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序章:ペンタの冒険者時代19


序章-38 物語『魔神の迷宮と乙女たち』の流れ(3人称視点)


勇者リディア、剣士セレスティア、聖女マリー、エルフのベルティアーナの4人が王立聖ロバルテ女学園に入学する。


1年生は、1年間の研鑽の日々。リディアは同じクラスである3人とも交流を深め、彼女たちの戦う理由を知ることとなる。

剣士セレスティアは、魔神四天王に倒された父の仇を、聖女マリーは、聖女の使命と、自らの顔に傷をつけた魔神の配下に対する復讐心、そして、ベルティアーナは住処であるエルフの里を滅ぼされ、姉の仇を討つために、魔神とその配下と戦う決意を持っていることを知る。


ただし、リディアは入学当初は、勇者と呼ばれることもなく、単なる一人の生徒に過ぎなかった。

それが変わったのは、入学して2年目。神聖な力を持つ神器を選ぶ儀式が行われた時の事。


聖剣、聖槍、聖杖、聖弓の4つの武器に選ばれたのが、リディア、セレスティア、マリー、ベルティアーナの4名であったのだ。

2年目に入り、魔人討伐のために、神器を手に、ダンジョンにも潜ることとなる4名。


聖なる武器に4人が選ばれたことで、多くの障害が彼女たちの前に立ちはだかる。

魔神を討伐する候補として、学園が選抜していた特殊クラスの4名の生徒。学園の目論見では、その4名が聖なる4神器を持ち、ダンジョンに潜るはずであった。


その4名の生徒との死闘があり、また、魔神四天王のうち、ダンジョンにこもる魔王プレスト以外の3名、

四天王ジャガール、四天王スーメリア、四天王パルペッティによる学園への妨害も受けることとなる。


四天王ジャガールは、手下を連れての大掛かりな学園襲撃。

四天王スーメリアは、病気を学園内で流行させて、生徒たちを弱らせる。

四天王パルペッティは、死体を素材とした人形を使い、精神的な面でダメージを与えてくる。


特殊クラス4名の生徒は、一人一人が勇者たち4人を上回る力を持つが、チームワークとひらめきで、彼女たちを個々に撃破する。


様々な妨害をクリアした4名は、本格的にダンジョン攻略を開始する。


ダンジョン内で待ち受ける魔神四天王を順に撃破し、魔王も倒した4人は、魔神との最後の戦いに挑み、魔神との激闘の末、倒すことに成功するのであった……。



序章-39 悩む公爵閣下と騎士団長の会話(3人称視点)


………と、大まかではあるが、ペンタが覚えている部分の物語を書いたものを、ラザウェル公爵が自室で読み返していた。

上部で書いてある筋書きの他にも、魔物や四天王の姿、また、どのような特徴があるかなども複数の紙に書き込まれている。


彼の愛しい娘が未来に進むであろう、物語の大まかな流れが記されている。それを、ラザウェル公爵は、私室で読み進めていたが、ノックの後、扉が開く。入室してきたのは、彼の友人であり、片腕でもある騎士団長であった。


「失礼します……おお、すごい量ですな」


部屋に入ってきた騎士団長は、部屋の傍らに積まれた、手紙の山を見て感心したように声を上げる。それは、現在12歳のマリー嬢に対する釣書の山であった。


「なに、単なる燃えるゴミさ。あとで処分しようと思ってな」

「それは、良いのですかな? 噂では、王家からもマリー様に婚約打診があったはずですが」


マリーが怪我をせず、社交界にも普通に出ている昨今、人当たりも良く美少女、さらに公爵家という身分と、男性にとっては優良物件にしか見えないこともあり、彼女に婚約を申し込む貴族の男性は上は老人から下は赤子まで、数多くの申し込みが殺到していたのである。

なお、赤子が申し込みをするわけもなく、その場合は親の判断での申し込みであるのだが。


「王家からの釣書は、同様にはできないだろう。丁寧に断りの返答を送らねば」

「結局、断るのですな」

「………王家からは、16歳の王太子、13歳の第2王子、11歳の第3王子のそれぞれの妃にならぬかと打診が来た。受けた場合、城にて早速、妃教育を始める準備はしてある、とな」


わずかな苛立ちをにじませた公爵の言葉に、ああ、と相槌を打つ騎士団長。


「聖女としての使命がありますマリー様に、妃教育も? それはいささか……」

「王家としては、魔人討伐の聖女よりも、王家の子の妃の立場が重要らしいな」


困ったものだ。とだけ口にする公爵。聖女であるマリーの立場を理解して譲歩するならともかく、そうではない時点で、公爵の中では3人の王家の子は選外となっているようであった。


「いやはや、婿選びも大変そうですな」

「他人事みたいに言いおって。お前にも娘がいるだろう?」

「セレスですか? それなら大丈夫ですぞ。じゃじゃ馬故、あしらえる器量持ちの男子が中々いませんでしたが、ペンタ殿があらわれましたからな!」

「ああ、彼か……」


そういって、手元の資料に目を落とす公爵。いささか特徴的な髪型の少年が書いた資料は、通常では知りえないことも書かれており、いくつか看過できない部分もある。


「む? どうなされたか? はっ、まさかペンタ殿をマリー様の婚約者に!? いけません、いけませんぞ! 引く手あまたのマリー様に比べ、セレスにはペンタ殿以外には似合いの相手はいませんからな!」

「それは考えていない。確かに、彼の功績は大きいが、マリーの婿として、公爵家に入るには立場が足りないし、私も、無理をおしてまで彼を選ぶ理由はない」


少なくとも、この時点では、公爵にとってペンタは少し毛色の変わった少年というだけであり、公爵家の婿としては候補にも入れていなかった。


「ふむ、それでは何を難しい顔をしておられるのです? その資料に何が?」

「うむ、ここの部分だ」

「どれどれ? ベルディアーナは住処であるエルフの里を滅ぼされ……っ! これは!」

「そうだ。国内にあるエルフの里。調べるとそこには、ベルティアーナというエルフも確かにいるようだ。マリーが王立学園に通うまで3年。その間に、エルフの里が滅びるというのだろう」

「……そうなれば、由々しきことです。エルフの里には、人知の及ばぬ秘宝が数多くあるといわれていますな………軍を出しますか?」


騎士団長の言葉に、公爵は首を振る。


「下手をすれば、派遣した軍が侵略者として攻撃を受けかねん。軍を出してエルフと軍が共倒れになっては笑い話にもならん。どうするかだが……」

「ペンタ殿に行ってもらえばいいでしょう」

「………簡単に言うな」

「そうはいっても、他に適役はいませんし、何より彼は、一度は私やマリー様の筋書きを捻じ曲げた実績があるのです。彼が一番適役なのは確かでしょう」


騎士団長の言葉に、公爵はしばし考え込んだ後、天井を見上げてぽつりとつぶやいた。


「ペンタ殿に、仔細を話すだけ話そう。救いに行くか否かは、彼が決めればよいことだ」



そうして、数日後……公爵様直々の呼び出しに応じたペンタは、エルフの森を救うという難題に、頭を悩ませながらも挑戦することになるのであった……。

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