序章:ペンタの冒険者時代36
序章-65 二人の美少女(年齢不詳)と、お風呂に混浴する
ヒノキに似た材質の木材でできた浴場、湯気の立つ熱めのお湯に身を浸すと、旅の疲れがじんわりと、溶けていくかのようであった。
気持ちの良さに、一人ならのんびりと、鼻歌でも歌うところであるが……俺は天井を見上げながら、こっそりと横目で見る。
同じ浴槽---プールとまではいかないものの、複数の人間が余裕を持って入れるほどには広い---に二人の少女が入っている。
二人とも、バスタオルを巻いているのは、なんやかんやと事前に言葉を交わした結果であり、そうでなかったら、全裸で3人とも風呂に入っていただろう。
どうしてこんなことになったのやら……そんなことを考えながら、つい先ほどのやり取りを、俺は思い起こした。
「いやいや、混浴はダメだろ。男性用の風呂があるわけだし、俺はそっちに入ってくるよ」
老婆の女将に案内された風呂場の入口で、俺は混浴はまずいと断りを口にしていた。俺の前世は日本人ということもあり、混浴はちょっと、まずいのではと思っていたりする。
この世界の男女のモラル的にも、混浴はそこまで浸透しているわけでなく、俺の考えが特殊というわけではない。
そんなわけで、俺は一人、男湯でゆったりしたいといったのであるが、
「駄目。一緒に入らないといけない」
と、デネヴァが断固として混浴を主張してきたのである。
「なんでだよ? 一緒に入らないといけない理由でもあるのか?」
「ここ、よく見て」
デネヴァが扉を指さした。混浴の扉を見ると、張り紙が張られている。
「ええと……男女で混浴された場合には、ふろ上がりに”濃厚なミルク”を無料サービス?」
「ミルクは重要」
俺たちのやり取りと聞いて、老婆な女将が親指をグッと立てて、満足げに笑みを浮かべていた。
「………いや、ミルクが欲しいなら買えばいいし、混浴してまで欲しいものか?」
「タダだから、良いんじゃないの」
ただでミルクをもらうために、男性と風呂に入るのは、良いんだろうか……? そんな風に悩む俺に、デネヴァは淡々と告げてくる。
「そもそも、そんなに悩むことはないじゃない。あなたが小さい頃は一緒に水浴びとかしたでしょう」
「……………そういえば、そんなこともあったなぁ」
10歳でデネヴァやケットシー達と行動することになってから、俺が彼女の背を追い越すくらいまでは、彼女に引っ張られて水浴びをしたり、時々風呂に入ったりしたことを思い出した。
あの頃は、自分がもっと小さく年少だったし、断るとデネヴァがすねるので、付き合っていたのだが……
「だから、混浴しても問題ない。ちょっとペンタの背が伸びて逞しくなっているだけだし」
「ちょっとで済む違いか……? ウルディアーナも何とか言ってくれよ。このままだと、3人で混浴することになるんだぞ」
なお、ケットシーたちは、近場にあるペット専用の浴場の看板に従い、ぞろぞろと移動して、既にこの場にはいなかった。
俺に声をかけられた、ウルディアーナはというと、小首をかしげて少し考えると……
「別に、良いんじゃない? 見知らぬ人間の男となら嫌だけど、ペンタは仲間だし、弟みたいなものだからね」
「いいのかよ……」
女性陣の2名が、反対せずに混浴に賛成。一人反対しているのが、男の俺という図式も奇妙なものである。
そんな俺の背中を、老女の女将がポンポンと叩くと、にこやかな顔で
「素直に生きたほうが、人生楽しいですよ」
「うるさい」
そんなこんなで、入る入らないの押し問答は、多数決で分が悪いと判断した俺は、せめて浴場ではタオルで大事なところを隠そうと、説得することになったのである。
----という経緯で、俺は美少女二人と一緒に風呂に入ることになっていたのである。
俺としても、健康な男子であるし、美少女二人と混浴というのは、嬉しくないといえばウソになる。
デネヴァもウルディアーナも、身体つきはどちらかといえば、育っていない方なので、その分、理性が保てるのはありがたかった。
そんな二人であるが、浴槽から出て、デネヴァの頭をウルディアーナが洗っていた。
「へえ、これが髪を洗う薬なの。人間は、変わったものを考え付くのね」
「んー、もっと強めにこすってくれて良い」
バスタオルを巻いた、美少女二人。風呂場のいすに腰掛けたデネヴァの頭を、ウルディアーナが泡立てるように、わしゃわしゃと洗っていた。
二人とも、ふろを満喫しているし、よいことだなー、と、視線を彼女たちから外し、俺は湯船に身を浸らせた。
なんだかんだで、疲労がたまっていたのか、湯につかりながらうとうとしていると、デネヴァが俺を呼ぶ声が聞こえた。
「ペンタ、ちょっとこっちに来なさい。ウルディアーナが、ペンタを洗いたいんだって」
「えー……いや、洗うのは一人でやるよ」
「恥ずかしがらなくていいじゃない。ほら、こっちに来なさいよ」
顔を向けると、表情が薄いデネヴァと、楽しそうなウルディアーナの姿がある。固辞しても良いこともなさそうなので、俺は素直に浴槽から出ると、二人の方に向かった。
椅子に腰かけさせられると、ウルディアーナが楽しそうに、俺の髪を洗いだした。
「どう? かゆいところとかない?」
「ああー、良い感じだよ……って」
椅子に座り、ウルディアーナに髪を洗うのを任せていると、座っている俺の前に、バスタオル姿のデネヴァが回り込んできたのである。
「なにしてる……っていうか、何をしようとしているんだ、デネヴァ」
「ウルディアーナが後ろから洗っているから、私は前から洗おうと……」
「洗うって、どこを?」
「前」
やめてください。(俺の理性が)しんでしまいます。
その後、洗う洗わないの押し問答の末、タオルが取れてポロリ(誰のか? いわないぞ)となったり、すったもんだな場面もあったが、最終的には並んでお風呂に入り、ふろ上がりのミルクにのどを潤すことになった俺達であった。




