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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
二章

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オルキデ再び

「ウォオオオオ――――――――ッ!!! 憑魔完了ォォッ!!」

 そのままの勢いでスケルトンの大群に突っ込んだ。

 

 壺を叩き割るように頭蓋骨を粉砕しながら状況を確認する。

 爆発した壁の向こうに、まだ数え切れないほどのスケルトンがひしめいていた。

 なんて数だ……ちまちまやってる場合じゃねぇな。

 見るとモリーナも近くで戦っていた。


「モリーナ、あの穴に向かって魔法を撃ってくれ!」

「OK、とっておきのをブチ込んでやるわ!」


 モリーナは杖を構え、カッと目を見開く。

 瞬間、足元に巨大な魔方陣が幾重にも形成された。


『さぁ、灰に帰りなさい……――炎竜王の息吹(ドラグ・フレア)!』

 

 迸る巨大な炎球が放たれた!


 スケルトン達をなぎ倒し、蒸発させながら突き進む。

 次の瞬間、奥の部屋から爆発音が轟く――。


 ――ドォゴォオオオン!!


 爆風が吹いた後、パラパラと小石が降り注ぐ。

「うひょぉ……すげぇな」

『ほぉ、中々やるようだの……』

 突然、頭の中にアスモデウスの声が聞こえた。


「え⁉ あ、アスモデウス? どこだ?」

『主の影の中にいる、これなら邪魔になるまい』

「そ、そんなことができるのか……」

『これくらい当然……主が強くなればもっと我の力を引き出せるぞ?』


「……それは気になるが、今はこいつらを片付ける!」


 俺は、モリーナが魔法で開けた穴に突入した。

 後ろから他の班の近接ディーラー達も付いてくる。


「な、何だこれは⁉」


 広い……! これは、とてつもなく巨大な闘技場(コロシアム)だ!

 観客席に並ぶ無数のスケルトンが自身の骨を打ち鳴らし、辺りはザザザザザと大雨のような音が鳴り響いていた。


 その観客席の中央の特設席に、王冠を被り豪奢な法衣を纏ったスケルトンが座っている。身体全体を禍々しい黒いオーラが包み、まさに死の王とでも言わんばかりの威厳を放っていた。


「あいつが元凶か……」

「あれはエルダーリッチ⁉ おい、急げ! 魔法防壁だ!」

 他の班のリーダーが大声で指示を飛ばしていた。


「あぶれたスケルトンは任せろ!」

 流石に精鋭揃いなだけあって、ただのスケルトン相手では誰も遅れを取らない。

 近接ディーラーも魔法剣士(マジックナイト)や、破鎚士(クラッシャー)など強力なクラスが揃っている。


「あれは……」

 その中には藍莉の姿もあった。

 桐谷が藍莉もS級だと言っていたな……なら、向こうは任せて問題ないだろう。


 よし、皆が応戦している間に、一気にぶちかますぞ!


『――ファナティック・十字砲火!』


 叫ぶと同時に、バツーンッと落雷が落ちた!

 もくもくと立ち込める土煙の中から、あの高笑いが聞こえてくる。


『ふはははははーッ! 我が愛、我が(みさお)、全てはアンドロマリウス様に捧ぐ! ラヴ・イズ・ファンタスティック! 故にファナティック……! 我こそは獄界の最終兵器、オルキデ・リエン男爵だーーーーっはっは!』


 ピンクのショートボブを揺らし、軍服ワンピースを着たオルキデが現界した!

