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エルフ自治区の発足から一ヶ月
世間では一時は話題になったが一般人には縁のない出来事なのですぐに落ち着いた
エルフが人前に出ることはほぼない為である
仮に外に出ることがあっても変身魔法を使用するので一般人の目に触れる機会はなかった
ちなみにソフィアは変身魔法が上手くないのと人見知りの為 外出することはなく買い物は通販又はソエルかユートに頼んでいた
世界の各国家の反応は 今のところ静観の構えだった
異世界人との関係は今でこそ良好だが 門が繋がった当初は色々と対立があったりした
戦争とまではいかないがそれなりの争いもあった
現在では条約により完全になくなったが異世界人を奴隷として利用する国も存在した
それを解決したのが若き頃のユートの父親を始めとする現在の特級探索者たちだった
小国とはいえ国家を相手にわずか数人で圧勝してみせた
彼らの活躍により異世界人との和解が実現し 現在の関係に至った
またその一件により特級探索者は国家に匹敵する力を有した存在だと示した
ダンジョン管理局と国連は世間には特級探索者の個人情報を秘匿することにした
彼らを利用しようとする勢力から守る為である
幸い特級探索者のほとんどは国や政治に興味がなく 異世界人に害なすことや自身の行動を制限されなければ友好的な態度だった
今回のエルフ自治区の発足についても こちら側が不利益を被ることもなかったので静観しようということになった
対応についてはダンジョン管理局に一任することで何が起きても責任を負うことがないのも理由の一つだ
いくつかの国や機関が接触を試みようとしていたが ダンジョン管理局から提供された資料の一文を見て断念していた
エルフ自治区 管理ダンジョン責任者兼大使 神木ユート
現在のユートの扱いは表向きは上級探索者であるが
ダンジョン管理局及び各国上層部からは特級探索者として扱われている
いくつかの理由として
かつての紛争を終わらせた立役者の一人 神木タケトの息子であること
彼自身がハーフエルフで
その存在自体が二つの世界を繋ぐ象徴であること
その上 実力も充分に特級クラスに達しているのだが
出自を隠して活動していた為情報規制が難しい理由で上級探索者のままでいる
これについてユートは知らないことだが
特に昇級する気もないのでそのまま伏せられている
仮にちょっかいをかけられても
エルフ自治区は既にユグドラシアに近い環境になっており それこそ国が戦争を仕掛けても返り討ちに出来る程にまで成長していた
それ以外にもダンジョン管理局が後ろ楯になっており 更には現存する特級探索者のほとんどが紛争経験者でユートの両親の盟友たちである彼らを敵に回すほど愚かではなかった
水面下ではそんな思惑が交錯していたが
渦中のエルフ自治区は平穏そのものだった




