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序章:ペンタの冒険者時代55

序章-83 占拠された館と、スピード解決


修繕を終えた、王立学園近くの館に、男たちが現れて占拠をした。その知らせを受け、館に様子見としてケットシーのサスケを向かわせて、俺たちはエビース商会に向かった。


「エビースさん、館が占拠されたって、何があったんですか?」

「ああ……ペンタ殿、よく来てくださった! 聞いてくだされ!」


エビースさんのもとについた俺たちは、狼狽した彼から、話の詳細を聞く。幽霊騒ぎでボロボロになった屋敷の修繕が完了し、家具やら何やらの選定をしつつ、俺たちが住むための準備をしている矢先に、十数名の男たちが来て、館に立てこもってしまったとのこと。

その場にいた責任者が、抗議の声を上げると、男の一人が懐から1枚の書類を取り出した。

それは、館の権利書であり、自分たちがここに住む権利があると言い出したのである。


「報告を聞いて、私も館に向かったのですが……その男が用意した書類は、こちらで保管してある権利書とうり二つのものだったのです」

「なるほど、それで?」

「はい、それで男たちは立ち退いても良いが、その分の金を渡せと言ってきたのです。金で済むならそれで良いかとも思いましたが……」

「それは良くないでしょう。多分、金を払って立ち退かせても、他の”自称”権利者が次から次に現れると思いますよ」


その男たちが持つ、偽の権利書が一枚である保証はないし、多分立ち退かせたら、また次が来ると思う。


「多分これも、ジャスドー子爵家の企みだと思いますよ。このまま、ならず者が延々と館を占拠したら、やっかいな物件として持て余すことになるでしょう。そこで、自分たちなら解決できると、恩を着せてくると思います。」


ならず者を使っての物件占拠からの、なしくずしに自分たちが利益を出るようにする。やりかたが前世のヤクザに近いものである。

随分と、悪質な手を使ってくるなと思っていると、偵察に出てきたサスケが戻ってきた。


「お待たせしましたニャ! 館に立てこもってる男たちの半分は、知らない顔だけど、もう半分は、前にこっちにインネンをつけてきた、黒い牙って男たちだったですニャ!」

「おつかれ。そうか、あいつらか……何の面識もなく因縁をつけてきたし、あいつらなら情報を知っているかもな」

「どうなされるおつもりで?」


若干、不安そうなエビースさんに、俺は笑みを浮かべてこぶしを握る。


「向こうの言い分を聞いてやる必要はないですね。そろそろ夜になるし、今夜中には片を付けますよ」



王立学園近くの館では、男たちが集まって酒盛りを行っていた。


「それにしても、楽な仕事だぜ。このまま居座って、商家から金をむしり取ればいいだけだからな」

「巡回の兵が来ても、こっちには権利書があるし、黙らせられるからな!」

「子爵様さまってかんじだぜ!」


がははは! と、笑いながら、男の一人が扉の外に声をかける。


「おい、しっかり見張りはしておけよ!」

「わかってるって、その代わり、ちゃんと俺の分の酒も残してくれよ」


と、一応は見張りを置いて、侵入者がいないか、警戒をしているようである。ただ、あくまでもゴロツキというべきか。

既に館に侵入している、俺やケットシー達に気づいてはいないようであった。


「踏み込んで、倒しちゃいますかニャ?」

「いや、この分だとやつら、酔いつぶれそうだな。行動を起こすのは、そのあとだな」


俺たちが物陰に潜んで様子をうかがう。その間にも、男たちは酒盛りをしつつバカ騒ぎを続けた。

宴もたけなわ、半数くらいが酩酊し、床に寝転がっているころ合いを見て、俺は指示を出す。弓に長けたケットシー、ヨイチが矢を放ち、俺や他のケットシーもアイテムボックスから出しておいた、小石を投石する。室内にともされた明かりを灯した複数のランプが割れ、あたりは一瞬で真っ暗闇になった。


「あーん、なんだ? あかりが……っ!?」


明かりが唐突に消えて、怪訝そうにする男たちに、俺たちが無言で襲い掛かる。わずかの間に、良いながら起きていた男たちを全員気絶させ、縛り上げて猿轡をかませると横に転がした。

既によって寝入っている男たちも、縛り上げ、猿轡をしておく。


「よし、あとは見張りの奴らだけだな」


見張りの男たちも、館の外、庭の方に視線を向けて、警戒の目を向けていたので、あっさりと不意を突いて、ひとりひとり無力化する。


「気分はニンジャか、仕置人だな……」

「なんですニャ? それ」


そんなことを言いつつ、館を占拠した男たちは、あっさりと無力化された。このまま、彼らは行方不明になってもらおう。

巡回の兵士に引き渡してもいいが、そうなると権利書を使って揉めることになるだろうし、もともと、彼らはここにいなかった、イイネ? ということにするつもりだ。

まあ、ごろつきといっても、命はとらない。エビースさんのつてで、鉱山送りにする予定だ。

その前に、黒い牙の面々からは、情報を抜くために尋問もする予定である。いささか血を見ることになるかもしれないので、デネヴァ達、女性メンバーは宿に帰って寝てもらっていた。



その後、黒い牙の男たちから尋問をすると……最初は子爵がバックにいると強がっていたが、俺やエビースさんの背後にラザウェル公爵がいると伝えると、思い切り青くなって震え上がった。


「………ということで、お前たちは公爵家所有の建物に侵入して、金をよこせと騒ぎ立てていたわけだ。あと、俺達への冤罪を擦り付けようとするのも報告する案件だな」

「か、勘弁してくれ! 俺たちは知らなかった! 全部、あの子爵の命令なんだ!」

「知らなかった、で済むなら人生は楽なんだがな。ひとまず、知っていることを全部話してもらおうか」

「わ、わかった。その代わり、俺たちは見逃してくれよ! なっ!」

「………まあ、立場上断れなかったというのも分かるから、多少は恩情があるように、進言はしよう」


そんなこんなで、詳しい情報を集める。黒い牙以外にも、命令書を持っていたというリーダーにも、公爵家の名を出して、尋問をして情報が集まった。

命令したのは、やはりオルグ・ジャスドー子爵令息であり、彼らが立ち去ったら、次から次へと権利書を持った者たちが館を占拠する手はずになっているらしい。

そうして、こっちを金銭面と、精神面で追い詰めてから交渉に来る予定だとか。


黒い牙を含む、占拠した男たちは、そのまま夜のうちにロバルティアから鉱山へ搬送された。

正式な鉱山労働の期間はまだ決められていないが、数か月は労働に従事してもらうつもりである。



その後、翌日から何事もなかったように家具やら何やらを選定して運び入れていると、またごろつきたちが現れて、屋敷を占拠した。

その日は、ダンジョン探索に行かずに宿で休んでいた俺たちは、エビースさんからの知らせを受け、そのまま休日を過ごした。

その夜に、前回と同様に闇夜に紛れてアンブッシュ! ホカク! からの尋問と一連の流れを行う。

今回の男たちからも、オルグからの命令、子爵家が絡んでいる情報を聞き出すと、鉱山送りにする。



この流れを何回か繰り返した、数日後。エビース商会のもとに、ジャスドー子爵が来訪する使いをよこしてきたと、俺にも連絡が来た。

いよいよ、ジャスドー子爵家と対決である。俺は単身、エビース商会に向かうことにした。

他のメンバーは、宿で留守番をしてもらうように言ってある。ひとり、ジャスドー子爵家と聞いて、ジャネットが同行したそうにしていたが、一応は話し合いの場である。激発して武器を抜かれたら困るので、お断りしておいた。

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