序章:ペンタの冒険者時代3
序章-12 ギルドでの仕事探し
朝の喧騒を抜け、冒険者ギルドにやってきた。冒険者ギルドでは、朝一番に依頼が張り出され、その中から、どれを受けるかを決めて、受付に行って手続きをするという形をとっている。
そんなわけで、掲示板の前には、仕事を求める冒険者たちでごったがえしており、その中に割って入るのは、なかなかに難しそうである。
「では、行ってきますニャ!」
だが、ケットシーのサスケは、そんな人だかりの中に入り込むと、スルスルと前の方に行き、掲示板に貼られている内容を確認すると、あっという間に戻ってきた。
「初心者用の依頼だと、ペット探し、街路の掃除、巡回警備などの依頼と、採集系の依頼では薬草やココナツ草の採取、討伐だとフォレストウルフの爪や牙の納品などが目ぼしい依頼でありましたニャ!」
「了解、ごくろうさま。街での依頼は、実入りも少ないし、正直パッとしないから、採集と討伐を重ねて受けるのが良いかしらね。それじゃあ、並びましょうか」
冒険者は、受ける依頼を決めてから受付に並ぶのが暗黙のルールとなっており、掲示板前で手こずっている人たちが多い中、俺たちは早めに、受付の列に並ぶことができた。
「おはようございます。カーペンタ様、デネヴァ様。本日は如何様な御用でしょうか」
「今日からしばらくは、ペンタを一人前にするために色々とする予定よ。それにしても、リーゼ。あんた相変わらず不愛想ね。受付嬢なんだし、もう少し愛想をよくしなさいよ」
「性分ですので」
リーゼと呼ばれた女性は、20代後半、美人ではあるが、能面のように感情を見せない受付嬢で、人気としてはいまいちである。そのおかげで彼女の受付するカウンターに並ぶ冒険者の数も少なく、早めに依頼を受けるという点については、メリットもあるのだが……
「いらっしゃいませぇ。本日はどのような御用ですか?」
隣のカウンターでは、スマイルが素敵な受付嬢に、気分良く話している冒険者がいる。
愛想をとるか、効率をとるかで、かわいい受付嬢を選ぶ冒険者が多いようである。
「まあいいわ。それじゃあペンタ、依頼の申し込みをやってみなさいな」
「ええと、薬草とココナツ草の採取と、フォレストウルフの討伐……でいいんだよな?」
差し出された紙に、代表しての指名記入と、受ける依頼を書き込んでいく。
「承りました。薬草とココナツ草は一定量を束にした状態で納品してください。納品されたものは一度鑑定で査定され、報酬が決定されます。フォレストウルフは爪、牙、毛皮などに価値があるので、討伐したのち、そちらを採取して持ち込みをお願いします」
なお、物品の納入は、採集依頼を受けていなくても可能であるが、依頼として手続きをこなしての納品の場合は、最終的に渡される報酬が割増しとなるとのことだ。
ともあれ、手続きを終えた俺たちは、都市・タルカンを出て、近隣の森林地帯に向かうのであった。
序章-13 猫たちの活躍
タルカン近隣の森林は、多くの森の恵みが素材として採れ、また、豊かな森の恵みにあやかろうとしてか、多くの獣がおり、狩人たちの糧となっている。
森の中は、素材と危険がいっぱい……というところか。駆け出しの初心者にとっては、危険な場所であったが、ケットシーたちの手助けもあり、特に危険を感じることなく、まずは薬草などの採取を行っているところである。
「ですから、薬草はこの雑草と間違えられることが多くありますニャ。見た目は似てますニャ?」
「………ああ。というかハッキリ言って違いが判らん」
灰色のオス猫、ヨイチが両方の手に薬草と雑草を持って、俺に見せてくる。
が、口に出した通り、両方の草は似通っており、傍目ではどっちも同じじゃないか? と思えるほどである。
「見た目は似てますからニャ。そのせいで、薬草納品では雑草だった、そうじゃないと言い争いを受付カウンター前でする人たちも多いのですニャ。中には、薬草を大量に見つけた、と意気揚々としていたら、全部が雑草だったという笑い話もあるくらいですニャ」
