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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
二章

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黒い扉

 剣ヶ峯の山中に、完全に場違いな二人がいた。

 真冬なのにサングラスを頭に乗せ、派手なアロハにビーサン姿のスナイダーと、高級ブランドの黒スーツに革靴を履いた黒田だ。


「あの……スナイダーさん、俺に付いてきても何もないですよ?」

「チチチ……、ハッハァッ! クロ、俺を出し抜こうなんざ五億年はえぇぞ?」

 人差し指を左右に振りながら、スナイダーが笑う。


「でも、ギルティの奴らが動いてるって報告もありましたし……」

「勝手にやらせとけ、もう十分叩いただろ。ルード一人でお釣りがくる。それより……何か匂うな」

「え? そうっすか?」

 すると、大袈裟に鼻をヒクヒクさせていたスナイダーが、ピクンと何かに反応した。


「What a windfall! HAHA!! いいぞクロ、お前はやっぱり持ってるな!」

 満面の笑みを向け、バンバンと黒田の肩を叩く。


「いてて……な、何か見つけたんすか?」

「ああ、魔素(マナ)を感じる、それも……極上だ、質が違う」


「てことは、やっぱりここで金曜会とクレディワイズが?」

「それは知らねぇが、この魔素を辿ってみる価値はありそうだ」

 スナイダーはニヤリと笑って登山道から外れ、茂みの中へ入っていく。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよぉ~!」


 *


「こういうことって言われても……」

『やれやれ、君ってやつは本当に手の掛かる実験体だ……』


 ブネは俺の前に降り、大きくため息をついた。


『私は(フィールド)に『粉砕(クラッシュ)』という波を立てた、魔素を介してね。んー、まあ君には……理解できないか』


 そう言うと、ブネが俺の影を見て、

『ふむ……ほほぉ、なるほど、ここにポータルを通したか』と呟く。

「え? ちょ、詳しく!」


『これは、君のポータルのレベルが上がったお蔭だな。ちゃんと獄界に繋がっている、これなら……常時接続が可能だろう』

「常時接続? いつでも呼べるってこと?」

『ああ、()()()()()()がある場所なら』


 ということは、わざわざポータルを創る手間が省けるのか……。

 これはかなり捗りそうだ。


『それよりも、君はちょっと弱すぎるぞ? 私の実験体としてのプライドはないのか? ん? ほら、顎を上げろ』

 クイッと俺の顎を指で持ち上げる。

「んぐ……⁉」


 ブネが唇を合わせて来た。

 幾千の星が俺を通り過ぎていく!

 身体に感覚が戻り、ブネとの憑魔が完了した。


「やっぱ、すげぇな……」


 と、その時、他の班のメンバー達が駆け寄ってくる。

 リーダーの男が、笑顔で手を差し出してきた。


「瀬名さん! ありがとうございます! さっきの瀬名さんですよね?」


 俺はその手を取り、軽く握り返す。

「あー、いや……それより藍莉は大丈夫ですか?」


 そう訊ねると、奥から藍莉が顔を見せた。

「瀬名っち……」

「良かった、無事だったか」

「ありがとう、でも……見られちゃったね、へへ」

 今にも泣き出しそうな顔で、力なく笑う藍莉。


「何を気にしてるのか知らないが、格好よかったぞ? 多分、皆もそう思ってるよ」

「そ、それは……」


 すると、周りのメンバー達が口々に藍莉に言った。

「そうですよ! 俺はずっと前から藍莉副長に憧れてました!」

「うんうん、ギャップがいいよな」

「私も好きですよ、触ってみたいし……」


「みんな……ありがとう」


 その時、奥から来た桐谷が声を張った。

「何をしている! 貴様ら、ここが何処かわかってるのか⁉ レベルSの中だぞ!」


「は、はいっ!」

「す、すみません!」

 メンバー達は一斉に姿勢を正した。


「藍莉!」

 ずかずかと歩いてきた桐谷が、藍莉の髪を鷲づかみにした。

「お前は自分の立場をわかっているのか! デミリッチ如きに手間取りやがって……! 出し惜しみなんてしてるからだ!」


「――離してやれ」

 俺は桐谷の腕を掴んだ。


「おい、瀬名ぁ……貴様何のつもりだ?」

「あ? DVは見てらんねぇっつてんだよ」


 一触即発の空気に、リーダーの男が割って入る。

「な、仲間割れは最悪のパターンです! 桐谷部長! ここを出てから思う存分やりましょう! 瀬名さんも、どうかここは引いてください!」


「瀬名っち、ボクも大丈夫だから、ね? お願い……」

 藍莉は精一杯の笑顔を作って俺に訴えた。


「……わかったよ、その代わり次は無いぞ」

「フンッ……」

 桐谷は藍莉の髪から手を離し、皆に向かって言った。

「よし! さっさと奥へ進むぞ!」


 通路に戻ると、石丸さんと小鳥遊が心配そうに近寄ってきた。 

「大丈夫でしたか⁉」

「おいおい、ダンジョン内で揉め事はよくねぇぜ?」


「悪い、心配掛けた。でも、もう大丈夫だよ」

「そっか、ならいいんだ」

 石丸さんが俺の肩に優しく手を置いた。


 しばらく通路を進むと、大きな扉の前に着く。

 入口の扉と違って、凄く違和感を感じた。


 こんなダンジョンの中だと言うのに……()()なのだ。

 扉は黒曜石のように黒光りしていて、細かな模様が彫られている。

 これがゲームなら、間違いなくイベントが起きる場所だろう。


「おいおい、如何にもな感じだな……」

「ああ、やべぇ臭いがぷんぷんするぜ」

 扉から目を離さず、石丸さんが鼻の下を指で擦った。


 桐谷が扉の前で立ち止まり、皆に向かって発破を掛ける。

「準備はいいか! 全ての可能性を考えろ! 中の状況を即時判断して対応しろ! 自分の頭で最適解を出せ! 指示を待ってると死ぬぞ!」


 全員が息を呑み武器を構えた。

 それを見た桐谷が頷き、扉前のメンバー達に手を向けて合図する。


「よし! 行くぞ! いち、に~の、さん!!」

 石丸さんを含む回収班と後衛達が、盾役に守られながら扉を押し開けた。

読んでくださってありがとうございます!

良ければ下の★から……


★☆☆☆☆ つまらん


★★☆☆☆ まあまあ


★★★☆☆ 普通


★★★★☆ 面白い


★★★★★ 続き早く!


みたいな感じで、お気軽にポチっていただけると嬉しいです。

(星の数は後からでも変更ができます)


既に星をいただいている方には、心から感謝を申し上げます!

引き続き、面白い作品を発表できるように励みたいと思います!


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[良い点] 前門の何か、後門のスナイダー
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