~平成女の目標は、社会のための活躍よりメディアで目立つこと?~
パンティー無しってすごい時代でスースーな気分はもうハンパない、と独り言を言いながら、夢で結婚生活を体験したことで大人になったような気がしていた。
キキョウは早く起きてしまったので父が朝御飯を作っている横でミルクや食パンをテーブルに並べながら、父に女が働くことについてどう想うか聞いてみた。
49歳の父は現役の塾の講師なので教えるのも長々と語るのも大好きで、キキョウは朝から話をふってしまったことをすこし後悔した。
‘現代の日本は社会としては成熟していてね、明治時代に比べてそれなりに男女平等も浸透してるだろ。女性が活躍しようとする原動力は社会のためでなくて自己実現だ。’
‘世界のためとかは?‘
‘メディアに注目されることが一番だと誤解して有名人を目指す女性が多いのさ。たとえば、STAP細胞論文問題では博士論文の20ページ近くがアメリカの研究所のホームページの丸写しで、画像の盗用もバレたろ。自分で恥ずかしいと思わない社会で生きてきたのさ。’
’その人どうなったんだろ…‘
‘最近も17年もある有名国立大学の女性が提出した博士論文に不適切な箇所が合計320カ所も見つかってね、結局は学位授与取り消しになったのさ’
’なんで女だけバレるのよ?‘
‘キキョウはするどいなぁ’
父は超が付く進学校から三浪して東大に入ったが同期との闘いに勝てないと悟り中退、
大手塾に就職したがそこでも組織の駒になれず1年で統合失調症と胃潰瘍を患って入院し辞めてしまっていた。
このとき父を担当した看護師の一人が母だった。
父の話を聞いたキキョウは、恋愛ばっかりでなくていろいろな時代のいろいろな生活レベルの女の悩みも覗いてみたくなった。
’パパ、奈良時代の女の子はどんな感じで結婚したの?‘
‘結婚式は男性側の出席者は本人のみでさ、妻は改姓しなかったんだ。婚姻生活は別居でどちらかが通ったんだよ。‘
‘それ、いーわ!’
’夫婦は育児が大変な時は共同生活することがあってもあとは別居さ。しかも、とくに理由がなく3か月以上往来が無い場合は離婚が成立だよ。‘
‘あっさりしてて素敵だわ’
’妻が訪ねてきた夫を拒否する場合も離婚とみなされたらしい。’
‘なんでそんなに素敵すぎるの?’
’そりゃ自立して収入や財産を持っていた豪族や貴族の女性の結婚だからさ‘
‘貧乏な家の女の子は嫁にいったのかな…’
’庶民も子育ては村の親族の助け合いの中で行われていてね、子供は母の元で育って、夫婦の財産は子供が男女平等に相続したんだ‘
’最高じゃない!’
’異母兄弟の婚姻は珍しくなかったのはどうもね…’
’母系制だったから異母兄弟は別居してるだろ、近親的意識も低かったんだ‘
‘そこはキモいわ…’
今夜は平安時代くにさかのぼってみたくなりキキョウは何冊か該当する本の中の絵を探してみたが、描かれているのは綺麗な着物を着ている女ばかりで貧しい女は見当たらなかった。
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’キキョウ、ソノキだ‘
‘?’
黄色と白のドレスの様な衣装をまとった奈良時代の扇をもった若い女を写メって眠ったキキョウは今、すこしカビ臭い家の中にいて、窓のそとにはかなり広い庭と他にもいくつも小さな建物が並んでいる大きな屋敷のひと部屋にいるのがわかった。
若い男の子が自分を呼んでいる。
’キキョウ‘
‘誰?’
’私だよ‘
薄暗い部屋に滑り込むように入ってきていたその男の子は不思議な匂いをさせて抱きついてきているので顔は見えない。
父が言っていた夫が通ってくるという結婚のスタイルだな、とキキョウは誰にも見えないどや顔をした。
’顔を見せて‘
’今さら夫の顔をみたいの?’
’うん‘
’夕べも見たじゃないか‘
‘…’
キキョウはその男の子に頬を強くつかまれて何度もキスされているのでやはり顔は見えなかったが、
相手が中年でなく若い男の身体をしているのが分かるようになっていることが可笑しかった。
一生懸命自分を脱がそうと頑張っている男の子を肌で感じながら奈良時代の夜は長そうだな、と思ったキキョウはだんだん瞼が開かなくなってきて意識が遠のいていった…。