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序章:ペンタの冒険者時代23


序章-46 エルフの里へ


「それにしても、ありがとう。おかげで助かったわ」

「いや、俺としても放っておけなかったからな。あのままだと、エルフの里も危なそうだったし」


巨人の死体人形との闘いを終えた俺たち。巨人の死体自体は、塵のようになって消え去ったが、粉砕した、死体を操る装置の残骸は、アイテムボックスに回収した。壊すのに手間取るほどの耐久性のある素材であるし、何らかの利用ができるかと思ったからだ。

エルフの自警団とともに、俺たちはエルフの里に向かうことにした。もともと、エルフの里を救援するために来たが、終わったからってクールに去るぜ……とはいかない。


エルフの里を救ったわけだが、そうすると、魔神討伐隊の一員である、聖弓使いのエルフの少女、ベルティアーナが姉のウルディアーナの仇討ちのために、王立学園に入学する理由がなくなる。

そのあたりのことを話し合って、どうにかベルディアーナを王立学園に入学させないといけない。


そんなことを考えつつ、森を進む。一緒に戦った連帯感からか、ウルディアーナが俺に親しげに話しかけてくる。それに対して対応しているうちに、目的地であるエルフの里についた。


「おお、ここがエルフの里か」

「そうよ。私たちエルフの住まう場所。人間がここに来たのは、数十年ぶりかしら」



ウルディアーナの言葉を耳に入れつつ、周囲を見渡す。森の中に木でできた住居があり、多くのエルフがそこで生活しているようだ。森の木々に囲まれた里は、清浄な空気に満ちているようで、木々の隙間から差し込む陽光が、そこかしこを暖かに照らし出している。

興味深げに見渡していると、一人のエルフの少女が、こちらに駆け寄ってくるのが見えた。


「ウル姉さまっ、おかえりなさい……はぅ!? にに、人間!?」

「ただいま。そんなに怖がらなくていいわよ、ベルディアーナ。彼らは、私たちと一緒に里を襲った巨人を倒してくれた冒険者よ」

「そ、そうなんですか……は、初めまして、ベルディアーナって言います」


ウルディアーナの背中に隠れるようにして、こちらを見る少女。凛とした佇まいのウルディアーナとは対照的に、庇護欲をそそるような小動物チックなエルフの少女である。なお、ベルディアーナの体形は、ほどほどに出っ張っているところが多い。グラマラスとは言えないが、エルフとしては割と豊満なスタイルであるといえる。


「初めまして。俺はペンタ。こっちはデネヴァとケットシー達だ」

「よろしく」

「「「よろしくですニャ!!」」」

「わぁ……ねこさんがいっぱい!」


ベルディアーナは、ケットシーたちが気に入ったのか、ケットシー達に目を輝かせている。

そんな彼女を、微笑ましそうに見ているウルディアーナ。仲の良い姉妹であるようだった。


「さて、この里で一番偉い人に会いたいんだが……ラザウェル公爵から、手紙を預かっているんだ」

「この里で、一番偉い人……わかったわ、ついてきて」

「ああ。それと……ベルディアーナさん。彼女もついてきてほしい。彼女にもかかわる話だから」

「ふぇっ!? わ、私ですか!?」


いつの間にか、ケットシー達に近寄って、その身体を撫でていたベルディアーナが、急な指名に慌てたように声を上げた。

俺の言葉に、怪訝そうな顔を見せるウルディアーナだが、ひとまずは案内を優先させたのか、手招きをして俺たちを先導するのであった。




序章-47 里長との話し合い


「この里を収める、オーグルードという」

「カーペンタ・パウロニアです。故あって、この里に足を運びました。これはラザウェル公爵からの書簡です」

「うむ」


ウルディアーナ案内された先には、里の中でひときわ大きな住居があり、そこには、エルフにしては壮年の男性がいた。挨拶をして手紙を渡すと、エルフの里長はそれを読む。


「………ペンタという少年が神託ともとれる予知めいた力を発揮したとある。なんでも、公爵の娘を助けたり、我らが里の滅亡を予知し、回避のために動いていると書いてあるな」


里長の口にした、里の滅亡という言葉に、同席したエルフの姉妹は、驚いたような顔をする。


「神託とか、予知とかとは少し違うんですが……」


そう前置きし、俺は、自分の知っている物語のこと。魔神の討伐のために、神器に選ばれた4人がおり、その中にはベルディアーナという名のエルフがいること。また、その少女は、里を滅ぼされ、姉を殺された仇を討つために、魔神の討伐隊に参加したことを話した。

