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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

エンドレス

作者: 月魄 クロエ

   エンド


 この世界に、ハッピーエンドはない。少なくとも、俺の周りにハッピーエンドな人間はいない。かく言う俺も、ハッピーエンドにすることはできないだろう。

 それは自らが原因なのか。それとも周囲の人間、もしくはこの世界自体が原因なのか。答えは終わりに導いた者だけが知っている。


   とある終わり


「最近、日本の至る所で、同一人物が行なっていると思われる殺人事件が多発しています」

 ニュースキャスターが深刻そうな顔で言ったその事件は、言葉の通り北は北海道、南は沖縄まで事件が起こっている。

 無差別に殺している上に日本ならどこでも殺せる。そんな殺人鬼に日本国民は恐怖し、外出することが減っていた。外には警官が巡回し、重苦しい空気が漂っている。

「ははっ」

 思わず笑いが溢れてきた。殺人鬼は事件現場に一切の証拠を残さず、犯行から逃走まで、監視カメラなどにも姿を見せない。

 完璧な犯行。完璧な殺人。

 警察の努力は全て無駄だ。

「さて、今日も始めようか」

 自然と顔が笑みの形に歪んでいく。

「楽しい楽しい、人殺しを」





 今日は北の方に行ってみようか。最近はあまり行っていなかったから、そろそろ一人くらい殺してやらないとな。

 それにしても、今から殺されていく奴らがどんな顔をするか楽しみだな。どんな殺し方をするかも考えておかねぇと。

 空港に向かいながらそんなことを考える。だが今日は、周囲の様子がおかしいことに気づく。

 ……警察が一人もいない。いつもなら外を歩けば少なくとも一人は見かける。なのに今日は一人もいない。

 ………………まあ、いいか。

 万が一犯人の目星がついていたとしても、それは俺じゃないだろう。俺だとしても、言いくるめることは簡単だ。問題は、空港が機能しているかどうかだ。関東を拠点にしているから、絶対に車で移動したくない。足がつきやすい。

 空港に着き、北のどこに行こうかと考えながら周りを見渡すと、また違和感を感じた。ここにも警察がいない。犯人探しを諦めたわけではないだろう。

 全国の警察を総動員していると言っていたから、別の地域を捜索、巡回していても数人はいるはずだ。

 …………嫌な予感がする。

 兎にも角にも、今は移動することが先決だ。よし秋田に行こう。理由はない。

 飛行機に乗るために受付へ行き、秋田行きのチケットを取ろうと話しかけると、受付のスタッフが不思議なことを言い出した。

「犯人見つかったそうですもんね、やっと心置きなく旅行ができますね!」

「……え、え……そうですね」

 まさか、目星がついただけでなく確定だとは。愉快犯は俺が           把握している限りはいない。濡れ衣か。警察が情報公開していないか。どちらかは把握しておきたいが、難しいだろうな。

 かなり想定から外れた。少し慎重に動いた方がいいかもしれないな。

 受付を終え、すぐに出発するとのことだったので搭乗口に向かう。

 …………何故、ここまで人がいないんだ。

 スタッフは犯人が見つかったと言っていた。それも旅行に行くことになんの疑問も抱かなかったことから、少し前に知ったことなはずだ。

 …………いや、違うか。犯人が確定したのは合っているだろう。警察は俺に目星をつけている可能性が高い。一部の人間にのみ情報を公開し、動きを見る。だとしたら、動き過ぎるのは危険かもしれない。

 飛行機の中には無事に入ることができた。中にはほとんど人がおらず、数人がバラバラに………。

 いや、違うな。俺の席を囲むように座っている。思い違いならいいがな。

 しかし、ここで逃げに回っても、余計確信を与えるだけ………。

 なら、ここは一般人を装いながら動く。両親を心配して尋ねようとしている好青年、という設定にしよう。実家に行くために乗っていると思わせることができれば上々。無理でも、多少は逮捕に乗り出すのを遅らせられるかもしれない。