 手に持った軍帽を被るとマントを翻し、猫のような瞳でキッと俺を睨んだ。


『ん……? おい、カス。貴様ぁ、いつもと匂いが違うな……』

「え?」

 すると、俺の影からアスモデウスが姿を現す。


『うるさいと思えばオルキデか……』

『――⁉』


 オルキデは目をまん丸にして身を屈め、光速で左右を見回す。

 まるで猫が何かを狙っているようだ。


『げ、幻覚かっ⁉ こ、これは……そうか! あそこのエルダーリッチの幻覚だなっ! でなければ、カスの影から大罪の御方が現れるなど……クッ!』

『はぁ……オルキデよ、我は幻覚ではない。本当に貴様は昔から変わらぬな……』


『おのれぇ~っ……声色まで真似おって! 謀る気かっ! ええい、貴様がアスモデウス様なら……え? 何だよ……いま大事な……うん、え……?』

 後ろにいたニャトラーがオルキデに耳打ちする。

 ニャトラーが言い終えると、オルキデは静かに目を閉じた。


「……お、おい、どうした?」


『……』


「オルキデ?」


『……長い』


「は?」


『はは、まったく……、どうやら長い眠りについていたようだ……』


 小さく(かぶり)を振り、すました顔で目を開けると、

『おぉ! これはアスモデウス様……お久しゅうございます……』と片膝を付いた。


「え……嘘だろ? なにその誤魔化し方……」


『黙れカスゥッ! アスモデウス様の前だぞ! 口を慎めこのカスが!』

『我の主をカス呼ばわりとは、オルキデ……貴様血迷うたか?』


 アスモデウスが言うと、オルキデは慌てて軍帽を取り、

『え⁉ あ、主とは⁉ そ、そのような……、こ奴はカスです、カスがこ奴でして……あれ、奴がカスなわけですから、そのぉ~』と訳のわからないことを呟く。


『はぁ……もう良い、我は疲れた……』

 ウンザリしたように額に手を当て、アスモデウスは影に戻ってしまった。


『あ……あっぶね~! マジの大罪じゃん……やっべ~!』

 額の汗を拭うオルキデ。

「いや、アウトだし、聞こえてると思うぞ?」


 キッと恨めしそうに俺を睨む。

『おい、カスよ! とんだ爆弾を仕込んでくれたなぁ……』

 オルキデがシャーッと牙を剥く。

『残り、1分50秒でございます……』

 小さな執事服を着たニャトラーがコホンと咳払いをした。


「それよりオルキデ! 急いでるんだ、あっちのスケルトンをやってくれ!」


 俺が言うと、オルキデは辺りを見回し、

『ふん、一分もあれば片がつく――』と宙高く舞い上がった。


『クソッ! ラヴ・イズ・ファンタスティック! 故にファナティック……! うおぉぉ! このストレス、怒り、全てこの一撃……我が純愛に乗せて!』


 オルキデが右手を高々と突き上げると、空に瞬く星のように、無数の銃が現れる。


『消し飛べ! ――ファナティック・十字砲火!!!』


 無数の光線がスケルトン達を撃ち抜く!

 あれだけいたスケルトン達の姿が観客席から消えた。


「うおぉぉ! 後はエルダーリッチだけだぞ!」

 近接ディーラー達から歓声が上がった。

「よし、この流れに乗るんだ!」

「盾役、前に並べ! 支援術師(エンチャンター)! 魔防を多重で掛け続けろ!」

 メンバー達がエルダーリッチに迫ろうと湧き立つ。


『ククク……このオルキデ様に掛かれば骨っ子の百や二百など――』


 その時、中央の王座に座っていたエルダーリッチが立ち上がり、杖を天に掲げた。


『…………Ανασταίνω!』


 エルダーリッチの眼窩に紫色の炎が揺らめき、杖から禍々しい黒い稲妻が迸る!

 同時に地中から無数のスケルトンが這い出してきた。


『にゅ……?』

 オルキデが変な音を出すと、

『残念ながらお時間でございます』とニャトラーが恭しく礼を取った。


「え……」


 二人の姿が消える。

 後に残されたのは、さらに数を増したスケルトンだった――。

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― 新着の感想 ―
[良い点] このコント他の面子にも見られた? それはともかく、悪魔もエルダーリッチなどの存在は認知してるんですね。 独自ポータルの悪魔は他の存在をどう考えているのやら
[一言] 男爵何しに来たんだ……
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