表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/92

序章:ペンタの冒険者時代53

序章-81 魔神の迷宮【土塊の階層】3 と ギルド内でのもめ事


翌日からも、俺たちは魔神の迷宮に潜り、転移ポータルを活用して攻略にあたった。土塊の階層では、転移ポータルを境にモンスターの強さや迷宮の難度に変更があるようだ。

そのため、まずは転移ポータルを中心に活動し、数日間は慎重に難易度を確認することにとどめ、安定して進めるようならば進み、次の転移ポータルを探すという方法で、先に進む。

数週間後には、いくつかの転移ポータルを見つけ、さらに奥まで進むことができていた。


敵の強さが、手ごたえのあるものに変わったところで、俺たちは無理をせずに進行を止めると、最前線となる転移ポータル中心に、モンスター討伐をして実力を上げていくことにした。

土塊の階層の相応に奥まで来たこともあり、他の冒険者パーティとは出会うこともなく、付近での素材回収やモンスターとの戦いは、邪魔も入らずに集中することができた。



そうこうして、日々を過ごしていたある日のことである。

その日は、黒猫ケットシーのサスケとともに、冒険者ギルドに足を向けていた。ジャネットの保護者ともいえる、ギルドマスターのロビンソンさんに、現在の攻略状況を伝えるためである。

ジャネットの親代わりを自負しているギルドマスターに、事の次第を説明するわけだが、ジャネットはというと、同行するかと聞いてみたら、


「お任せします」


というだけの、そっけなさである。それでいいのかとも思ったが、


「まあ、ジャネットにもいろいろあるのよ」


と、デネヴァが口をはさむ。俺とはともかく、ジャネットと女性陣との仲は良好であり、俺が分からない、ジャネットの本音も知っているのかもしれない。

そんなわけで、ジャネットと、デネヴァ、ウルディアーナ達を置いて、俺は冒険者ギルドに来たわけである。



「ん………?」


ギルド内に入ると、あちこちから視線が飛んでくるのが分かる。それも、どちらかというと、好意というよりも敵意に近い視線である。

そんな視線を向けられる心当たりは無いので、奇妙に思いつつも、受付に向かった。ギルドマスターとの面会を求め、奥に通される。



「お前さん達、なにかやったのか?」


ギルドマスターの部屋にて、俺に会うなり開口一番、ロビンソンさんは俺に向かって聞いてきた。


「なにかやったかというか、俺の方が聞きたいんですけど。ギルドに入るなり、なんかすごい目で見られたんで」

「ああ、この数日だが、お前さん達の悪いうわさが街に広まっているらしい」


なんでも、あちらで暴れたとか、こちらでケンカしたとか、店の商品を脅し取ったとか、そういった類のものである。

噂の出どころは不明であり、発生源も特定できないが、そのせいで、俺たちの評判が落ちているとか。


「街のあちこちで、っていっても、俺たちは宿とダンジョンの往復しかしてませんよ? うちの女性陣も、宿にこもりっきりで、出かけることなんてなかったし」

「そういえば、ジャネットもお前さんとこに合流しているんだったな。じゃあ、アリバイはあって、根も葉もないうわさということになるが……なんでこんなことになっているんだ?」