 今までにないピンチ………。

 いいねぇ。


 楽しくなってきた。






 席の座ると、隣に座っていた男が話しかけてきた。

「旅行ですか?」

「いえ、秋田の実家に行こうかと」

「そうなんですか、殺人鬼が捕まって移動も安心してできますしね」

「あれ、そうなんですか?」

「ご存知でないんですか?今ニュースじゃ、そのことで持ちきりですよ」

「そうだったんですね。最近仕事が忙しくてテレビをみる時間が取れてなかったので、わかりませんでした」

「なるほど。お仕事は何をされているんですか?」

「IT系の仕事をしています。家にいる人が多くなったせいか、仕事が増えたんですよね」

「IT系ですか。たしかに大変になったと聞きましたね」

『まもなく離陸開始します。席にご着席の上、シートベルトをお閉めください』

 離陸してしまえばこっちのものだ。飛行途中で警察が出てくれば、それはそれで皆殺しにしてしまえばいい。問題はその後だが……。まあ、なんとかなるだろう。


 その後は特に何か起こることはなく、時々隣の男が話しかけてくるくらいだった。杞憂で済んで良かったと思う反面、つまらないとも思ってしまった。俺の悪い癖だな。





 秋田に着くと初夏ではあるが、北国特有のパリッとした空気で、全く暑くない。北を選んで正解だったな。

 先程機内にいた奴らは、ついてこないようだ。…………いや、一人来ているが簡単に撒けるだろう。

 何はともあれ、まずは標的を見つけなければ。殺しすぎたせいか、警戒して誰も外に出ないから人が全くいない。ほどほどにしといた方がよかったかもしれない。

 適当に歩いていると、散歩中らしき日傘をさしている女を見つけた。ちょうど良い感じの背格好だ。あいつで良いか。

 周囲を見渡して殴るのにちょうど良いものが落ちていないか探す。女の近くに細長い木の棒が落ちているのを見つけた。

 そこまで歩いていき、その棒を手にする。女はこちらを気にしていない。とりあえず気絶させるか。

 ゴッ

 鈍い音がして、女が倒れる。無事気絶させられたようだ。

 どこに持っていこうか………。そういえばこの辺りに前使った廃墟があったような気がする。

 周囲を見渡してみると、二百メートルほど離れたところに廃墟が見えた。

 気絶した女を抱え、見つけた廃墟へと向かう。そこはコンクリートでできた建物で、以前使った時と少し違っているように見えた。しかし、使ったのはだいぶ前だ。多少は変わるだろう。ここなら、邪魔は入らないし、何より他にいい場所はここから遠い。