それなりに長い、俺の話のあと。エルフの里長は、その端正な顔をしかめて、一つ頷いた。


「………なるほど。実はな、この里には一つの予言が残されていた。”大いなる災い降りかかるのち、一つの芽がその災いを払う巨木へと成長するだろう”とな。大いなる災いが、今回の一件と考えれば、多少は信憑性が増す」

「でも、その災いとなる巨人は倒したんだし、もう大丈夫じゃないの?」

「さてな。その魔神四天王とやらが、ウルディアーナにどの程度固執しているかが問題だ。これで諦めるのなら良いのだが」


そうでなくては、また、この里に災厄は襲い掛かるだろう。里長の言葉に、難しそうな顔をするウルディアーナ。


「それなんですが、彼女には里を離れ、俺達と一緒に冒険者として活動をしてもらうのはどうでしょうか」

「ふむ……ウルディアーナを目的とするなら、それでエルフの里への危険性は減るが……どうする?」


里長は、そういってウルディアーナに目を向ける。ウルディアーナは、俺、デネヴァ、ケットシー達を順番に見て、一つ頷いた。


「このまま、里にとどまっても迷惑をかけるでしょうし、彼らは短い間ですが、友に戦って信頼できると感じました。私は里を出て、彼らとともに行動しようと思います」

「うむ………そうか」


ウルディアーナの決意のこもった言葉に、若干、寂しそうな顔をしながら、頷きを返す里長。

これで決定、と思ったわけだが、ウルディアーナのそばにいた、妹のベルディアーナが悲鳴に近い声を上げた。


「そんな!! ウル姉さま、里を出て行ってしまうのですか!?」

「これは里のためなの。わかってちょうだい。それはそれとして、貴方も今後を考えなければいけないのよ」

「ふえ?」


キョトンとした、ベルディアーナに、俺はざっと説明をし直す。ベルディアーナには今後、魔神を討伐するために、数年後に王国学園に入学、2年生になると、神器の選定の儀式があるので、そこで聖なる弓を手に入れて、他の神器を手に入れた娘たちとともに、魔人の封じられたダンジョンに潜り、魔神を倒すということをしてほしいと伝えたのだが……


「む、むりです! 私、そんなに出来る娘じゃないです! そういう凄いのは、お姉さまがふさわしいんじゃないでしょうか!」

「……私も、代われるならそうしたいんだけど」


過保護な姉と、姉の陰に隠れていた妹、か。物語では、姉や里のエルフがいなくなり、ようやく独り立ちしたからこその行動であり、里の壊滅がない状態では、こうなってしまったというところか。


「うーん、正直、聖弓にウルディアーナが選ばれる可能性もあるかもしれない。その場合は、魔神討伐の役目を代わっても問題なさそうだけど」

「ですよね!」

「でも、もし聖弓がベルディアーナを選んだら、きみがその役目を果たさなきゃいけない。魔神討伐は平和のためにも、大事となる役割だからな」

「ですよね~……」


俺の言葉に、しょんぼりとするベルディアーナ。彼女としては、エルフの里で今後も穏やかな生活を送りたいのだろうが、魔人討伐のためにも、彼女を説得して、連れて行かなければならない。

急に、人間の学園に行くのは難しいだろう、と、俺はしばらく考えると……


「それじゃあ、試しにラザウェル公爵の屋敷で生活してみるのはどうだろう。そこには、魔人討伐隊に参加する娘たちのうち、一人がいるし、もう一人も近所に住んでいる。そこなら、客人としてきみを遇してくれるだろうし、ウルディアーナも一度自分の目で見て、ベルディアーナを預けてよいかを判断するってことで」

「………ええ。そうね。ベルディアーナを預けるのなら、私の目で見極めないと」

「うう、結局、行かないといけないんですね……」


意気込むウルディアーナと、しょんぼりしながらも、これ以上は反対する気もなさそうなベルディアーナ。

そんな二人のエルフの姉妹を連れて、俺たちは都市・タルカンに戻ることになったのであった。

【ウルディアーナ】エルフ美人姉妹:姉 スレンダー


物語では故人→死体人形 終盤、主人公たちの前に立ちはだかる。

存命。しっかり者だが、若干、過保護なくらいに妹には甘い。



【ベルディアーナ】エルフ美人姉妹:妹 割とスタイルは良い


物語では、姉の仇討ちを目指し、日々成長し魔神討伐隊に加わる。

姉が生きているので、彼女の背に隠れることが多い。今後、成長するかは未知数。

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