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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
二章

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来る者拒まず、去る者許さず

「よし! 行くぞ! いち、に~の、さん!!」

 石丸さんを含む回収班と後衛達が、盾役に守られながら扉を押し開けた。

 突入した瞬間、盾役達が一斉に扇状に広がった。


「クリア!」

「クリア!」

「こっちもクリアだ!」


 盾役の声に、近接ディーラー達が構えを解いて周囲を見回している。

 俺と小鳥遊も中に入ると、そこは巨大な神殿のような造りだった。


 正面に巨大な石像があった。三つの頭があり、背中には天使のような羽が、手には宝玉と錫杖のような物を持っている。


「ありゃなんだ? 随分、でっけぇな……」


 石丸さんが口を開けたまま見上げた。

 小鳥遊は石像よりも、石像を眺めるメンバー達の顔を観察している。

 やっぱ、小鳥遊って不思議ちゃんだよな……。


 石像は一体だけで、他には数本の柱と篝火が揺らめいているだけだ。


「気を抜くな! そのままゆっくりと前進だ!」

「はい!」


 桐谷の指示で盾役が大楯を構えながら、ジリジリと前に足を伸ばす。

 何も無いわけがないのだ……皆もそれをわかっている。


 ここはレベルSダンジョンの中、しかも、あんな大層な扉まであった部屋だ。

 ただで済むとは、誰も思っていない。


 いっそのこと、開けた瞬間に戦闘が始まった方が、精神的に楽だったかも知れないと思えるほど、辺りの空気は張り詰めていく。


「よし、盾役は状況を報告!」

 桐谷が静寂を破った。

 皆が一瞬、大きく息を吐いたのがわかった。

 さすがに上手いな、あのままだと皆の神経が持たなかった。


「異常なし!」

「こちらも問題ありません!」

「異常なし!」


「よし、そのまま前進、石像を調べる!」

「「了解です!」」


 周囲を警戒しながら石像を取り囲む。

 石像の足元に石版があった。


「桐谷部長! モノリスらしき石版が埋め込まれています!」

「見せてみろ」

 メンバーをかき分け、石版の前に立つ桐谷。

 それに便乗して、俺と石丸さんも後ろから覗き込んだ。

 石版には解読はできないが、象形文字のような『字』が刻まれていた。


「ありゃ……何だ? 見たことない字だな……」

「うーん……」


『ふん、古代アスール語だな……』

「ブネ⁉」

「瀬名さん? 急にどうしたんですか?」

 小鳥遊がきょとんとした顔で俺を見た。

「あ、いや、何でもないよ」


 確かにいまブネの声が……。


『君の脳内に直接語りかけている』

「やっぱり!」

 石丸さんがビクッと身体を震わせる。

「うぉっ⁉ びっくりしたぁ、どうしたんだ?」

「い、いえ……ちょっと思い出しただけ」


 いかんいかん、変な奴だと思われる。

 心で念じれば通じるかな……。


(き、聞こえますか……)

『はぁ……何をやっておるのだ』


(通じた!)

『通じるも何も、君が聞こえるようになっただけだがな』


(え……)

『はわわぁーっ! マスタぁー! 頑張ってますか~!』


(あ、アンドロマリウスか⁉)

『アンドロマリウス、我より先に声をかけるとは……』

『はわ⁉ も、申し訳ありません……!』


(アスモデウスもいるのか……)

『もういい、君たち下がりたまえ、うるさくて敵わん』

『ブ、ブネ殿、これは失礼を……』


 あのアスモデウスが謝っている。

 この中ではブネが一番序列が上なのか……?

 うーん、悪魔の世界も上下関係が厳しいのかな。


『まあ、そんなわけで、君の影を介して我々は繋がっている』

(な、なるほど……って、ずっとこのまま⁉)


『それはない。魔素が薄い場所に行けば、繋がりを維持するのは難しいだろう』

(じゃあ、ダンジョンを出れば会話はできないの?)


『魔素濃度、あとは君の力次第だな』

(そっか……あ、さっき古代なんとか語とか言ってなかった?)


『その石版に書いてあるだろう、<来る者拒まず、去る者許さず>と』

(え……⁉)


「しっかし、何か隠し通路があるわけでもないし……どうなってんすかね?」

 メンバーの一人が、石像をぺしぺしと叩いた。


「おい! 無闇にさわるな!」

 桐谷が注意する。

「あ、すみません……」


 良かった、何も起こらない。

 そう思った瞬間、扉が閉まった――。


「おい! 扉が⁉」

「――しまった! 全員戦闘態勢だ!」


 素早く散開したメンバー達は即座に反応した。

 さすがは桐谷が精鋭と呼ぶだけはある。

 盾役は皆を庇うように三人一組で壁を作り、近接ディーラーは攻撃態勢を整えた。支援術師(エンチャンター)回復術師(ヒーラー)は魔石回収班を庇いながら周囲を警戒する。桐谷は先頭に立ち、剣を抜いた。


 ――その時、石像の持つ宝玉が光を放った。

 俺達の周囲を魔方陣が取り囲む。


「何だ⁉」

 素早く支援術師(エンチャンター)回復術師(ヒーラー)達が魔法防壁を展開する。

 青白い光のヴェールが全員を包んだ。


「何か出て来るぞ!」

 並んだ魔方陣から、二足歩行の蜥蜴のような魔物が現れる。


『ギギギッ!』

『グゲゲッ!』


「ド、ドラゴニュート⁉」

「ボ、ボス級があんなに……」

「怯むな! 殲滅しろ!」

 桐谷は叫ぶと同時に、スキルを放つ!


『――聖光(ホーリー・ライト)!』


 閃光が迸ると同時に、数体のドラゴニュートが膝を付いた。

 

『ヴォオォオオオオーーーーーーーッ!!!』

 銀毛の獣に変身した藍莉が雄叫びを上げ、襲い掛かる。


「副長に続け―――ッ!!」


 場は乱戦となる。

 厄介な相手だ……。

 魔法耐性もさることながら、回復力が半端じゃない。

 腕を切り落とせば、瞬時に新しい腕が生えてきやがる……。


「クソッ! キリがないぞ!」

「一体ずつだ! 焦るな、数さえ減らせば何とかなる……!」


 その時、脳内にブネが語りかけてきた。


『ほれ、急がぬとまた来るぞ?』

(え、また?)


 ――次の瞬間、頭上を無数の魔方陣が埋め尽くした。


ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ドラゴニュートでボス級というとドラゴンは伝説ですかね。 クリアまで出ることは叶わない仕様でしょうが、外から次々と味方が来る分には問題なさそうで。 次入ってくるのが味方と言えるのかは不明です…
[気になる点] アスモデウスよりブネの方が偉いの? 確かに数字はブネの方が先だけど、ブネの地位は公爵、でもアスモデウスの地位は王だからアスモデウスの方が偉いんじゃないのかな?
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