戻ってきた。


「人にはドワーフの武器が合うかもしれぬが、エルフにはちと、やつらの武器は相性が悪いのでな。ウルディアーナよ、これを持っていくがよい」相性

「これは……?」

「里の強者によって受け継がれてきた、由緒ある弓だ。精霊の力を宿しているといわれている。今までの弓よりは、こちらの方が役に立つであろう」

「………良い弓ですね。ありがとうございます」


ウルディアーナの言葉に、里長は、うむ、と満足そうに頷く。

里帰りをするだけの予定だったが、ウルディアーナの武器が強化されるという、思わぬ収穫があった。



それから数日、俺たちはエルフの里に滞在する。

ウルディアーナたちの住居は残っており、そこで寝泊まりしながら、里のエルフと交友したり、ともに狩りに出かけたりした。


久しぶりに、同胞たちと共に暮らすということもあり、ウルディアーナも、ベルディアーナもリラックスして、笑顔を浮かべることが多いように見えた。


そうして、大自然の中で過ごした後、エルフ達に見送られ、俺たちは再び数週間の旅路を経て、都市・タルカンまで戻ったのであった。

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