「なるほどなー。それで、どうやって見分けをつければいいんだ?」
「まずは、葉の裏側を触ってみてくださいニャ。薬草と違い、雑草は葉っぱの裏側がざらざらしていますニャ。また、香りも薬草と雑草では薬草は独特の香りがしますニャ。あと、薬草と雑草は噛んだら味が違うけど、それをすると商品にならないから、使われることはあまりないですニャ」
などと、草類や、木の実、キノコなどの知識を色々と教わることになった。
遠征するときに、食べられるものと毒性のものを見分けることは重要なことだそうだ。
そうして、いろいろと勉強をしつつ、薬草やココナツ草、その他にもギルドで買い取ってくれる素材を集めて回った。
そうして素材採取をしていると、森の木々から垣間見える、空に昇っている太陽が中天に差し掛かった。
「そろそろ、おなかもすいてきたし……お昼にしない?」
「わかった……それじゃあ、とりだすぞ」
そういうと、俺はアイテムボックスから、タンポポが作ってくれた弁当を取り出して皆に配る。
普段は、食事などのかさばるものは、手分けして運んでいたらしいが、アイテムボックスがあると、そういった負担いらずになる。ケットシー用の弁当を手に取って、嬉しそうな顔でうんうんと頷くのは、リーダーのゲンノスケであった。
「それにしても、アイテムボックスというのは便利ですニャ。おかげで、荷物の重さで疲れることもないニャ」
なんでも今までは、それぞれが持てる分だけ、風呂敷で背負い、持ちきれないものは、泣く泣く廃棄しておいていくことが多かったようだ。デネヴァが空間魔法を研究しているのは、そういったケットシーたちの苦労をどうにかしたいという考えがあるのかもしれない。
俺としては、出会ってから今まで、デネヴァやケットシー達には世話になっているので、こういったことで役に立つのであれば、少しは音が返せたかなと思うところである。
昼食を終えた後は、採取作業を切り上げ、森に生息している獣や、魔獣といわれるモンスター相手の狩りも学ぶことになった。
「そいやっ、だニャ!」
まずは、ケットシーたちの戦いぶりを見せてもらう。ケットシーたちは手にそれぞれの武器を持っており、それを使って器用に戦っている。それぞれの武器のサイズは、人間用よりも小さめであるが、その分、身のこなしと手数で相手を圧倒していた。
「ビッグブー、討伐だニャ!」
大きな豚の獣を、危なげなく討伐すると、ケットシーたちは、にゃーん、と歓声を上げる。
なお、デネヴァは遠距離から魔法で攻撃し、強大な敵が現れた時は、大規模魔法をデネヴァが唱え終わるまで、ケットシーたちは相手をデネヴァに近づけさせないように戦うとのことである。
「それじゃあ、ペンタさんも討伐をやってみるニャ! サポートはお任せくださいニャ!」
先ほど戦っていた、ビッグブーをはじめ、ホーンラビット、デュエデュエ鳥などの特徴や、戦い方をレクチャーされ、実際に戦っていく。
「ビッグブーは転んだらなかなか起き上がれないニャ。だからまずは、転ばせてからぼっこぼこだニャ!」
「ホーンラビットは、突進に当たると大惨事にゃ。急な方向転換はできないから、回り込んで戦うニャ」
「デュエデュエ鳥は普段はデュエデュエ言って逃げるだけだから、弓矢で狩ると良いニャ。だけど、絶賛子育て中のデュエデュエ鳥は、逃げないしこっちに逆に襲い掛かってくることもあるニャ。逃げないデュエデュエ鳥は要注意ニャ!」
戦う際も、ケットシーたちが敵の注意をそらしたり、良い感じに援護攻撃をしてくれるので、俺は快調に狩りを学ぶことができていた。そんな風にして、今もビッグブーにとどめを刺そうとしたときである。
「フォレストウルフが十数匹、こちらに向かってきますニャ!」
周辺を偵察に出ていたサスケが、戻ってくるなり、そんなことを口にしたのである。




