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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
二章

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超重力

 な、何だあいつは⁉


「ぐ……せ、瀬名さ……」

「お、おい! 小鳥遊、しっかりしろ!」

「兄さん!」

「ぐ……」


 ――タイミングが悪すぎた。

 魔力枯渇でふらついていた桐谷は地面に這いつくばっている。

 その傍らで、藍莉も膝をついたまま動けないでいた。

 周りを見渡すと、古代竜の光線にも耐えた精鋭達が、この謎の圧力に押し潰されそうになっていた。


「ほぉ~! 一人イキの良いのがいるなぁ! ははは~!」


 アロハの男が向かってくる。

 その後ろに見慣れた顔を見つけた。


「く、黒田⁉ お前が何でここに……」


 アロハの男は俺と黒田を交互に見たあと、ニッと白い歯を見せて笑った。


「なぁ~んだよ、クロ! お前のツレか? 早く言えよ、ったく水くせえな」

「い、いや……そういうわけじゃ……」

「おい、黒田! どういうつもりだ⁉」


「チチチ……いま、俺が話してんだ、See what I am saying?」

 アロハの男が片眉を上げて人差し指を振ると、男の瞳が金色に輝いた。


「ガハッ⁉」


 突如、身体が押し潰されそうになる。

 猛烈な負荷、自分の骨が軋む音が聞こえる。


「どうだ? 俺の超重力圏(グラビティ)は?」


 クソッ! あいつのスキルか⁉

 な、なんて重さだ……憑魔した状態だと言うのに……。


「す、スナイダーさん、その辺で……」


 黒田がアロハを止めようとする。


「く、くそ……野郎が……」

「What's? 何か言ったか?」

 スナイダーは余裕の表情で耳に手を当て、俺をからかうように笑った。


(ブ、ブネ……教えてくれ、このスキルからどうやって逃れたら……)


『やれやれ……君は本当に世話が焼けるな。実験体(モルモット)なりにもう少し頭を使いたまえ。ったく、何のために魔素執刀(マナ・オペレート)がある? ま、良く魔素の流れを見ることだな……』


 魔素の流れ……?

 俺は視界に神経を集中させた。


 場に渦巻く魔素は相変わらず凄まじい濃度だ。

 だが、スナイダーの周りだけ、どす黒く変色している……。

 奴を取り巻く魔素が、周りの皆を押さえつけているように見えた。


 もしかして、魔素を操っているのか……?

 なら、その魔素を魔素執刀で取り除いてやればどうだろう?