「ひょっとしたら、あれかもしれませんね」


あれ? と聞いてくるロビンソンさんに肩をすくめ、


「例の、オルグってやつが、俺たちの評判を落として、街から追い出そうとしてるんじゃないですかね? 評判を下げて、館を放棄せざるを得ないようにするとか」

「………ありそうなことだな。このまま評判が悪くなれば、街で買い物するのも難しくなるかもしれん」

「まあ、必要なアイテムは買い込んでありますし、食料だって自給自足できますから、そのくらいはどうとでもなりますけどね」

「たくましいな」


基本的に、こういったことは過剰に反応した方が負けである。俺たちは悠々と、ダンジョン攻略を続け、館が完成したら移り住むつもりであった。



現状の攻略具合をロビンソンさんに報告し、ギルドマスターの部屋から退出する。

そのまま、ギルドの受付まで戻ってきた俺とサスケだったが、そこでひと悶着が起こることとなった。


「あいつだ! あの野郎にやられたんだ!」


と、いきなり響き渡った声。見ると、ガラの悪そうな男たちが、俺を見て何やら叫んでいる。


「カーペンタ様、少しよろしいですか?」


俺を呼ぶ、受付嬢の顔も険しい。なにやら、不穏な空気を感じたが、スルーするには、周囲の目線が厳しいところであった。

やれやれ、と思いつつ、サスケを連れて、俺はその場に近づく。


「どうかしたんですか? 俺に何か用らしいですけど」

「どうかしたじゃねえ、お前、俺たちにダンジョンで襲い掛かってきただろう!」

「仲間が怪我させられて、持ってたものも奪われたんだ!」

「こいつらのパーティがやったんだ! 猫や、なんか全身鎧を着ていたやつもいた!」


と、口々にわめく男たち。その様子に、受付嬢も厳しい表情で俺を見る。


「先日、ダンジョンにてこちらのパーティ”黒い牙”の方々が、同じ冒険者パーティに襲撃され、被害をだしたそうです。同じ冒険者に、危害を与えるのはギルドの規則で禁止されている行為ですが、それが貴方たちであると申されています」

「申されていますって言っても、おれはそもそも、そこの黒い豚とやらのメンツと顔を合わせたこともないんですが」

「何が豚だ! 俺たちは黒い牙だ!」

「誤魔化すな! 弁償しろ!」

「謝れ!」「謝れ!」


と、口々に言うゴロツキ紛れの冒険者の一団。とはいえ、困ったところだ。

現状、ダンジョン内での詳しい行動を証明するのは難しい。やっていないといっても、やっていないという証拠を出すのは困難である。

黒い牙とやらの大声に、周囲の俺たちに向ける視線も厳しい。どうしたものかと思っていると、



「おうおう、ずいぶんと騒がしいじゃねえか」


と、先ほど話していた、ロビンソンさんが姿を現した。


「どうした? なんかもめ事か?」

「あ、ギルドマスター、こちらの」

「俺たちは黒い牙だ! ここにいるペンギン頭の一団に、攻撃されて被害を受けたんだ! 目立つ猫の集団や、全身鎧にも攻撃された!」

「………ほう、全身鎧の、それは、ほんとうか?」


ロビンソンさんの質問に、黒い牙の男たちは、そうだ! まちがいない!と騒ぎ立てる。


「お前さんはどうだい? 向こうはこう言っているが」

「事実無根ですよ。今日初めて会いましたし」


俺の言葉に、なんだと! うそをいうな! とがなり立てる男たち。だが、



「まあ、真実を確認する方法はある!」



と、ロビンソンさんの声に、ぴたりと言葉を止めた。


「荒事が多い冒険者稼業ともなると、こういったトラブルも多い。お互いの言い分が正しいかを判断するため、教会から【真実看破】を行える人物を呼び寄せるつてがある」

「真実看破……要するに、噓発見器みたいなものですか」

「ああ。そういうことだ」


静まり返ったなか、俺の質問に、ロビンソンさんは肯定する。黒い牙たちは、視線が怪しくなり、お互いを見ていた。


「今回の件、どちらの言い分が正しいか、はっきりしようじゃないか。悪いのは、そこのペンタくん達か、あるいは……」

「ま、まってくれ!」

「待たないね。なぜかわかるかい? お前さんたちの言っている全身鎧は、俺の子供”のようなもの”だからさ」


ロビンソンさんの言葉に、黒の牙の面々は、愕然とした顔をした。


「俺の子供が悪事を行っているのなら、親として責任をとらにゃいかん。だが、親としては子供の無実を信じたいのでね。真実をはっきりさせたいのさ」

「あ、ああいや、勘違い……」

「いまさら、吐いた唾は飲まさねえよ。明日、この件の関係者は昼までにギルドに来るように。来ない時点で、相応のペナルティを負わせる。まあ、来たとしても、他のパーティを陥れようとしたのなら、冒険者資格のはく奪は免れんがな」


ロビンソンさんの言葉に、そんな! と悲鳴を上げる黒い牙たち。その時点で、どちらに非があるのかは、ほぼ丸わかりのようなものである。

ギルドにいた他の冒険者たちも、非難の視線の方向が、いつの間にか俺から黒い牙に変わっていたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