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序章:ペンタの冒険者時代37

序章-66 王都での宿泊と、出立………?


ドタバタののち、ふろから上がった俺たちは、夕食の席に案内される。テーブルには様々な料理が並び、俺たちの舌を満足させた。

王族や貴族も、自分たちの食べる食事は良いものをと望むのは当然であり、王都には値段は張るが、様々な食材が並び、多彩な料理を生み出す環境が整えられていた。


この宿も、腕の良い料理人がいるのか、出される料理はどれも満足の味である。せっかく王都に来たということもあり、女将に勧められ、お高いワインも開けた俺たちは、そのまま酒盛りに突入した。

見た目はともかく、大人なデネヴァと、年齢不詳なエルフのウルディアーナ。デネヴァは淡々とワインを飲み、ウルディアーナは赤く染まった液体を、興味深げに眺めては、舌で味わうのように飲んでいた。


「「「あ、それ、それそれですニャ~」」」


場を盛り上げるためか、ケットシー達が並んでダンスしたり、芸をしたりと、酒盛りの場は良い感じに盛り上がっている。

俺も、デネヴァやウルディアーナにワインをグラスに注がれ、何度も飲んでいるうちに、意識がなくなった……



気が付くと、翌朝になっていた。朝日が窓から差し込み、チュンチュンと鳥の声が聞こえる。

昨日は、随分と盛り上がったが、いつの間にかベッドに戻って寝ていたようだ。目を覚ました俺は、起き上がろうとし……身体が動かないことに気づく。


「あー……なんだこれ」


宿泊していた部屋はベッドが3つの部屋。そのうち2つはケットシー達が占拠し、残る一つのベッドの中央に俺が寝て、その俺にデネヴァとウルディアーナが覆いかぶさるように寝ていた。

すぅすぅと、寝息を立てているのはウルディアーナ。彼女は胸で俺の頭を抱きかかえるように寝入っていた。だが、エルフ特有の体形というか……そこに柔らかさを感じないくらいのまな板である。

俺の腰付近では、デネヴァが俺の太ももあたりを枕にして寝ていた。もう少し、枕にする場所の位置がずれていたら色々と危ない位置であった。


二人とも、気持ちよさそうに寝入っているので、身動きをとって起こすのも忍びなく、それからしばらくの間は、だきまくらよろしく、身じろぎをすることもできずに、時間が過ぎ去るのを待っていたのであった。



あれから、二人とも時間差で起きることとなり、俺と同じベッドで寝ていることは特に驚きもせず、おはよう、と挨拶をしてきたのであった。

どうやら、つぶれた俺をベッドに寝かし、自分たちの意思で一緒のベッドに寝たようだ。いや、別のベッドにしろよと思ったが、俺をベッドにのせている間に、ケットシー達に残りのベッドを占領されたので、仕方がないといっていたが……


ともかく、酒を飲んだ翌朝だが、だれも二日酔いになることもなかった。俺たちは、連れ立って宿の食堂に向かう。


「おはようございます。ゆうべはおたのしみでしたね」


朝一番の女将の言葉は、スルーして席に着くことにした。朝食は、パンとスープ、サラダなどのあっさりとした食事である。

腹を満たした俺たちは、料金を払って宿を出た。これから馬車にのって、また長い旅をすることになる。


馬車の止めてある馬小屋に向かおうとした俺達だったが、そこに、呼び止める男の声が飛んできた。


「待ちたまえっ! 麗しのきみよっ!」



声のした方向に目を向けると、そこには騎士の装いをした、整った顔立ちの青年がいた。両手にバラの花束を持ち、こちらに向かってきている。


「ああ、窓辺にさく、麗しのエルフの君よ! その美しさは、この薔薇も霞むであろう! どうかこの私、グレート・ティーポールの心を受け取ってくれたまえ!」


と、そんなことを言いながら、ウルディアーナの前に跪き花束を差し出してくる、騎士風の男。それに対して、俺たちはというと……


「それじゃあ、出発するとしようか。門から出る前に、何か買っておくものとかあるかな?」

「んー……調味料とか、お菓子とかは買い足してもいいと思う」

「ああ、良いわね。あとはケットシー達の好きな魚も探してみるのも良いんじゃない?」

「「「ありがたいですニャー」」」


全力で見なかったことにした。なんだか、かかわるとめんどくさそうだし……その気持ちは全員一致したのか、バラの花を差し出して、跪いている男の横を歩いて馬小屋に……


「まてまてまてーーーい!」


ずざざざー! と、全力でスライドし、俺たちの進行方向をふさぐ位置に移動する、グレート(略)という男。


「なぜ! この私! ティーポール男爵家嫡男にして、未来の栄光の騎士! グぅレート・ティーポールの横を! すり抜けていこうというのだね!」

「……めんどくさそうだから」


デネヴァの言葉に、俺もウルディアーナも、ケットシー達も一斉に頷いた。

自称、栄光の騎士さんは、それが納得いかないのか、憤懣やるせないといった表情で、大きくのけぞった。


「ありえないっ! 古来より、エルフと騎士というのは、数多の物語の中でも恋仲になるものであろう! 先日、窓辺にたたずむ美しきエルフを見て、彼女こそが将来の伴侶と思い、こうして花束持参でデートに誘おうとしてきたのにこの仕打ちっ……!」

「あのー、俺達、もう行っていいですかね?」


俺の言葉に、騎士の男は俺をデネヴァ、ケットシー達を見て、ふふん、と鼻を鳴らした。なんか腹立つぞ。


「よいだろう、行くといいさ。だが、そちらのエルフのお嬢さんは置いていきたまへ。彼女は、私とこれから愛を語らう予定があるのでね!」

「え。そんな予定はないけど」

「いやいやいやいや、お嬢さん。そちらの貧相な少年たちと、この、優美で! 気品あふれる! 私と! どちらを優先させるか、考えるまでもないんじゃないかね?」


ドヤ顔で言うグレート(略)の言葉に、さすがに腹を立てたのか、ウルディアーナは隣に立っていた俺の腕に抱きつくと、


「私の仲間を馬鹿にするなんて、ケンカを売ってるの? それに、あなたかペンタかっていうなら、私はペンタを選ぶわよ!」

「なっ、くっ、お、おのれぇぇ……どんな手を使って、エルフの君を篭絡したのだぁぁ!」


と、激高する自称栄光の騎士。彼は、手袋を取り出すと、ぺいっ、と俺に投げつけてきた。


「決闘だ! 決闘を申し込む! 私が勝ったら、彼女を開放しろ!」

「あー、もう、めんどくさいなぁ、こいつ」


散々騒ぎ立てた挙句、決闘だと大声で叫ぶ騎士。すでに日も登り、それなりに人通りがある宿周辺である。

なんだなんだと、やじ馬が集まりだし、さっさと出立したい俺は、内心で頭を抱えることになった。

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