序章:ペンタの冒険者時代41
リディア視点の話は今回とあと1回。それからまた、ペンタ視点に戻ります。
ペンタは仲間と一緒に、順調に馬車の旅をしている模様。
序章-70 4人の少女、出会う。(リディア視点)
いつもよりも、一段と豪華な服に身を包み、お化粧もしたボクとセレスちゃんは、ラザウェル公爵邸にお邪魔することになりました。
お世話になっている子爵邸も、かなり大きくて、豪華なところでしたが、この国でも上位に位置する公爵家ということもあり、内装も豪華! 仕えている人たちも、一流の使用人で、あちこちがキラキラしているように見えます。
「こら、キョロキョロとあたりを見回すな!」(小声)
執事の人に案内されて、公爵邸の中を歩いている最中。物珍しげに、周囲に目を向けていたら、隣にいたセレスちゃんに、脇腹をドスッと突かれました。
痛いんだけど、と、もの言いたげな視線を向けるけど、セレスちゃんは涼しい顔。
「なにするの、セレスちゃん」(小声)
「お前が、あちこちに顔を向けているからだ。もっと淑女らしく、しゃんとしろ」(小声)
まったく、髪をセットしていなかったら、頭をひっぱたいていたところだ。と、小声でぶつぶつと言うセレスちゃん。
これ以上落ち着きなくしていたら、本当に頭をたたかれそうなので、ボクはおとなしく前を向いて、案内役の人についていくことになりました。
「ようこそ、いらっしゃいました。リディアさん、でしたね。私はマリー・ラザウェルです」
「ベ……ベルディアーナです」
案内されたのは、公爵邸の一室。部屋の中には二人の女の子がいました。事前に子爵様やセレスちゃんに聞いた特徴は、水色の髪の女の子の方が公爵様のご令嬢、マリーさん。金色の髪、翡翠色の瞳で、エルフ特有の尖った耳をしている女の子が、ベルディアーナさん。
「初めまして、リディア・アーストンです。どうか、お好きなようにお呼びください」
「ええ、それでは。リディアさんとお呼びしますね。私の名もどうぞお好きなように」
「それじゃあ、マリーさんって呼びますね」
マリーさんは、穏やかな微笑みを崩さない、気品のある子で、貴族令嬢としての圧が、はんぱない位に、ひしひしと……これぞ、貴族令嬢! という感じの女の子です。
「ベルディアーナさんも、よろしくね」
「は、はい! リディアさん……」
ベルディアーナさんは、小柄な女の子で、ぱっと見は美人だけど、どこかオドオドとしている、小動物のような女の子です。あと、マリーさんについで、おっぱいが大きい……ボクやセレスちゃんも、いずれは大きくなるよね!(願望)
そんなこんなで、女の子4人で初顔合わせのお茶会です。最初は、当り障りない自己紹介から、初めて会うわけだし、話が合うか心配だったけど、4人ともに共通点のある話題が。
なんと、マリーさんやベルディアーナさんも、ペンタ先生と面識があり、助けられることになったとか。
「へえ、それじゃあ、ベルちゃんのお姉さんを助けに、ペンタ先生が駆け付けたんだ!」
「は、はい。集落からでも見えるくらいに、巨人は大きかったですけど、ウル姉さまと、ペンタ兄さまたちが協力して退治してくれました」
ベルちゃん---ベルディアーナだと長いし、そう呼んでいいのか聞いて許可をもらった---は、その他にも、ここに来るまでの旅で、ペンタ先生と仲良くなり、お兄さんと呼ぶことになったとか。
ペンタ先生との旅かぁ。いいなぁ、ボクもペンタ先生と旅をしてみたいなぁ。
「ベルディアーナさんは、ペン様のことを慕っているようで、微笑ましいですね。セレスも、素直になればよろしいですのに」
「わ、私はあいつのことは、そのように考えてはいません!」
ボクとベルちゃんのやり取りを聞いていた、マリーさんとセレスちゃんは、そんな風に言葉を交わしている。
口では否定しているけど、セレスちゃんも、ペンタ先生のことは、悪くは思っていないんじゃないかなと、一緒に生活していて感じることはあるんだけどね。
そんなこんなで、ボクは孤児院生活での、ペンタ先生とのエピソードを話し、そのかわりに、ボクの知らないペンタ先生の色々な話を聞くことになりました。
ボクの知らない色んな活躍を聞くたびに、わくわくしたり、笑ったり、ペンタ先生のことをたくさん知ることが出来ました。
そうして、4人でのお茶会は、ペンタ先生との共通の話題もあり、大成功と言って良い結果になりました。
それからというもの、時々公爵邸にお呼ばれすることになったり、また、子爵邸にマリーさんとベルちゃんが顔を見せるようになったりと、ボクたちは4人で行動することが多くなってくるのでありました。