『――魔素執刀(マナ・オペレート)!』


 俺は自分にのしかかる(よど)んだ魔素を手刀で切り刻んだ。

 ふっと、身体が軽くなる――。


「はは、いける……いけるぞ……」


 スナイダーの操る魔素を切除する。

 なるほど、切り離された魔素は元の赤色に戻っている。

 切り離した時点で、あの重力の作用はなくなるわけだ……。


「ん? おい、お前……いま何をした?」

「あぁ? 何か言ったか?」

 俺はスナイダーの真似をして耳に手を当てた。


「……そんなに死に急いでどうする?」

「ふん、勝手に最強気取ってろ。言っとくが、お前の優位性(エッジ)は断たれた、言葉には十分気を付けろよ?」


「ぬ……Arghhhhhhhhhh――――!!!」


 スナイダーが古代竜にも負けない大声で叫んだ。


「いやぁ~まいったまいった。このブレイク・スナイダーに、まだそんな口を利く奴がいたとはなぁ……」


 俺はスナイダーを無視して、黒田に声を掛けた。


「おい、黒田! 選ばせてやる。俺につくのか、その大男につくのか。言っとくが、例えお前でも、俺は容赦はしない!」

「ちょ、ま、待ってくれ瀬名!」


「おい、クロ……てめぇ、メリルの人間が、部外者に踊らされてんじゃねぇぞ!」

「ぐあぁ⁉」


 黒田が地面に這いつくばった。

 スナイダーが纏う魔素が黒田に覆い被さっていた。


 やはり、コイツのスキルは魔素を操る能力……。

 ブネの言っていた場のアザトースに作用し、重力操作という超常を引き起こしているのか。


 だが……種がわかれば何てことのない、クソスキルだ。

 魔素が見える俺には、もう通用しない……。

 俺は他のメンバー達の魔素を断ち切った。


「う、うぅ……」

「や、ヤバかった……」


 皆が苦痛に顔を歪めながらも、身体を起こす。


「小鳥遊、皆を回復してやれ」

「は、はい!」


「……どういうことだ?」


 スナイダーの顔に焦りが見えた。


「ああ、お前のクソスキルのことか? 悪いが……俺にはもう、通用しない」

「……」


「スナイダー! この件、泉堂は知っているんだろうな……場合によっては金曜会(うち)と戦争になるぞ!」

 

 藍莉の肩を借りた桐谷が、鋭い眼を向ける。

 地面に突っ伏した黒田が、必死になって声を絞り出した。


「ま、まずいっす……よ……退きま……しょ」


 スナイダーが黒田に掛けた重力を解く。

 黒田が咳き込みながら、仰向けに転がった。


「Fuck……揃いもそろって、何を言ってんだ? この俺が泉堂を怖がるとでも?」


 鼻で笑いながら、スナイダーは俺たちを順に見た。

 そして、やれやれと頭を振り、小さく肩を竦めた。


「お前の噂は聞いている。だが、いくらお前でも、S級三人を相手に無事で帰れると思うなよ?」

 桐谷が剣を抜くと、隣の藍莉もスナイダーに鋭い爪を向けて威嚇した。


「HAHA! S級⁉ 笑わせるなよ。お前らなんて、国際基準なら良くてAってとこだろ? 嘘だと思うならAppraisal(アプレイザル)Monolith(モノリス)にでも聞いてみるんだな、『僕たちは何級でちゅか~?』ってな」


「何だと……」

 桐谷の顔が怒りに歪む。


「ちょ⁉ ス、スナイダーさん……」

「クロ、お前まで乗せられやがって……ま、そこでゆっくり見てろ」

「え……」


「さて、お前ら準備はいいんだな?」

 ニヤリと笑いながら、スナイダーは肩を鳴らした。


Kill() them(殺し) all()――」


 その瞬間、俺の身体が熱を帯びる。

 何が起こったのか理解するまでに数秒かかった。


「――ぶほっ⁉」


 衝撃で身体がくの字になった。

 凄まじい勢いで背中から岩壁に吹き飛ばされ、身体が岩の中に埋まる。


「ぐ……ぐはっ!」


 吐血⁉ 生まれて初めてだぞ……。

 クソッ! 口を切ったのか内臓をやられたのかわからん。


 ま、マズいな……身体の自由が利かない。

 スナイダーを見ると、足と拳に魔素が凝縮されていた。

 そうか……自分の攻撃に重力を乗せたのか……。


「あんだけデカい口を叩いたんだ、もう少し遊んでくれよ、なぁ?」


 スナイダーの追い打ちが来る!


「オラァ!」


 身体全体に衝撃が走った。


「オラオラオラァ!!」


 どこを殴られているのかさえもわからない。

 ただ、岩が崩れる音と、自分の骨が砕ける音が聞こえた。


「…………」


 暗い……何も見えない……。

 俺、やられちゃったのかな……。


 ブネ? アスモデウス? アンドロマリウス?

 誰もいないのか?


 そうか……。

 憑魔も解けてしまったようだ。


 身体の感覚がない……。


 リディア……日南さん……。

 はは、この期に及んで俺って奴は……。


 あぁ、やっぱ来るんじゃなかったかな……。

 大丈夫かな……石丸さん、無事だといいなぁ……。


 みんな……ごめん。

気に入ってくれた方、面白いと思ってくれた方、

ぜひブクマや下の星から評価をいただけると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 国際規準と国内規準に差が。 確かによくある話ですね
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