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序章:ペンタの冒険者時代30

序章-58 公爵領を出でて 王都への道のり


都市・タルカンを出立し、まずは王都へと向かう。公爵領は公爵家のおひざ元ということもあり、治安はそれなりに良いほうだ。

今回は公爵領から出て、複数の貴族の領地を通って王都へ、その先の都市・ロバルティアに向かう。それぞれの土地の治安は、治める貴族の力量によって上下し、なかには、盗賊や悪徳商人らと手を組んで利益をむさぼる貴族の土地もある。

そういう土地には、長く滞在する気はなく、さっさとスルーして次に進むことにしている。


悪い奴らを懲らしめないか? あいにく、こちとら単なる男爵であり、どこかの助さん格さんを連れた御隠居のごとく、世直しをするような真似はできない。

なるべく、トラブルとは関わり合いにならないように、スルーして進むのが安定である。


「おうおう、待ちやがれ! ここは俺たち、骸骨団のナワバリだ!」

「金目のものと女を置いてきな……なんだ、女って言っても、ガキが二人じゃねえか」

「いや、ガキって言っても、片方はエルフだし、有りなんじゃないか?」

「そうだな、楽しむのもいいし、売るにしても高く売れそうだ……そういうことで、覚悟ぉぉ!?」


俺たちを取り囲んで、好き放題言っていた盗賊団たちの額に、ウルディアーナの放った矢が命中する。先制攻撃によって、数名が倒れ込み、盗賊団たちはいきり立った。


「な、なんだてめぇら! やろうってのか!?」

「大人しくしてりゃ、優しくしてやろうってのによ……! やっちまえ!」



「……まったく、大した素材も手に入らないし、ほんと、ろくでもないわね」


短い戦闘を終えて、ウルディアーナは周囲を見渡して、ため息をついた。周辺には、盗賊団だった骸が転がっている。

旅の途中、からんできた盗賊団たちを殲滅した俺たちは、再び馬車を走らせて、その場を後にする。

盗賊団たちの身なりは、正直しょぼかったし、その場にとどまって懐をあさるのは、血の臭いでモンスターがきたり、ひょっとしたら、仲間がいてそいつらが来る可能性というリスクとの天秤をかけても、放置してさっさと進む方が良いと判断した。


「世の中には、盗賊の貯め込んだ財宝を狙う、盗賊狩りを生業としている冒険者もいるけどな。盗賊団のアジトを探して、壊滅させる時間と手間がかかるけど」

「ふぅん……そういう方法もあるんだ」

「ああ、とはいえ、俺たちはその方法は取らないぞ。魔神のダンジョンに潜って深部に進むのが優先であって、あちこちに寄り道をしていたら時間が足りなくなる」


物語が始まるまであと数年。その間にやりたいことはたくさんある。正直言って、トラブルはなるべく避けて、都市・ロバルティアにつきたいところであった。



「ふぁ~……また盗賊が出たの?」


ウルディアーナと話していると、馬車の中から、デネヴァが顔を出した。よほど強い敵が出たときは、彼女も戦闘に参加するが、盗賊団レベルの相手だと、俺とウルディアーナ、ケットシーたちで事足りた。

そのため、旅の最中は、デネヴァは読書をしたり、昼寝をしたりと馬車の中で悠々と過ごしている。


「ああ。この付近を治める貴族は、あまり治安維持に熱心じゃないみたいだ」

「そうね。食い詰めた獣がわんさか出てきそうよ」


やれやれ、という風にウルディアーナは肩をすくめる。ひとまず、さっさとこの領内を出て先に進もう。

危ない目にあった場所は、あとで手紙をしたためて、公爵様のところに送るつもりだ。今後、遅れて都市・ロバルティアに向かうことになる、マリー嬢たちのためにも治安のチェックは必要である。


そんなこんなで、時々現れる盗賊や、各地の宿泊する村や町での人々との交流などをしつつ、俺たちは王都への道を、ひとまず順調に進めていたのであった。



序章-59 リディアの出会い(リディア視点)


お父さんが持ってきた、公爵様からの呼び出し状? そこには公爵家のお嬢様のお付きとして、働くようにと書かれていた。

ボクは慌てたお父さんとともに準備を整えると、公爵家からつかわされた、馬車に乗り込むことになった。


馬車に乗るのは、孤児院から、ボクが生まれた家である、アーストン男爵家に向かうときに乗ったくらい。その時の馬車は、ボロっちくはないけど、良く揺れて、お尻が痛くなった。

