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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
一章

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討伐終了 後編

 黒蟹の死骸から魔石を回収していた石丸さんが驚きの声を上げる。

「おぉーい! 見てくれよ! こいつ腹に魔石をしこたま貯めてやがったぜ!」

 小躍りしながら、両手に魔石を持って浮かれている。

 俺は石丸さんに手を振って応えた。


 さて、問題はこいつらか――。

 目の前には、後ろ手に拘束された斉藤達が並んで正座している。


「どうしたものかな……」


 森山さんが呟き、困った顔で頭を掻く。

 その様子を俺と小鳥遊、そして、CREDIT(クレディ・) WISE(ワイズ)鵜九森(うくもり)という爺さんが見守っていた。


「僕にも責任があります……本当にすみませんでした」


 小鳥遊が頭を下げる。

 何でも、斉藤達に脅されて、睡眠薬入りのポーションを配ってしまったという。


 その後、隙を見て逃げ出し、自分のクランに助けを求めたというわけだ。

 そして来たのが、この白髪の老人……。

 CREDIT WISEの白賢人こと、鵜九森 幢乱(どうらん)


 かつて、たった一人でレベルAポータルを制圧した、国内最初のS級覚醒者にして、国内唯一の希少クラス『賢者』に覚醒した男……。

 とても信じられないような話だが……、鵜九森を取り巻く膨大な魔素が全てを物語っていた。

 そんな男が何の躊躇いも無く、俺と森山さんに向かって頭を下げた。


「私からも謝罪する、どうか許してくれないだろうか……」


「いやいや、困りますよ鵜九森さん! あの、頭を上げてください!」

「俺は別に気にしてないよ……、悪いのはこいつらだし」


 三人がビクッと肩を震わせた。


「そうだ、良かったらこいつらの処分は俺に任せてくれない?」

 そう言うと、森山さんが心配そうな顔をして俺を見た。

「せ、瀬名くん、その……万が一彼等が死ぬと君が罪に問われる可能性が……」

「ああ、それならウチで良い薬を用意しよう。跡形も無く溶かしてしまえば、行方不明で通せる。五分も掛からない」


 鵜九森の爺さんがさらっと怖いことを言う。

 斉藤達は、顔を真っ青にして震え上がった。


「まあ、流石に殺すのは問題があるでしょうし、それよりも心を折って、二度とこんなことする気が起こらないようにしますよ。あ、小鳥遊くん手伝ってくれるかな?」

「え⁉ ぼ、僕でしょうか?」

 少女のような顔で小鳥遊が目を丸くした。

「うん、大丈夫、俺が合図したら、横で治癒掛けてくれるだけでいい」

「わ、わかりました……」

「じゃあ、まずお前からだよな?」


 俺は斉藤の前に立ち、顔面を蹴り上げた。


「グフッ⁉」


 斉藤は顔を押さえて地面を転がっている。


「痛いよな?」


 次に右の太ももに足を乗せ、そのまま踏み抜いた。

 ボグッ! という鈍い音が響く。


「ぐああぁっ⁉」


 続いて左足、両手も同じように踏み砕いた。


「あがぁああーーーーっ!!!」


「はい、治癒して」

「は、はい!」


『――治癒(ヒール)!』


 へぇ、やっぱりこの子は有望なんだな。

 一瞬で斉藤の怪我が治ってしまった。

 あんなヤバい爺さんが、直々に救助に来るほど期待してるってことかな?