 適当な場所に女を放り、動けないように縛り猿轡をつけるのも忘れない。

 ………………こいつ、やけに白いな。

 よくみると髪や睫毛まで白い。アルビノというやつかもしれない。アルビノを殺すのは初めてだな。

「………っ…うぅ………」

 空が夕焼け色に染まり始めた頃。ぼーっと待っていたら女の目が覚め、うめき声を上げた。

「やあ!おはよう!そしてこんばんわ!」

「……?………??」

 女は今の自分の状況がよくわかっていないようだ。縛られている自分の体を見回し、少し思考した後、静かな瞳で俺を見てきた。

 ………なんだ?やけに冷静だな……。

「私の名前は月魄仁つきしろじん最近有名になってきた殺人鬼だ♪」

「………………」

 正体を明かしてもなお、冷静に、それどころか、何処か期待しているような瞳を向けてくる。

 …………つまらない。しかし、別に反応を楽しむための殺人じゃない。これから楽しめば良い。

「君は他と違って静かだね。いつもはしないけど、特別に轡を取ってあげよう!」

 持っていたナイフで紐を切る。その時にわざと頬も一緒に切ってみる。

「……いてっ」

 え、それだけ?全然痛そうじゃないけど。

「あぁ、ごめんね?ちょっといつもと違うナイフだから、手元が狂っちゃった♪」

「……思ってないでしょう」

「ん?」

 女は、相変わらず冷静な表情で、少し期待した目をしている。

「さっきから、言ってることと思ってること、違うんじゃない?」

 おぉ、なかなかやるな。これでもポーカーフェイスは得意な方なんだが。

「よく分かったね?心理学でも勉強してるのかな?」

 ここで初めて、女に表情らしい表情が出た。当たったことが嬉しそうな顔だ。

「私、大学で心理学を専攻してるの。勉強の成果が出てよかった」

 ここでそんなことを話すのか。正直、殺されることを喜んでいるようにしか見えないな。餌への質問は、ストレートに聞くのが手っ取り早い。

「ところで、そういう君も、さっきから何か期待しているようだけど……殺されるのが嬉しいのかな?」

 女は少し驚いたように目を小さく見開いた。正解のようだ。

「あなたもすごいわね。私、結構ポーカーフェイスには自信があったんだけど」

 ………まあ、表情に変わりはなかったけども。

「それはいいとして。君は、殺されたいって思ってるってことで良いかな?」

「ええ、そうよ。どんな殺し方をするの?バラバラにする?」

 その言葉に、嘘はないように見える。

 まじか。これは結構ラッキーなのでは?今までやりたくてもできなかった殺し方ができるかもしれない。

「なら、ゲームをしよう!」

「ゲーム?」

「そう、ゲームだ。問題ないかい?」

「ないわ。面白そうね!」

 アルビノ特有の少し赤みがかった白い瞳がキラキラと輝き、女の感情を伝える。

 心底嬉しいといったところか。まあ多少恐怖はあるようだが。

「あぁ、面白いとも。もっとも、今までの餌はルールを破って外に出ようとしたから大変だったけど。君はそんなことしないだろう?」

「もちろん!逃げるなんてつまんないもの」

「そうだね。その通りだ!」

「ええ!ところで、ゲームはなにをするの?」

 思う存分楽しめるゲームにしたいな。わかりやすいルールがいいか。

「鬼ごっこをしよう!ルールは簡単!」

一、建物の外に出てはならない。

ニ、捕まれば、体の一部を切り取られる。

三、ゲーム終了は逃げる側が死亡した時のみ。

「以上!何か質問は?」

 女が手を挙げる。

「はい先生!」

「はい、どうぞ!」

「このルールだと私が不利すぎると思います!」

 …………ん?そうなのか?

「具体的には?」

「あなたは、この建物を熟知していそうだし、何より身体能力が私の比じゃないくらい高いでしょう?」

「………それもそうか!ならどうすればいいと思う?」

「あ本当にそうなのね…………。歌いながら追いかけてくれない?そうすればあなたの位置がわかりやすいからフェアだと思うわ」

 歌いながらか………。やったことなかったな。いい案だが、流石に走りながら歌うのはな…。

「いいと思うけど、流石に走りながら歌うのは難しいかな」

「なら私を見つけたら、歌うのをやめるといいわ。………ほら、あの……身体の部位を集めながら逃げる漫画みたいに」

「身体部位探しのことかな?」

「そう!それよ!」

 たしかにあれを真似すればいいな。

「よし!じゃあそうしようか。5分後にスタートするから、逃げ始めていいよ!」

「急に始めるわね………まあ、逃げるとするわ。楽しみましょうね!」

 そう笑顔で言った女は、頭を気絶するほど強く打たれたとは思えないほど俊敏に駆けていった。

「これは、結構大変になるかもしれないな」




 5分経過した。女の追跡を始めよう。

 その前に、なにを歌おうか。

 ……………オリジナル、と思ったがそれは無理だろうな。なにせ俺のセンスが壊滅的だ。

 ……………よし、決めた。

 静かに息を吸い、歩きながら歌を歌い始める。




その命に意味はあるのか。

この命に意味はあるのか。

その命に価値はあるのか。

この命に価値はあるのか。

その命に希望はあるのか。

この命に希望はあるのか。

否!あるのは無意味な命のみ!

否!あるのは無価値な命のみ!

