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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
一章

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53/91

突発型池袋ポータル第324号

 討伐の前日に、高上さんからのメッセージが届いた。


 ――――――――――――――――――――――

 瀬名さん、お世話になっております。

 リディアから話を聞きました、ありがとうございます!

 以下、クランからのポータル情報になります。

 

  ■突発型池袋ポータル第324号

  ■発生場所:池袋駅東口前

  ■難易度レベルC

  ■討伐権利クラン『久我山精肉』

  ■参加予定20名、内5名補助職枠


 集合時間は午前11:00です。

 手続きは済ませてあります、キャンセルの際はご連絡ください。

 それでは、何卒よろしくお願いいたします。

 ――――――――――――――――――――――


 魔素(マナ)ルームでの基礎トレーニングもやったし、プロテインも飲んだ。

 体調も完璧、今日は早めに寝て明日に備える!


「よし、明日は思いっきり暴れてやるぞ……」


 *


 人のいない池袋は初めてだった。

 東口から半径二キロに渡って、非常線が張られているらしい。


 池袋東口を出て直ぐの場所。

 ペンギンが目印の大型量販店の前に突如出現したポータル。

 周辺の避難、討伐権利を決める入札が完了し、後は中のボスを倒すだけだ。


 お、あれだな……。

 討伐メンバーが集まっているのが見えた。


「おーい、参加の人?」

「あ、はい、そうです!」


 スポーツマンっぽい爽やかな好青年に声を掛けられた。


「じゃあ、こっちに来て、名前教えてくれる?」

「はい、瀬名透人です」


 俺が名前を告げると、周りにいた覚醒者がざわついた。

 何だ? チラチラ見てくるし……。


『おい、あれ再検査の』

『ハッ、んなもん嘘に決まってるだろ』

『まだガキじゃねぇか』


 明らかに俺に対して言ってるな……。

 柄の悪そうな覚醒者達が遠巻きに俺を睨んでくる。


「今日は中小のクランが入り交じってるからね……中に入ったら、久我山のメンバーから離れないように。あと、あの辺の連中は気が荒いから気を付けるんだよ」

「そうなんですね……」


 青年が俺を気遣うように小声で教えてくれた。

 親切な人だ。この人がリーダーかな?


「じゃあ、あと10分くらいあるから、時間になったらまたここに集合してね。それまではリラックスしてていいよ。飲み物は簡易テントの方に用意してるから、自由に。その感じだと、君はまだ討伐慣れてないでしょ? こういう時間にウチのメンバーとでも情報交換しておくと良いと思うよ」

「はい、ありがとうございます」


 すげー良い人だな……。

 今回の仕切りの久我山精肉の人か。

 確か、優良ランキングでも上位のクランだし、やっぱちゃんとしてるんだな。


 俺は飲み物が置かれた簡易テントに向かった。

 テントには『あなたにミート 久我山精肉』と書かれている。


「おはようございます、何になさいますか?」


 愛想の良いお姉さんが営業スマイルで迎えてくれた。

 なるほど、流石食品大手だな……。

 自前のカフェチェーンを自分達の仕切りのポータルに用意してるのか。


「じゃあ……ホットコーヒーをお願いします」

「はい、かしこまりました」


 お姉さんが手際よくコーヒーを淹れる。

 ガラスケースには、小さめのパンやケーキも並んでいた。

 へぇ、軽食もあるのか……凄いな。


「お待たせしました、熱いので気を付けてくださいね」

「はい、ありがとうございます」


 テントの脇に置かれた椅子に座り、コーヒーに口を付ける。

 うん……美味い。

 討伐前にこういう気配りがあるのは有り難いな。

 クランが人気なのも頷ける。


「ねぇ、君はどこのクラン?」

「え?」


 顔を上げると、目付きの悪い3人組が俺を囲むように立っていた。


「え、じゃねぇよ。どこのクランだ?」


 アーミーカットで筋骨隆々の男が、俺の隣の椅子にドカッと腰を下ろした。


「ひひ、やめてあげなって……、ほら、怖がってる……ひひ」


 ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながら、フード付きのローブを目深に被った男が言った。

 ローブから覗く目には真っ黒な隈があり、目は血走っている。

 とても普通の状態には見えなかった。


「で、どこのクランかな?」


 この中では、一番まともに見えるが、一番性格が悪そうな男が言う。

 爽やかな笑みの中に、悪意が透けて見えた。

 顔も悪くないし、クラスで中心になるタイプだ。こういうのは相手にしない方がいいな……。


「あ、俺はどこにも入ってませんので……、失礼します」


 スッと離れようとすると、アーミーカットの男に腕を掴まれた。


「誰が行けと言った?」

「……やめてもらえますか?」


 男は手を離さない。

 性格が悪そうな男が言った。


「僕達は『BEAST(ビースト)』去年立ち上げたばかりの新興クランなんだけどね」

「それが何か?」

「はは、君は顔に似合わず肝が据わってるね? 僕らの名前聞いた後もそんな態度を取るなんて凄いよー」


 ニコニコと笑いながら、俺に顔を近づける。

 そして、突然真顔になった。


「調子に乗ってると……潰すよ?」


 男が舌を出す。

 蛇のように舌先が二つに分かれていた。 


「そこ! 時間ですよ、急いで!」


 さっきの久我山の青年が、駆け寄って来た。


「チッ、まだ終わってねぇからな?」


 男達は俺を睨み付け、ポータルの入り口に向かって行った。


「大丈夫だったかい?」

「あ、はい、俺は大丈夫です」

「ったく……彼奴らは質が悪くてね。最近よく名前を聞くんだよ……」

「そうなんですか?」

「ほら、半グレっているだろ? そういう連中が集まってるって話だけどね……、まあ、関わらないのが一番さ。僕らの近くに居れば大丈夫だから。そうだ、名前まだ言ってなかったね。僕はこの討伐のリーダーをする森山だ、よろしく」

「瀬名です。こちらこそ、よろしくお願いします」


 まともな人がリーダーで本当に良かった……。

 俺は森山さんが差し出した手を握り返した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 覚醒で見た目が変わる事例も珍しくないなら、まだ若いとか言い出す方が鈍いというのがよく分かりますねー。 しかし、これからしばらくどこに行っても絡まれそうな。 独り立ちで居を構えてもおそらく7…
[一言] 蛇舌男「よし、お前潰す! というわけでクロさんお願いします!」 とか、また黒田がでてきたりして
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