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序章:ペンタの冒険者時代26

序章-51 久々の里帰り


俺の実家であるロウ家は、田舎の集落を収めている貧乏男爵だ。11歳のころに最後に里帰りした後は、なんだかんだで忙しくなり、信頼できる商人に手数料を払って、手紙を送ったり、仕送りを送ったりすることはあるものの、実家に戻ることはしていなかった。

17歳になり、本当に久々の里帰りである。魔神の迷宮に潜る前に、久々に家族の顔を見に行こうと思っていたわけだが、


「ペンタの生まれ故郷か……どんな場所か楽しみよね」


と、ウルディアーナはついてくる気満々であり、デネヴァとケットシー達も、これ幸いに同行の準備を進めていた。

そんなこんなで、馬車で都市・タルカンを出て、故郷に向かうことにした。久しぶりの里帰りであるが、正直、どがつくほどの田舎のため、大きくは変わっていないと思っていたが……


「この道、こんなに舗装されていたかな?」


故郷への道のりは、きちんと人の手で舗装されていた道となっており、それなりの人数の旅人ともすれ違った。

そうしてたどり着いた故郷は、大きく見違えていた。さびれた村落といった感じだった場所が、普通の町レベルまで進化していたのである。



「おお、ペンタよ! 良く帰ったな!」

「本当に、こんなに立派になって……」


実家のあった場所に行くと、家もそれなりに豪華になっており、出迎えた家族たちも、裕福な身なりになっていた。


「実はな、数年前に公爵様からの使いの方が来られてな……お前が手柄を立て、男爵に叙されたこと、また、実家にも褒賞として、多額の金をいただいたのだよ」

「ペンタが時々送ってくれた仕送りと合わせて、まとまったお金でいろいろなことが出来てね……ロウ家も立派になれたのよ」


新しくなった実家のリビングにて、俺は両親からそう説明を受けた。

公爵様から賜れた金額は、公爵家にとっては少額かもしれないが、男爵家にとっては驚くほどの大金だったようだ。

そんなわけで、身ぎれいになった実家の面々。二人の兄も嫁をもらい、日々充実した生活を送っているとのことだ。


驚いたのは、個人的には素行が良くないと思っていた、上の兄、ジョージである。


「ペンタの活躍で、俺も随分と助かっている。ありがとう」

「ええ!? ジョージ兄さんが頭を下げた!? てっきり、今後も自分のために頑張れとか言うと思ったのに」

「さすがに、今のこの状況で、そんな礼儀知らずのことは言わんよ」


と、俺の言葉に苦笑する、上の兄、ジョージ兄さん。年齢も二十歳過ぎになり、いずれ家長を継ぐものとしての責任感が出てきたようである。

年月と立場が、人を成長させたのか、その佇まいも、立派な大人として様になっていたのである。

さしずめ、ス〇夫がきれいなジャイ〇ンに進化したというべきか。



序章-52 久々の里帰り2


実家に集まったのは、俺とデネヴァ、ウルディアーナとケットシー達、両親に、長男ジョージ夫婦、次男のカイト兄さん、祖母ちゃんといった面々である。

家族は、俺の冒険譚を楽しそうに聞いたり、エルフのウルディアーナの美貌に感嘆したり、また、ジョージ兄さんの奥さんが、ただいま妊娠中で、子供が楽しみだとか、カイト兄さんも嫁を近々とるとか、そんな感じで和気藹々と話をしていた。


「そうかー、カイト兄さんにも奥さんができるんだ。おめでとう! それで、相手はどんな人なの?」


カイト兄さんの近々の結婚という話題に、俺は喜びの声を上げた。

なんだかんだで、兄弟の中では一番に年齢が近く、また、穏やかな性格のカイト兄さんとは仲が良かったので、めでたい話である。


「近隣の男爵家の娘さんで、性格も良い子だし、見た目も……うん、悪くはないかな」


カイト兄さんは、そういって微笑みを浮かべる。なんだかんだで、その相手のことを気に入っているようである。


「そういうあなたには、良い相手はいないの? ペンタも男爵になったんだし、そういう相手は必要でしょう」


と、横合いから母さんがそんなことを言ってきた。


「なんだったら、私たちで探しても良いのよ? 爵位を持つなら、婚約者がいるでしょうし」

「婚約者、ねぇ」


母さんの言葉に、俺は首をひねる。前世が日本な俺としては、婚約者とか、まだ17歳で婚約するとかは、正直考えていなかったりする。


「……まあ、当分はいいかな。今は他にやりたいこともあるし」

「ペンタはまた、そんなことを言って……」


と、あきれたように言う母さんだが、それ以上に強く言ってはこなかった。

そんな俺たちのやり取りを聞いて、祖母ちゃんが呆れたように口を開いたからだ。


「末の息子が出世したから嬉しいんだろうが、あんたが世話する必要はないよ。もうすでに嫁のなり手を二人もつれてきているじゃないか」

「いや、デネヴァやウルディアーナは、そういう関係じゃ……」

「そんなこと言って、まんざらでもないんだろ? それとも、他に気になる娘でもいるのかい?」


祖母ちゃんの言葉に、俺は笑ってごまかした。

この手の話は、口を開いたら泥沼になると、本能で察知したからである。


ただ、明確に否定をしなかったので、それからしばらくの間、デネヴァやウルディアーナと微妙な空気になることになってしまった。

そんなわけで、色々な出来事はあったものの、里帰りはつつがなく済ませることが出来たのであった。



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