いとつの命が消えるたび、どれほど涙が流れるか。

近しい者ほど涙する。

それは命に希望があると思えることだ。

命に希望を見出すために。

私は俺は僕は君は、

ただただ人を、

殺し続ける。




 この歌は、学生時代、俺の友人が作った歌だ。とてもとてもひどい歌。しかし、だからこそこの場に相応しい。ふざけたこのゲームに。

 しばらく歌いながら練り歩いていると、近くの小部屋から小さく物音がした。おそらく、そこにいるのだろう。

「…………」

 案の定、というか………隠れている女は白い服を着ているため、コンクリートのこの場所ではとても目立った。

 一回目、まずは左腕を取ろう。

「さあさあさあ!まずは一回目!部位は左腕だ!」

 そう言いながら隠し持っていた鉈を左腕へ振り下ろす。

「!?っ〜〜っ〜!」

 流石に、腕一本切り落とされたら痛いか。悲鳴を出さないのには驚いたが。

「さあさあさあ!2分後にはまた殺しに行くよ!早く逃げないと、終わっちゃうよ!」

「本当に容赦ないわね!急に切りつけるの!?」

「切る時に大声出したじゃないか」

「そうだけど!そうなんだけど!すごく痛いから取り敢えず言わせて!同時に言っても意味ないわよ!」

「さあ!残り1分!逃げなくていいのかい?」

 女は悔しそうにしながらも走り出した。早く逃げないと終わってしまう。とは言ったものの、どうせ出血で死ぬんだよな。そうなる前に殺したい。

 1分が経ち追跡を再開する。今度は血が滴っているから行き先を予測するのが楽そうだ。

 歌うのが少し楽しくなってきた。たまにはこういうのも悪くない。

 追いかけているうちに、女が残していっている血の量が増えていっていることに気がついた。同じ場所に留まっていたのなら、追い付いていてもおかしくないが、物音すらしない。

 落ちる血の量が減ることはあっても、増えることはないはずだ。……………新しく傷ができない限りは、だが。

 まあ、万が一は想定しておこう。ないことを祈るが。なんか引き摺った痕まで見えはじめたんだが………。まじかぁ、横取りされたのかぁ。

 まだ生きてると思っておこう………。

 ……………見つけた。

 赤い血溜まりの中、両手両足、そして首も切断された状態で倒れていた。

 女が死んだことで、ゲーム続行は不可能。自分で切断できたのは左腕のみ。全くもって不愉快だ。ふざけるな。

 触れてみると、女の死体は温かく、まだ血が出ていた。おそらく、殺されてから数分もたっていない。周囲を見回しても女の首はなく、手足すら落ちていない。

 ……………背後から人の気配がする。こいつを殺したやつだろう。

 勢いよく振り返ると同時に、鉈を突き出す。

「うわっ!あっぶねぇなぁ!」

 寸前で後ろに跳び、突き出された鉈を避けた男は、何かに満足しているように、醜い笑いを浮かべていた。

「あ!お前もしかしてオレと同じ模倣犯か?いやー、本物の殺人鬼が暴れてくれてるおかげで、こっちも殺しがしやすいってもんだよな!」

「…………………」

 あぁ、なるほど。警察はこいつを追っていたのか。この男は、飛行機に乗っていたとき隣にいた男だ。

「…お?お前飛行機に乗ってたやつじゃんか!親の所行くっていうからつけてったけど、途中で見失ってたんだよ!」

「…………なるほど。要するに君は、獲物を横取りしただけでなく、私を殺そうとしたのか。」

「まあ…………そうなるかな。殺そうとしたのは悪いと思ってるけど、横取りはしょうがねぇよ」

「へぇ、理由は?」

「だってこいつ、オレを見た途端、めちゃくちゃつまんなそうな顔してどっか行けって言ったんだよ」

 まあ、言いそうではあるな。

 しかしそれは納得できるものではない。正直、今すぐに殺したい。本来なら今頃、殺せていたはずなのに、男のせいで殺せていない。死体を見せつけられて余計にそれが強くなっている。

