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序章:ペンタの冒険者時代11

序章-27 助けた少女はヒロインでした


「なるほど、お嬢様の治療をしていたというわけか。とはいえ、公爵家のご令嬢に、無礼はいかんな」


あれからしばし。四天王ジャガールの襲撃で倒れた騎士たちの半数以上は、何とか生きており、ケットシー達と俺たちで治療を施したことで、なんとか息を吹き返したものも多かった。

なお、治療といっても舐めるあれはしていない。こういう時のために買い込んであったポーションを使ってのことである。

【なめなめ回復】は、軽い切り傷程度にしか効果はないし、自分や美少女ならともかく、なんで男にペロペロしなきゃいけないんだということで、やらなかったわけだ。


「それで、君の名前は何かな?」

「カーペンタ・ロウです……ロウ家の三男坊です……」


現在、俺は復活した騎士たちに囲まれて、尋問めいた質問中である。

俺に聞いてきているのは、先ほど俺を殴り飛ばした大柄な騎士、公爵家の騎士隊長である、ホープ・ギルフォードという中年の騎士だ。

なお、馬車が壊れていて気付かなかったが、この馬車は、ラザウェル公爵家のものであり、先ほどの水色の髪の女の子は、マリー・ラザウェル公爵令嬢だそうだ。



マリー・ラザウェルは、物語において、聖女として一行の回復役として、魔人討伐パーティに参加する少女であり、彼女は”幼いころ、魔人の配下に襲われて護衛は全滅、本人も顔にひどい傷を負い、それでも気丈にふるまう傷だらけの聖女”という風に描かれて……


「あ」


先ほどの場面、俺たちがあの場にいなければ、まさにその通りになっていたんじゃないだろうか。

つまるところ、ものの見事に物語に介入してしまったのかもしれない。



「呆けてしまうのも仕方ないと思うが、もう少し色々聞かせてくれんかな。例えば、さきほどの剣についてとかだが」


呆然となった俺に、騎士隊長のおっさんは、苦笑しつつそう促してくる。

なお、俺立は現在、襲撃された場所に待機している。これは、馬車を引いていた馬をはじめ、全部の馬がジャガールが襲撃してきた時に逃げた、あるいは逃がしたこともあり、

現在、健脚な騎士が数名、手分けして移動手段を確立するため、近隣の町や村に走って行っているところだ。


なお、マリーという少女は、デネヴァとケットシー達とともに、少し離れた場所に座って楽しく話している。

俺もそっちの方がいいなーと思うのだが、囲む騎士たちが許してくれなさそうである。


「あの獣人の魔物、私たちの剣をまったく寄せ付けなかった。だが、君のその剣は、その防御をたやすく破ったように見える」

「まあ、特別製の武器ですからね。こう、魔法を纏う刃みたいな感じです。はい」

「それを、譲ってはくれんだろうか。今回は運よく何とかなったが、またあの魔人四天王とやらが来ないとも限らん。対抗できる手段が欲しいのだ」


そういう騎士隊長の言葉に、頷く騎士たち。断れる雰囲気じゃないぞこれ……


「………”虎徹”は、特にお気に入りの刀ですから、代わりのでよければ」


そういうと、俺はアイテムボックス空間から、一振りの巨大な剣を取り出した。

いわゆるバスタードソード型の魔法の武器で、岩石飛竜の尾の素材を用いた巨剣である。


「”ドラゴンテイル”という名の剣で、手に取って魔力を流し込めば、切れ味が増して、あの防御を切り裂けると思います。ただ、試作品の中でも、かなり大きくて俺だと扱えなさそうですんで。使えるならどうぞ」


なお、ドラゴンテイルの長さは大人の男性ほど。16歳になったとはいえ、俺だと振り回すのも大変な代物であった。


「ほお! これは良いものだな!!」


………と、そんな大層なでっかい剣を、騎士隊長は喜んでぶん回している。ドラゴンテイルには、魔力もしっかり纏われており、これならジャガールにも攻撃が通じるだろう。

このおっさん、実は規格外だが、それでもジャガールに負けているところを見ると、やはりあの魔力膜というのは色々と規格外の白物らしい。


「………他にはないのか?」

「ナイデス」


その様子を見て、副隊長らしい騎士のほか、生き残った騎士たちが物欲しそうな目で見てくるが、さすがにきりがないので、そう断ったのであった。



それから数時間後、数頭の馬と、それなりの外観の馬車が待機場所にきて、都市・タルカンに向かうことになった。

なお、騎士隊長をはじめ、数人は馬上で、その他の騎士と俺は徒歩である。

馬に乗らないかと聞かれたが、そもそも乗馬経験がないので丁重にお断りした。


………乗馬も勉強しておくべきかなと、そんなことを思いながら、足を進める俺であった。




序章-27(裏) 助けた少女はヒロインでした  ※三人称視点


「それでは、あのお方は……ペン様といわれるのですね」

「まあ、本名はさておき、私たちはいつもペンタって呼んでいるわね」


ペンタが、騎士たちの集団に囲まれて、いろいろと話をしている間、デネヴァとケットシーたちは、難を逃れた少女、マリーの話し相手役をすることになっていた。

女性と猫ということもあり、話し相手としては適切と思われたようだ。


マリーたちが、どうしてこうなったかを聞くと、彼女は10歳のころ、女神から魔神を討伐する巫女である、”聖女”として頑張るようにお告げを受けたらしい。

そうして、聖女としての修行のため、各地の教会を巡礼しているさなかに、魔人四天王のジャガールという強敵の襲撃を受けたのであった。

幸いなことに、割って入ったペンタの存在がうまく作用して、マリーは大けがをすることもなく、また、騎士たちも全滅をすることはなかった。


良いことの多い結果であったが、逆に、物語の中では起こらなかった、細かい影響も出てくるのである。


「……ペン様は、どのような方でしょうか」

「どのようなって、まあ、普通の冒険者よ。人々の頼みごとをかなえたり、迷宮に潜って魔物を狩ったり」


まず、マリーが四天王ジャガールの襲撃により、頬に大きな怪我を負うことで、その美貌にも傷がつき、そのおかげといってはなんだが、王族などからの婚姻のアプローチが消えていたのだ。本来は。

また、性格もキツイ美人だったはずが、今の彼女は、助けに来た少年に興味津々の、恋する少女であった。

その他にも、死んでいたはずの騎士隊長が生き残ったり、部下たちの過半数も生き残ったことで、のちの物語に影響を見せることになる。


「素晴らしいお方ですね!」

「………少し落ち着きなさい。あんた、目がハートになってるわよ」


ペンタを見て、ほうっ、と息を吐くマリー。

そんな彼女に、デネヴァは呆れるようにつっこみをいれたのであった。

【マリー・ラザウェル】物語では聖女かつ、ヒロイン。

頬についた傷を隠すこともなく、気丈に魔人討伐にまい進する……はずが



助けてくれた少年のことが気になって舞い上がり気味。

聖女としての務めは、一応ちゃんとやっている模様。

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