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序章:ペンタの冒険者時代39

序章-68 ギルフォード子爵家での生活 (リディア視点)


差し込む日差しと、朝日とともに鳴く鳥の声。ギルフォード子爵家に滞在して、いろんなことを学んでいるうちに、ボクもすっかり、ここでの生活に慣れてきたのでありました。

ボクはリディア・アーストン。お母さんとの二人暮らしから、孤児院暮らし、お父さんに引き取られての男爵家での生活を経て、なんやかんやで、公爵様の部下である、騎士団長でもある、ギルフォード子爵様のお家に住まわせてもらい、色々と学ばせていただいています。


寝床から起きると、顔を洗い、着替えを済ませます。質実剛健が信条のギルフォード子爵家では、お手伝いさんもそれなりの人数はいますが、着替えなどを手伝うのは、舞踏会などの行事に出る時くらいで、通常は子爵様や、奥さまも、自分で身の回りの身だしなみを整えるようです。

ボクとしても、いままで身だしなみとかは一人でこなしてきたしーーー男爵家でも身の回りのお世話をする使用人なんてつけられなかったしーーーこう言っては何だけど、気楽に朝の準備ができて、良かったと思っていたりする。


それから、部屋の中で身体を動かしたり、先日、学んだ勉強を復習していたりすると、ドアがノックされ、使用人の人から、食事の準備ができたと知らせが来て、ボクは部屋を出ました。

子爵家のリビングに向かうと、そこには子爵様と、奥さん、それに、ボクと同い年のセレスちゃんが席について待っていました。

セレスちゃんは、まだ眠気が覚めないのか、ぼうっとした様子で、あくびでもしそうな様子です。


「おはようございます、おじさま、おばさま。セレスちゃんも、おはよう!」


このお屋敷にお世話になってから、それなりに日は過ぎ。最初はぎこちなく挨拶をしていたけど、いまでは子爵様や奥さまをおじさま、おばさまと呼んで、また、最初は「なれなれしく呼ぶな!」と怒っていたセレスちゃんーーー本名はセレスティアーーーも、ちゃん付けで呼べるような間柄になりました。


「ああ、おはよう。うむ、朝から元気なようだな」

「みんな揃ったし、それじゃあ、朝食にしましょうか」

「………いただきます」


そんな感じで、朝の挨拶をして、和やかな空気の中、朝食をとるのが日課のなっています。また、その日の勉強や鍛錬についても、予定を聞いたりします。


「今日は、公爵様のもとへ参じるから、鍛錬は二人で行うように」

「わかりました。私とリディアで、午前中に鍛錬を行うようにします」


子爵様は、自ら鍛錬をしてくれることもあるけど、大体はボクとセレスちゃん、また、時々は講師となる人が来るくらいで、二人だけで鍛錬する時間が一番多かったりする。


「先日言ったように、私も本日は、他家に招かれていますので、マナーの教習はありませんので、午後は自由時間となります」

「あの、午後に街に出て良いですか? お世話になった孤児院を訪れたいんです」

「街に出るのは構いませんが、門限までには帰ること。それと、公爵様のおひざ元とはいえ、治安が安全である場所だけではありません。そのことをしっかり考慮して、行動するようにしなさいね」


奥さまの言葉に、ボクは、はい! と元気よく返事をし、食事を再開しました。



「せいっ、やぁっ!」

「はっ!」


子爵家の庭で、ボクとセレスちゃんは並んで武器をふるいます。ボクはいつも剣を振っているけど、セレスちゃんは、剣のほかに槍を持って鍛錬をすることもあります。

なんでも、聖女様である、公爵家のお嬢様と一緒に戦う際、ボクは聖剣を持って、セレスちゃんは聖なる槍を持って戦うとのこと。

それを知らされたのは、つい最近のことだけど、セレスちゃんはその前から、槍の訓練もしたらどうかと言われ、訓練に加えていたようで……なんと、槍の訓練を勧めたのは、この場にはいないペンタ先生とのことです。


ペンタ先生は、冒険者として活躍して、男爵様になったって聞いたけど、子爵様一家とも顔見知りで、それを聞いた時、世間は狭いなとボクは思ったわけです。

そんなわけで、セレスちゃんと一緒に、午前中は体操をしたり、ランニングしたり、武器をふるって時間を過ごすことが多いです。


「………おい、ちょっといいか」

「うん? なに、セレスちゃん」


並んで武器を振っていたら、珍しいことに、今日はセレスちゃんの方から声をかけてきました。

普段は、鍛錬中に話しかけてくることもなかったので、ボクは武器をふるう手を止めて、セレスちゃんに向き直ります。


灰色の髪を三つ編みにしてサイドに垂らしているセレスちゃんは、なんだか偉そうな口調でーーー子爵家のお嬢様だし、まあまあ偉い?ーーーボクを見て口を開くと、


「午後は、孤児院に行くというのだろう? 何なら、私がついていってやってもいいんだぞ?」

「…………ええと、ついて来たいの?」

「そんなことは言っていないだろう! ただ、子女の一人歩きは危険だろうし、あいつが、孤児院でどんな活動をしていたのか気になっただけだ!」


……要約すると、ボクのボディガード役をしたいというのが半分と、あいつ---たぶん、ペンタ先生?---がいた孤児院を見に行きたくなったというのが半々ということなのかな。

やっぱり、ついて来たいんじゃない。と口にすると、ムキになるのは、ここしばらくのセレスちゃんとの会話で、何となく学習したので、それは口にしないことにする。

まあ、ついて来たいなら別に構わないけど、大丈夫かな?


「一緒に行くのは、別にいいけど」

「そうか! 私に任せておけ!」

「だけど、大丈夫? 孤児院なんて、多少はマナーを学んだっていっても、悪ガキたちの巣みたいなものだよ?」


生真面目なセレスちゃんなんて、どう考えても孤児院の子供たちの、いたずら対象になりそうな気にしかならないけど……


「よし、そうと決まったら、訓練を終わらせて準備をしないとな!」

「聞いちゃいないけど……まあ、いいか」


そんなこんなで、本日は午後から、お世話になった孤児院をセレスちゃんと一緒に訪れることになりましたとさ。

ちょっとだけ不安もあるけど……大丈夫、だよね?

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