それに比べると、今回の馬車は、座るところも豪華で、如何にも貴族の馬車! って感じのものだった。


「すごいねー! お父さん。公爵様って、お金持ちなんだね」

「それはそうだ。ラザウェル公爵家は、広大な領土を有する、大貴族だからね」

「………そんなスゴイところで、働ける自信がないけど」

「私も、そう思っているんだが……先方の申し出を受けないわけにはいかん。ともかく、失礼のないようにせねばな……」


と、胃のあたりを抑えて言う、お父さん。それを見て、僕も緊張しそうになったけど、途中からなるようになるよね! と、開き直ることにした。

馬車で数日の旅をして、ボク達がたどり着いたのは、見覚えのある都市・タルカン。馬車の窓から街並みを見ると、見覚えのある風景が見える。

あとで、孤児院にも行ってみようかな? そんなことを考えているうちに馬車は進み、貴族の人たちが住む区画に入った。


そうして、しばらく進んだところで、馬車は止まる。

扉が外から開けられ、お手をどうぞ、と言われたので、手を取って馬車から降りてみる。


そこには、大きな庭と、立派なお屋敷があった。


「ここが、公爵様のお家?」

「いやいや、ここは我がギルフォード子爵家だ。公爵様の館は、もっと大きいぞ!」


と、ボクの声に返事が横から飛んできた。そちらを見ると、立派な騎士姿のおじさんと、きれいなおばさん、それに、ボクと同い年くらいの女の子がいた。


「公爵様直々のお呼びたてではあるが、リディア嬢には、我がギルフォード家にて、寝泊りしてもらう。公爵家に行くのは、いろいろと礼儀作法を学んでからだな」

「長く馬車に乗ってお疲れでしょう。まずは、こちらへどうぞ。私は、ギルフォード子爵の家内、アンヌと申します」


そうして、アンヌ夫人に案内されて、お屋敷の中に案内される。子爵のおじさんと、奥さんである、アンヌ夫人は笑顔なんだけど、一緒にいた女の子の顔は、何故か怒ったようにボクを睨んでいるような?


はて? と内心で首を傾げつつ、ボクは足をすすめた。

お屋敷の中は、手入れが行き届いており、あちこちに目が行きながら、アンヌ夫人の後に続くと、応接間に通された。


広々とした応接間で、ボクとお父さんが並んで座り、対面には子爵さま、子爵の奥様と、女の子が並んで座る。まだ紹介はされていないけど……多分、子爵様たちのお子さんだよね。


「まずは改めて、子爵家へようこそ。アーストン男爵も同行してくると聞いたが、娘を大事にしているのだな」

「はっ。いろいろありまして、つい最近まで一緒に住むこともなかった娘ですが、愛情は持っているつもりです。ただ、諸事情により、まだ貴族としての教育もいま一つでして……公爵家からの要請に、お応えできるかはいささか……駄目だと判断されるなら、この場で連れて帰るつもりで同行いたしました」


と、取り出したハンカチで汗を拭きつつ、子爵様に返答をするお父さん。

まあ、確かに、普通の勉強ならともかく、貴族としてのマナーについては不安だし、ダメだしされるなら、この場で出してもらって一緒に帰るのもあり?

そんな事を考えていると、子爵様は、お父さんの言葉に、難しそうな顔で首を振った。


「勉強については、我が妻が何とかしよう。ただ、リディア嬢はたとえ勉強ができなくとも、我が屋敷にいてもらうことになる」

「は? そ、それはどういう……」

「ここにいる私の娘、セレスティアに、あと二人、そしてリディア嬢には、今後、大いなる使命があたえられることとなる」


子爵様の言葉に、セレスティアと呼ばれた女の子を見ると、また、鋭い目をこっちにむけてきた。

いったい何だろう、と思うボクの耳に、子爵様の重々しい言葉が飛んできたのはその時である。


「魔神の迷宮……その奥底にいる魔神を倒すため、リディア嬢の力を借りることとなるだろう」

「魔神……!?」


お父さんが、悲鳴のような声を上げるが、ボクはその言葉の意味を理解するのに、しばらくかかってしまうのであった……。

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