「……その子は、殺されるとき、何か言っていたかな?」

「あー………あ!なんかお前に殺されても嬉しくないとか言ってたな」

「そうか……」

「それにさぁ、ここ、元々はオレが使ってたんだよ。オレが殺しをするとき、いつもここ使ってたんだよ」

「そうか。君がここを使ったのか。どうりで前と違うと思ったよ。」

「は?お前何言ってんの?」

 俺の発言の意味が理解できないと言ったように声を上げる。

「やあやあ初めまして!私の名前は月魄仁!最近有名になってきた殺人鬼だ!」

「は!?お前模倣犯じゃねぇの!?」

「そうだよ!私は模倣などつまらない真似はしない!何が楽しいのかもわからないね!」

 俺は鉈を構え、男の足に狙いを定める。逃げられたら困る。

「あ!?ちょ、ちょっと待てよ!悪かったって!同業者だとは思わなかったんだ!」

「君は本当につまらないね。私は同業者だからこそ、殺そうとしてるんだよ。今みたいに、邪魔されることがあるからね」

 逃げようとする男の足を切り落とす。

「っああぁぁぁあああ!!!!」

「あぁ、痛いかい?私も同じくらい心が痛いよ」

「っあしがぁ!」

「せっかく楽しいゲームをしていたのに、君のせいで台無しだ」

「っ知るかよ…………!そんなの………!」

「ああそうだ。さっき君逃げようとしていたよね?あれは殺されたくなかったからかな?」

「そうだよ!そうに決まってんだろ!」

「そうかそうかなら君にチャンスをあげよう。君自身で警察をここに呼べたら、君を殺すのを考え直してあげよう」

 その言葉に、男はすぐさま携帯を取り出し警察へ電話する。

「ああ、スピーカーにするのを忘れずにね」

 電話に出た警察は、男の息遣いを聞き何事かと問いかけた。

「た、助けてくれ!今、ここに殺人鬼がいて、こ、殺されそうなんだ!」

『大丈夫ですか!?どこにいるのか言うことはできますか!?』

 そこで男の首に鉈を突き刺す。

「かっ、あ…………な…んで………」

「考え直した結果、殺すことにした」

 すぐに男が生き絶える。スピーカーにしていたおかげで警察は男の異常に気づいたようだ。

『どうしました!?大丈夫ですか!?』

「やあやあはじめまして!私の名前は月魄仁!最近有名になってきた殺人鬼だ!」

『…!?!?!?』

 突然のことに声が出ないようだ。

 これで捕まりやすくなるかもしれないが、声だけで場所を特定なんてできるわけがない。それに名前だってもちろん違う。殺す時にのみ名乗っているものだ。

「この男は愚かにも、私の獲物を横取りした。しかも、この男は君たち警察が追っていた男だろう。本物は違うというのに、本当に馬鹿な警察だ!」

『…………!………!』

 電話越しに、何か叫んでいるのが聞こえる。おそらく、場所を特定しろなどと騒いでいるのだろう。俺にたどり着く証拠は一切ない。指紋も残していない。

「さあさあ!早く捕まえてみろ!できるものならな!」

『お望み通り捕まえてやる………!首を洗って待っていろ……!』

 ブチっと電話が切られる。場所の特定がすんだのだろう。

 流石に顔を見られると今後動きづらくなる。もう逃げた方がいいだろう。

 血塗られた廃墟から出ると、既に月が高い位置まで昇っていた。とても大きな、刃物のように鋭い三日月だ。

 今日の成果は…………まあプラマイゼロといったところか。一人殺せたが一人横取りされた。

 気を取り直して次に行こう。次は北か、それとも南か。警察はどちらだと思うだろうか。今のところ、交互に行っているから、南だと思うかもしれないな。

 サイレンの音が遠くで鳴っている。本来なら追い詰められたような意識に囚われるかもしれないが、遠いその音は、逃したことを悔やむ負け犬の声に聞こえ、ひどく滑稽に思えた。


   エンドレス


 この世界にハッピーエンドはない。少なくとも、俺の周りにハッピーエンドな人間はいない。何故なら、俺の周りで終わりを迎えた人間は、ほぼ全て、俺か、他の殺人鬼に殺されているからだ。

 俺が生きている限り、それは永遠に終わらない。俺自身も、終わらせるつもりはない。

 さあ、また始めよう。楽しい楽しい、人殺しを!

 はじめての投稿です。おかしいところとかあっても大目にみてやってください。

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