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序章:ペンタの冒険者時代25


序章-50 結果報告と今後の方針


なんだかにらみ合いに発展した少女たちはさておいて、俺は騎士団長のおっさんに連れられて、屋敷の中に入った。今回の旅の成果を、公爵様に報告するためである。

デネヴァとケットシーたちは、マリー嬢とセレスティア、ウルディアーナとベルディアーナの間を取り持つために置いてきた。きっと何とかしてくれるだろう。たぶん。


「………というわけで、エルフの里に向かっていた、巨人をエルフ達と協力して倒したわけです」

「なるほど。ひとまずは、エルフの里への危機は去ったわけだ。よくやってくれた」


俺の説明を聞き、ラザウェル公爵はねぎらいの言葉をかけてくれた。一礼を返してから、俺はアイテムボックスから薬瓶を取り出して、公爵様に差し出した。


「それと、こちらはエルフの里で取れた材料を使った霊薬です。公爵様の奥様の病気に効くかと」

「なに!? それは本当か!? 王家の医師すらさじを投げた難病だぞ」


公爵様が、興奮した顔で立ち上がった。その剣幕に押されながらも、俺は薬瓶を机の上に置く。


「完全な保証はできませんので、様子を見るならば、奥様と同じ病の者を探して使ってからにしてはどうでしょうか。量が足りないというのなら、ある程度なら用意もできますので」

「うむ。そうだな……わかった。そうすることにしよう。もし我が妻、ソフィーリアが回復したのなら、多大な恩賞を与えることを約束しよう」


と、そんなことを言う公爵様。物語と同じように、奥様には回復してほしいものである。

ひとまず、そんなこんなで報告は終わり、ベルディアーナは今後、学園に通うため、人間の、また、貴族のマナーをマリー嬢やセレスティアとともに学ぶということも決まった。



「それで、きみはこれからどうする? マリーが学園に入学するまで、あと3年ほどあるが……何もないのであれば、マリーの身辺警護を手伝ってもらいたい。魔神四天王の件もあるし、護衛は多い方が良いからな。マリーも喜ぶであろうし」

「その申し出は魅力的ではありますが、俺は仲間とともに、魔人の迷宮の攻略を進めていこうと思います」


そういうと俺は紙とペンを借り、ざっと魔人の迷宮の階層図を書き出す。


----------------------------------


【地表】

【土塊の階層】【広さ:中】 【敵の強さ:弱い】

【木輪の階層】【広さ:大】 【敵の強さ:やや弱い】

【水星の階層】【広さ:特大】【敵の強さ:普通】

【火生の階層】【広さ:中】 【敵の強さ:強い】

【金剛の階層】【広さ:小】 【敵の強さ:やばい】

【最深部】


----------------------------------


「最深部までに至る階層は5つあり、それぞれの階層の入口に、地表との転移口を作ることはできますが、物語では、かなりの年月をかけて、攻略することになっています」

「ふむ、かなりの年月とは?」

「明確には書かれていませんでしたが、17歳にして神器を得て攻略を開始、ここ、【水星の階層】では数年かけて、次の階層への入口を探し出したと書かれていたと思います。他の階層にかかる時間を踏まえても、完全攻略には20歳以上になっているかと」


俺が【水星の階層】の部分に指を添え、そう口にすると、騎士団長が顎に手をやり、何とも言えない顔で口を開いた。


「それはあれですな。魔神を討つ頃には行き遅れになっているかと……おっと、失礼!」


公爵様ににらまれ、肩をすくめる騎士団長。いっておくけど、このまま普通に進めたら、騎士団長のおっさんの娘、セレスティアも同じになるんだが、気付いているのかいないのか。


「ともかく、そういうわけですので、俺達は先行してダンジョンに潜り、なるべく先の階層へ進めるようにしておこうかと。魔神討伐のために、彼女たちが浪費する時間を、なるべく減らしたいのです」

「なるほど……そうしてくれるとありがたいが、苦労を掛けるな」

「いえ、実際に魔神を倒す彼女たちに比べれば、俺にできることはその手助けくらいですから」


幸いというか、新たに仲間になったウルディアーナは、弓の扱いに長け、戦士としても一流の少女だ。彼女が加わったことで、魔神のダンジョンの攻略も、少しは楽になるだろう。

そういうわけで、今後は魔神のダンジョンの攻略に力を入れつつ、ドワーフの親方のところで武器を作ったり、エルフの集落に素材を求めにいったりすることになるだろう。

孤児院の教師役であるが、さすがにそこまで手が回らないので、今後は孤児院出身である、ミネルバという少女に一任する予定であった。



一通り話をして、俺たちは公爵家から出て、拠点の家に戻ることにした。

俺に同行するのは、デネヴァ、ケットシー達と、ウルディアーナ。ベルディアーナはというと、マリー嬢と腕を組んで、俺たちをお見送りである。


「私たち、お友達になりましたの」

「ひ、ひぃ……そうですぅ」


朗らかな笑顔を浮かべるマリー嬢と、となりで出荷される、うしさんのような顔をしているベルディアーナ。二人のそばでは、セレスティアが何とも言えない表情をしている。

お茶会で何があったかは分からないが、どうやら、一緒に過ごす流れになったようであるが……大丈夫だろうか。


「あれ、おいてきていいのか? ベルディアーナが助けてほしそうに見ているんだけど」

「問題ないわ。なかなかに図太い娘達だし、引っ込み思案なベルディアーナには、ちょうど良いでしょ」


俺の疑問に、ウルディアーナはそう答える。どうやら、女性だけのお茶会の席で、何やら理解を深めたようであった。



そうして、俺たちは慣れ親しんだ拠点につくと、しばしの休息の時を過ごす。

魔神のダンジョンに潜る前の準備を兼ねたその休息期間で、俺は久しぶりに、里帰りもするつもりであった。


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