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序章:ペンタの冒険者時代48

序章-77 冒険者ギルドにて……新しい仲間を探そう


都市・ロバルティアの冒険者ギルド。ロバルティア近辺で活躍する、冒険者たちの拠点となるギルドである。

ロバルティアの冒険者は、都市内の問題の解決での報酬や、近隣に点在するダンジョンでの素材集めなどで生計を立てている。


中には、魔神の迷宮で活動している冒険者パーティも複数いて、ここでなら、前線で戦う役目の仲間を募ることもできるんじゃないかと思っていた。


「そうですね……魔神の迷宮に潜るという条件でなら、募集をかけることはできると思います。ですが、本気で最深部を目指すという募集要項ですと……」


と、俺の提示した条件に、受付嬢は難しい表情を浮かべた。

なんでも、魔神の迷宮では、そこでしか採れない素材やアイテムもあり、そういったもので生計を立てるものもいる。

階層が深くなれば、出てくるアイテムも良質のものが増えるため、危険との天秤をかけて、無理しない範囲で活動をするのが基本であり、俺たちのように、なるべく、最深部に近づこうぜという、無謀……というか、命知らずな行動をするものは、少ないであろうということだ。


ダメもとで募集をかけることも考えたが、仲介料もただではないため、少し考えることにした。

ひとまず、パーティメンバーの新規募集を保留にした俺は、ギルド長がいるかどうかを受付嬢に聞いた。


都市・タルカンの冒険者ギルド長からの手紙があるので、不在なら預かってほしいと告げると、少々お待ちくださいと言って、受付嬢は席を離れておくに消える。

そうして数分後、


「ギルド長がお会いになるとのことです。みなさま、どうぞこちらへ」


と、受付嬢に言われ、俺たちは案内されるままに、ギルドの奥に通されたのだった。



「ほうほう、お前さんが、ドーガからの手紙を持ってきてくれたのかい」


ギルド長の部屋にいたのは、テンガロンハットをかぶった、ダンディなカウボーイ姿の中年である。


「俺はロビンソン。それじゃあ、さっそく手紙を見せてもらおうか」


促され、俺は手紙を渡す。それをざっと流し読みすると、ロビンソンさんは、ニカッとした笑みを浮かべた。


「手紙に書いてあるぜ、タルカンでも大活躍のパーティなんだってな。俺の管轄で活躍してくれるなら、ありがたいと思うが」

「数年間は、ここで活動すると思いますので、よろしくお願いします。魔神の迷宮に挑みたいので」

「ふむ、魔神の迷宮ねえ……小遣い稼ぎか?」

「いえ、なるべく最深部近くに到達することを目指そうと思っています」


俺の言葉に、ひゅぅ、と口笛を吹くロビンソンさん。どうやら、お気に召したようだ。


「いいねえ、冒険はロマンを目指さなきゃいけねえ。魔神の迷宮に挑むなら、最奥を目指さなきゃな!」

「はい。それでですが、出来れば前線を支えられる人材を探しているんです。壁役となる人を探しているんですが、なかなか見つからなくて……」

「壁役ねぇ……」


俺の言葉に、しばらく考えていたロビンソンさんは、何かを思いついたのか、一つ指を鳴らした。


「そういうことなら、俺に一人、あてがある。悪いが、明日の朝にでも、また来てくれ。顔合わせして、そのまま魔神のダンジョンに向かえばいい」

「わかりました。それじゃあ明日きますけど、どんな人なんですか?」

「それは、会ってみてのお楽しみってやつだ」


と、そんな風に言われ、俺たちはギルドを退出する。その後、冒険に必要な道具などの買い物をして、その日は宿に戻ったのだった。



翌日、朝からギルドに向かい、ギルド長の部屋に通された。そこにいたのは、カウボーイなギルド長と、


「こいつが、俺の一押しの人材だ。ほれ、あいさつしろ」

「ジャネット・ダルクスと申します」


厳つい鎧に全身を包んだ、フル装備の重騎士であった。顔は、フルフェイスのマスクに覆われて見えず、背丈は俺と同じくらいであるが……声が


「女性、ですか?」

「おう。ちぃとわけありでな。手柄を欲しているんだが、とっつきにくい性格で、仲間が出来んのよ、こいつ」


はっはっは、と笑いながらそんなことを言うロビンソンギルド長。


「まあ、腕の方は俺が鍛え上げたから、悪くはねえ。試しに、パーティを組んでやってくれや」

「……よろしくおねがいします」


うん、よろしくおねがいしますが棒読みだ。なんというか、訳ありな人材みたいだな。


「とりあえず、女性同士で話をしてみたらどうだ? ペンタは、俺とちょいと話をしよう」


「ジャネットさんね。私はウルディアーナ。こっちはデネヴァよ」

「よろしく。そしてこいつらが、私の使い魔のケットシー達よ」

「「「よろしくお願いしますニャ!」」」

「は……よろしくおねがいします」


と、女性陣とケットシー達は、隣の部屋でお話しすることにきまり、ぞろぞろと部屋を出て行った。

残ったのは、俺とロビンソンさん。彼は、カウボーイハットをかぶった頭に手をやると、ぼりぼりとかきながら苦笑する。


「随分と不愛想だろう? あれでも、ここ最近はましな方になったんだよ」

「精神的に、なにか問題でも?」

「極度の人間不信ってやつだな。まあ、それでも女性には幾分かましだが、男性は、ちと……な」

「何があったんですか? 聞かない方が良いなら、そうしますが」

「いや、事情を知っていてくれた方が、お前さんを避けることに不満を抱かないと思ってな」


そういって、ロビンソンはため息を一つして、口を開く。


「ジャネットの生家である、ダルクス男爵家は数年前、冤罪としか思えない件で裁かれ、没落している。それに関与したのが、一人の男でな……」

「…………名前は?」

「オルグ・ジャスドーだ」


またここで、その名前が出てきて、俺は少し驚いた。その反応に、ロビンソンさんは反応を見せる。


「知っているのか?」

「知っているというか、つい最近、迷惑をこうむった相手ですよ。ここのギルドにも、幽霊館の幽霊退治の依頼があったでしょう。その館に住むことになっていたんですよ」

「ああ、そういうことか……そいつは、大変だったな。ジャスドー子爵家には、俺たちも手を焼かされているよ」


そんな風にぼやきながら、ロビンソンは、過去にジャネットに何があったのか、語るのであったーーー。

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