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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
二章

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脅威襲来

 道は上り坂になっていた。

 三人が並んで通れるくらいの広さはあるが、ここで挟撃されると厳しいだろう。

 周りも同じことを考えているのか、皆、緊張した様子で辺りを警戒している。

 

 一体、どこまで続いているのだろうか。


「まるで黄泉比良坂だな……」

 石丸さんがボソッと呟いた。

「あの霊界に通じてるとかいう?」

「お、知ってたか。まあ、何ていうか不気味だよなぁ……」


 その時、最前列の方から声が聞こえた。


「おーい、部屋があるぞー!」


 俺は石丸さんと顔を見合わせた。


 *


 部屋に入るなり、思わず声が漏れた。


「……うわぁ、いかにもって感じ」


 とんでもなくヤバい雰囲気が漂っていた。

 意味深に配置された篝火付の柱、床に描かれた巨大な魔法陣。

 そして何より、天井の巨大なつららのような魔石から、尋常じゃない量の魔素が魔法陣に向かって流れ落ちていた。


「おいおい……なんだよあの馬鹿デカい魔石はよぉ……」

 石丸さんが口を開けたまま魔石を見つめている。


 桐谷が全員に向かって指示を飛ばした。

「固まるな! 三隊に分かれて、戦闘態勢!」

「「了解!」」


「瀬名、君は自由に動け」

「ああ……わかった」


 桐谷は俺に背を向けると、大声で叫んだ。

「よーし! ここからが本番だ! 全員生きて帰るぞ!」

「「おうっ!」」


 その時、ブネが語りかけてきた。

『何か来ているな……』

(え⁉)


 刹那――つんざくような雷鳴が轟く!

 頭上の巨大魔石と床の魔法陣との間に、赤い稲妻が迸った!


「な、何だ⁉」

「く、来るぞーっ!」


次の瞬間、魔法陣の上に、灰色の巨大な竜が音も無く姿を現した。

洞窟の岩肌のようなその鱗には、所々苔が生え独特な臭気を放っている。


「瀬名さん! あ、あれ古代竜ですよ!」


 小鳥遊が興奮気味に声を上げた。


「古代竜……」


 傷だらけの鱗、小さな穴が開いた羽、欠けた牙、確かにかなりの年月を生き抜いてきた貫禄がある。

 ブネが言ってたのはコイツのことか……。


『あー、それとは違うんだが……まあいいさ、好きに暴れたまえ』

(ん? 違うって……あいつボスだよね?)


 ブネの返事が返ってくる前に、戦闘が始まった。

 桐谷の指示が飛ぶ。


「私が落とす! 全員で時間を稼げ!」

「「おぅ!」」


 すかさず支援術師(エンチャンター)達が全体に『防御力向上』『炎熱耐性強化』『状態異常耐性強化』を掛けた。


『グオォォオ――――――――――――――ッ!!!!』


 古代竜の咆哮にダンジョン全体が震える。


「凄ぇ……」


 巨大魔石から流れ落ちる魔素が、乾いた石に吸い込まれていくように、古代竜へ集まっていくのがわかる。

 同時に、背中にある鋭い背びれが燐光を纏い始めた。

 ま、まずい……。


「何か来る! みんな伏せろ!」


 そう叫んだ瞬間、古代竜の口から目映い光線が発射された――。


「ぐわっ⁉」


 爆風が吹き荒れる!

 俺は床に身を屈め、顔を腕で覆った。

 土煙が舞い上がり、バラバラと石が落ちてくる。

 風が収まり、慌てて辺りを見ると、さすが精鋭揃いなだけあって、何とか全員が持ちこたえていた。


 そんな中、光のオーラを纏いながら剣を構え、古代竜と一人正面から対峙する桐谷がいた。


「全員よく耐えた! 後は私に任せろ!」


 桐谷が動く――。

 古代竜の頭上に飛び上がり、太陽の如く輝く剣を振り下ろす!

 その姿は、まさに万民を救う聖騎士そのものだ。


『うおぉおおお!!! ――聖天光破斬(ラグナスラッシュ)!!!』


 カッと閃光が迸る!

 同時に、古代竜の身体に一直線に輝く光の筋が通った。

 着地した桐谷が剣を鞘に仕舞う。


 古代竜の巨体が、光の線を中心に上下にずれる。

 断末魔を上げる間もなく、そのまま崩れ落ちて地面を揺らした。


「おぉ……やった……」

「やったぞぉ!!!」

「うおぉーーーー!! みんな、桐谷部長がやったぞーー!」


 あ、あの古代竜を……一撃だと⁉


『ふむ、今のは中々のものだな……剣撃に神秘性を付与したわけか』

 ブネの感心したような呟きが聞こえた。


(なあ、俺とあいつならどっちが強いと思う?)


『……ふん、そのような質問をする時点で察したまえ。己の力量すら計れないようでは実験体(モルモット)失格だぞ?』

(うぐ……)


 手厳しいな、まあ、確かに今の俺じゃ、アスモデウスのルクスリアを使ったとしても、古代竜を一撃ってわけにはいかないか……。

 だが、決して届かない距離じゃない。現時点での最大火力は劣るかも知れないが、俺にはまだ、召喚していない王クラスの悪魔が二人もいる……、それに、スキルの多様性なら俺の方が上だ。


「クッ……」


 桐谷が膝を付く。


「き、桐谷部長!」

「に、兄さん!」

 狼の姿の藍莉が駆け寄る。


「ただの魔力枯渇だ、しばらくすれば治る……」

 鬱陶しそうに、藍莉の手を押し払う桐谷。


回復術師(ヒーラー)! 早く!」

「僕に任せてください!」


 小鳥遊が駆け寄ろうとした、その時だった――。

 突然、場の空気が圧縮されたような、得体の知れない感覚に襲われる。


「何だ⁉」


 次の瞬間、俺を除く全員が地面に抑え込まれるように倒れた。


「ぐああっ⁉」

「な、何だ……何が……⁉」


 全身が押し潰されそうになる。

 とんでもない力だ……!


『ほら、言っただろう? 何か来ると』

 ブネの声がする。


「HAHAHA!! 見ろよクロ、あの間抜け面を!」


 笑い声の方を見ると、そこにはアロハシャツを着た金髪の大男が立っていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ブネが察知したとなると、まさか入り口から重力操作全開できたのか?
[一言] そろそろ悪魔ごとの使い分けとかも楽しそうですね
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