序章:ペンタの冒険者時代17
序章-36 12歳の少女たち(勇者リディア視点)
ボクはリディア。都市・タルカンの孤児院から出て、アーストン男爵家に来てから、数年が経ちました。
もともと孤児だったボクだけど、ほんとは男爵様の娘で、数年前に孤児院から実の親に引き取られたわけです。
アーストン男爵は、小さな街を領地としており、特に重い税をかけたりもしておらず、みんなのんびりと暮らしています。
こちらに来て、友達も何人かできたけど、時々孤児院での生活が恋しくなっちゃったりして。
孤児院での生活は貧しかったけど、みんなでワイワイと毎日が楽しかった。
今の生活は、貧しさに困ることはなかったけど、どうにも窮屈な感じがする。
そんな日々の中、孤児院のシスターローザからの手紙が、ボクの気晴らしになっていたりする。
近況では、アランやポプリが、それぞれお店などに見習いとして働きに出たこと、ミネルバが教師としての力をめきめきとつけていること、ゴードンがペンタ先生の紹介で、騎士団のテストを受けることなど、孤児院の仲間たちの近況が記されていた。
そうそう、ペンタ先生といえば、なんと! 公爵様に気に入られて、男爵になったって手紙に書いてあった。
騎士団長とも親しくて、それでゴードンが騎士団に入団できる足掛かりにもなったと書いているし、いったいどんな活躍をしたんだろう……?
「それにしても、男爵かぁ……」
3年後には、王立学園に入学するために、ボクは勉強を頑張っている……ボクなりにだけどっ。それで、入学したときにペンタ先生が教師としていてくれたらうれしいな。
ボクは男爵令嬢として、学園に通うわけだし、ペンタ先生が男爵の先生となると……男爵家同士、お似合いじゃない?
「ペンタ先生……会えるといいなぁ」
孤児院でボクたちに、色々と教えてくれた、ペンタ先生。孤児院を離れてあらためて、ボクはペンタ先生が大好きであったことを、しみじみ感じていた。
こっちにできた、友達には、そんなときめき?ってのを、まるっきり感じていなかったし。
ともかく、一生懸命勉強して、素敵なレディになるのが今の僕の目標!
王立学園で、ペンタ先生に会えるよう、今日も頑張って、勉強します!
序章-37 12歳の少女たち(騎士セレスティア視点)
私は、セレスティア・ギルフォード。ギルフォード子爵家の長女として、日々研鑽を積んでいる毎日だ。
父さまは、この国で随一の剣の腕前であり、母さまは、そんな父さまを支える才女であり、両親ともに私の誉れであった。
また、私にはあこがれる御令嬢がいる。父さまが騎士団長として仕える、ラザウェル公爵家のマリーお嬢様だ。
歳が近しいということもあり、小さいころから父に連れられて、時折マリー様の遊び相手を務めることがあった。いつも朗らかな微笑みを浮かべるマリー様に、幼い私はほれ込んだのである。
そんな、両親とマリー様という、日常の中に、異分子が最近入ってきた。
そいつは、ペンタという名前で、なんでも、魔族の四天王とかいうやつから、父さまを助け、マリー様を救ったとか。
そのペンタなにがしが、男爵としての勉強とやらで、うちに来ることになったのである。
ハッキリ言って、ペンタを褒めたたえる父さまを見て面白くなかったし、マリー様は、物憂げな視線をあのペンギン頭に向けられているのだ。
面白くない、面白くない……奴は、私のライバルだな。そう決めた。
そんなわけで、ライバルとして接してきたわけだが、ペンタの評価は徐々にであるが、最初の時とはわずかに、ほんのわずかにだぞ! 上昇していた。
父さまは、騎士団長としてその強さは国にとどろいている。その父さまと、最終的には負けるものの、打ち合ってしのぎを削れる存在など、私の知る限り、いなかった。
母さまの指導にも、つらい顔をせず、黙々とこなしている。私などは、つらくて何度も泣いてしまったあれをだ。
父さまがいないときに私と打ち合っても、まったく隙を見せず、一度とて打ち破ることはできていない。
また、口下手な私にも、怒ることをせずに対応してくる、なんというか、大人だ。
「だからって、認めたわけじゃないからな!」
「うん?」
そんなわけで、ペンタは私としては、まあ、よきライバルから、目指す目標へとこっそり変更されていたりする。
あいつが時々、私に笑みを向けたときに胸が高鳴るのは、きっとあこがれから来る高揚感とかなんとかなんだろう。……おそらく。