「よーし、もう一回」


 斉藤の顔が恐怖に歪んだ。


「ひ……た、助けて……た、助けてください……」

「へぇ、お前、敬語使えたんだな? もうちょっと早く使ってればねぇ……残念」

「な、何でもする! 何でもしますから!」


 縋り付く斉藤の肩に足を掛け、一気に踏み抜く。


「うぎゃあああ!!! く、くそぉ! くそがぁあああーーー!!! ぶっ殺してやるーー!!」


 歪んだ肩を押さえながら、地面をのたうち回った。


「ほら、やっぱ、お前の根っこは腐ってんなー。ちょっと黙ってろ」


 俺は下顎を踏み抜く。

 グシャッという音が響いた。


「ひゅ……かっ……かはっ……」


「小鳥遊、治癒だ」

「は、はい……」


『――治癒(ヒール)!』


 潰れていた下顎が治る。

 肩も正常な位置に戻っていた。


 はぁ~、すげぇなこいつの治癒……。

 リディア以上だ。


 俺はしゃがみ込み、斉藤の目を覗いた。


「お前が折れるまで、何があってもやめねぇからな?」

「ひ……」


 斉藤の目に絶望の色が浮かんだ。


 *


「次は西島……お前だ。何の罪もない森山さんに、あろうことか魔法で火を点けるなんてな……って、もう聞こえてねぇか?」

「ひゃ、ひゃひ! やひゃひゃひゃーーー!!!!」


 完全にぶっ壊れているようだ。

 だが、そんなことは関係ない。


「どうせ地獄に落ちたら焼かれるんだし、先に俺が焼いてやるよ」


 気が触れたように笑い続ける西島に向かって手を翳した。


『――黒炎弾!』


「ひきゃあああーーーーーー!!!!」


 黒炎が噴き上がり、西島を包み込んだ。


「どうだ? 同じ獄界の炎だぞ?」

 見る見るうちに西島の肌が黒ずんでいく。


「小鳥遊、頼む」

「はい!」


『――治癒(ヒール)!』


 緑色の燐光が西島を包み、傷を癒やしていく。


『――黒炎弾!』


「あぎゃああああああーーーーーっ!!!」


『――治癒(ヒール)!』


『――黒炎弾!』


『――治癒(ヒール)!』


 ……。


 *


 立てなくなった二人をおいて、さっきまで隅で震えていた磯崎を見ると、既に気を失っていた。


「参ったな、小鳥遊、治癒で……」

「せ、瀬名くん……もうその辺で許してあげようよ……」


 森山さんが俺の顔色を窺うように言ってきた。

 焦げ跡が残る軽鎧が生々しいが、髪や肌の火傷は綺麗に治っている。


 ちょっとやりすぎたかな……完全に引かれてる。

 相当苛ついていたせいで、ノリノリになってしまった感も……。


「まあ、森山さんが言うなら僕は構いませんよ」

 と答えると、静かに見ていた鵜九森が口を開く。

「これだけやれば、いくら馬鹿でも懲りただろう……お前達、瀬名くんに感謝したまえ、私なら治癒など掛けん」

 この爺さんも、相当ヤバい匂いがするな……。

 森山さんが顔を引き攣らせながら、

「で、では、この件はこれで終わりにしましょう。皆さん、本当にありがとうございました」と、丁寧に頭を下げた。


「後処理は私の方でやりますので、皆さんは先に上がっていただいて結構です」

「そっか、じゃあお言葉に甘えて帰るかな。お二人もお疲れさまでした」

 俺は小鳥遊と鵜九森に軽く頭を下げる。


「瀬名くん、借りができたな……また今度ゆっくり話でもしよう」


 まるで感情が読めない鵜九森の瞳に、一瞬ゾクっと冷たいものを感じた。

 ……憑魔した俺が寒気を?

 クックック……面白れぇ、とんでもない爺さんだ。


「ええ、また機会があれば」

「あ、あの……ほ、本当にご迷惑をお掛けしました! 脅されたとはいえ、取り返しの付かないことを……本当にすみませんでした!」

 小鳥遊が肩を震わせながら、深く頭を下げる。


「いいって、じゃ、またな」


 その場を離れ、俺は魔石を山ほど背負ってホクホク顔の石丸さんに声を掛ける。


「石丸さーん! 一緒に出ませんか?」

「お、おぉ! 見てたぞ、瀬名くん強いんだなぁ……いやぁ、驚いたぜS級だなんてよぉ……」

「あはは……まあ、隠してたわけじゃないんですけどね」

「それより、見てくれよこの魔石! どうだ、すんげぇだろ? 俺が一番回収したからな、取り分もデカいはずさ。今月は肩身が狭かったからな~、あいつにギャフンと言わせてやるぜ……あ、あいつってのは、さっき言ってたクランの奴で……」


 よく喋るなぁ……思わずクスッと笑ってしまう。

 石丸さんは、出会ったときと変わらない。


 それが、何とも心地よかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 石丸さん現金で好きだわw
[良い点] あけましておめでとうございます。 他のSの方々がもうほっておいてくれないんでしょうね。 何人ぐらいと友好になれるんだか
[一言] 一番回収したって倒したのお前じゃ無いだろ(笑)
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