序章:ペンタの冒険者時代2
序章-10:今後の展望
名前つけの時間が終わり、あたらめてテーブルをはさんで座った俺とデネヴァ。
周りではケットシーたちが甲斐甲斐しく動いている。
俺としては珍しい光景であったが、デネヴァにとっては日常のようで、
紅茶を飲んで一息入れて、俺に質問を投げかけてきた。
「それで、ペンタの望みは10年後に王立学園に、教師として就職するんだっけ」
「そうだよ。多少早まっても良いけど、必ず10年後には、学園に在籍していたい。
そのためには、冒険者として活動するほかにも、実際に教師になった時、いろいろと教えられるように、今のうちから出来ることを増やしていきたいんだ」
教師になったのに、教え子の質問に答えられなくて、恥をかきたくはない。
それに、物語では学園に魔神の手先が攻撃を加えてくることがあったはずだ。
その時に、怪我をしたり死んだりしたら嫌なので、力をつけることは必須である。
「さしあたっては、冒険者活動をして、身体を鍛えたいな」
「おっけ。それじゃあ、明日にはさっそくギルドで依頼を受けて、一通りのことを
学んでもらいましょうか。それじゃあ、今日からペンタの住む部屋を用意させるわ」
そういうと、デネヴァはテーブルの上にあった鈴をチリンチリンと鳴らす。
手空きのケットシーが4匹、横一列に並んで敬礼をとった。
「ペンタが今日からここに住むから、部屋を用意して頂戴」
「了解しましたニャ!」
デネヴァの言葉に、意気揚々と敬礼して部屋を出ていくケットシー達。
「住むって……俺はこれから、宿暮らしになると思ったんだけど」
「ドーガさんに、その辺のことも頼まれてあるのよ。大体、10歳の子供がちゃんと泊まれる場所なんて多くないわ。ぼったくられるのが目に見えているから、宿暮らしとかはもう少し大人になってからにしなさい」
と、デネヴァにそんなことを言われた。
まあ実際、デネヴァの家は外観はボロ家だが、内装はきっちりと整備されていて、
さらに、ケットシーたちが家事をやってくれるという、はっきり言って恵まれた物件といえるが……
「でも、俺は男だし、デネヴァはいいのか?」
「あのね、あんたは10さい。まだまだ、おこちゃまなんだから、変な気を使わないでいいの」
俺の質問に、デネヴァはあきれたように、そう返してきた。いわれてみれば、まだまだ子供であり、そのあたりのことに気を遣う必要もないだろう。
そんなわけで遠慮なく、俺はデネヴァと11匹のケットシーの住む家に下宿することになったのであった。
序章-11 朝の風景
翌朝、ニワトリの鳴き声ならぬ、ケットシーの合唱で目を覚ました俺は、下宿先のダイニングにて朝食をいただいていた。
朝食は、パン、とろりとしたスープ、サラダに季節の果物で、飲み物はミルクか緑茶、紅茶のどれかと聞かれ、緑茶を頼んだ。
この朝食を作り、配膳したのは、黒猫のメスのケットシーで4号ことタンポポが一切を行っていた。
「お味はどうですかニャ? 感想をくれると、うれしいですニャ」
………なお、この世界のケットシーたちは、魚を主食としており、どうやら俺やデネヴァとは食事を別にしているようだ。
「ケットシーたちも、人間の料理を食べられないわけじゃないわよ。ただ、猫舌だし、料理の味覚も異なるから、生魚とか野草とかの方が喜ばれるわね」
一緒に食事をとるデネヴァが、ケットシーたちの食事についての問いに、そう答えた。
なお、タンポポは、料理のため、猫舌を克服したり、人間の味覚の好みについて
研究したりしているらしかった。
「点呼ニャ!」
食事を終えて、冒険者ギルドに向かうために、庭先に出ると、そこではケットシー達のリーダーであるゲンノスケが、ケットシーたちを整列させ、順番を点呼していた。
ケットシーたちの中で、料理が得意な黒猫タンポポ、計算とか頭脳労働が得意な三毛猫カレン、雑用メインな焦げ茶色のヨシオの3匹は、泊まり込みなどの遠征でない場合は、ハウスでお留守番らしい。
「行ってらっしゃいですニャ!」
と、3匹に見送られた俺とデネヴァ、8匹のケットシーは朝日の照らす町並みを歩き、一路、ギルドへと向かうのであった。




