序章:ペンタの冒険者時代29
序章-56 王立聖ロバルテ女学園のある都市に、拠点を移そう
つい先日、俺は18歳となった。仲間内で誕生パーティをしたり、公爵様やマリー嬢など、いろんな人からも祝われた。
それはさておき、俺は18歳で、マリー嬢たちは13歳。彼女たちが王立学園に入学し、物語が始まるまで、あと2年ほどとなった。
俺の今後の方針としては、魔人のダンジョンに潜り、なるべく先の階層に進んでいくこと。そして、良い武具や素材などの収集も出来ればしていきたい。
そのためには、都市・タルカンではなく、魔神のダンジョンが近くにあり、王立学園がある都市・ロバルティアに拠点を移して活動した方が良いだろう。
そのことを公爵様に伝えた所、マリー嬢たちも、都市・ロバルティアにいずれは向かうので、都市内に抑えてある、公爵家所有の屋敷を利用し、おかしなところがないか、チェックをする依頼を受けることになった。
王立聖ロバルテ女学園には学生寮もあるが、物語では、マリー嬢は都市内にある公爵家所有の屋敷から通っていたはずだ。
前もって、屋敷を抑えたとはいえ、公爵のおひざ元でもない都市の館であるし、事前チェックは必要なのだろう。
あとは、教師をしていた孤児院へのあいさつ、冒険者ギルドで都市・ロバルティアに拠点を移すことを伝えたり、そのほかにもいろんな人との別れを済ませ、出立の準備を一通り済ました。
そうして出立の朝、都市・タルカンの門にて俺は多くの人からの見送りを受けて旅立つことになった。
見送りの中には、孤児院で俺が教えた子供たちや、ギルドの依頼で知り合ったものたち、もちろん、マリー嬢をはじめ、セレスティア、ベルディアーナもおり、しばしの別れに寂しそうな顔をしていた。
「ううっ、ウル姉さまぁ……」
「しばらくの間、元気でね。みんなと仲良くするのよ」
エルフの姉妹、ウルディアーナとベルディアーナは名残惜しそうに話している。
俺も、ギルドマスターや、教会のシスター、教え子たちと話し……最後にセレスティアとマリー嬢と言葉を交わす。
「ふん、私たちも、すぐにそちらに行くからな。ロバルティアで待っていろ」
「ペン様、旅のご無事をお祈りいたしております」
そうして、皆の見送りを受けて、俺たちは馬車を発進させた。俺たちの馬車が見えなくなるまで、多くの人が手を振って見送ってくれた。
都市・ロバルティアに向かうには、王都であるロームリスを経過しての、長旅となる。
旅にて、どんなことが起こるのか……未来に期待を寄せながら、俺は前に向き直るのであった。
序章-57 4人目の合流。(3人称視点)
「マリーの様子はどうかな?」
「表面上は、普段通りに振舞っていますわ。ですが、時折、寂しそうにしています」
ペンタたちが旅立ってから数日後、ラザウェル公爵は妻であるソフィーリアの言葉に、むう、と声を上げて眉を寄せる。
ペンギンを連想させる、代わった髪型の少年の一行が旅立ってからというものの、如何にも元気のない娘の様子に、親として心配をしているのであった。
なお、マリーだけでなく、セレスティアやベルディアーナも、どこか物足りなさそうに過ごしている。
少女達の様子を聞くたびに、ずいぶんとペンタという少年に入れ込んでいるものだな。と公爵は考える。
「今生の別れでもあるまいし、落ち込みすぎかとも思うのだがな」
「それは、殿方はいつも出掛ける立場ですもの。待つ身としては、マリーたちの気持ちは、分かりづらいと思いますわ」
そういって、苦笑する公爵夫人。
「私も君に、そのように寂しい思いをさせていたのか……」
「お仕事などで、仕方のない点は納得しておりましたわ。それに、貴方様はちゃんと私に気を使ってくださいましたし」
「ソフィー……」
と、見つめあう公爵夫婦。貴族にしては珍しい、恋愛結婚で結ばれは二人は、まだまだ、周囲を呆れさせるほどの熱々ぶりであった。
………なお、病気が治ったこともあり、普通に同室で夜を過ごした結果、マリーに歳の離れた弟ができることになるのだが、この時は、まだそうなることを知る者はいなかった。
「………おほん、話はそれたが、娘たちに元気がないのは問題だな。我が家の空気が暗いのもよろしくない」
「でしたら、マリーに新しく仕える娘をあてがうのはどうでしょうか? 闊達な娘とのことですし、良い風が吹くと思いますわ」
一通りイチャイチャした後、公爵夫人のその言葉に、公爵は考え込みながら、あごに手を当てる。
「聖剣の使い手を、今のうちからマリーに引き合わせる、か。確かに、かの娘を早めに確保するのは良いかもしれん。だが、そうして4人が揃ったら、何か起こるか分からぬのが心配だな」
「物語とやらの事を気にしておられますか? もう、すでに多くの事柄が変わっているのです。今更、多少の変化は気にしてもしょうがないのではないですか?」
公爵たちが、ここ最近、考えていたことは、聖剣の使い出てあり、物語の主人公、リディア・アーストンをどうするかに関してである。
物語の通り、学園に通うまで放置するか、それとも、速めに公爵家の権力をもって、囲い込むべきかということだ。
放置するか、呼び込んで公爵家で囲い込むか。公爵は慎重派であり、夫人はさっさと引き合わせた方が良いとの意見だ。
「それに、このまま数年後になると、マリーたちが3人で仲良くなってしまいます。協力して魔神を討伐させるというのに、一人だけが疎外感を感じるのは良くありませんでしょう?」
「………確かに、それは道理か。そうだな。マリーたちの今後のためにも、速めに引き合わせよう」
………そんなこんなで、最後の一人、リディアが公爵家に招かれることになる。
「り、り、り、リディア! こ、公爵様が、お前に公爵家へ出仕して、お嬢様付きとして働いて欲しいと言ってきておる!」
「ふぇ!? ぼ、ボクが!? お父さん、いったい何をしたの!?」
公爵家からの要請を聞いて、アーストン男爵家の親娘が、仰天したのは、致し方ないことであろう。




