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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
一章

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51/91

カフェ

 再検査を終え、俺は日南さんと近くのカフェにいる。


 院長曰く、俺は覚醒者としてかなり希少な部類になるそうで、管理局に特別な登録が必要になると言っていた。

 まあ、特に身の自由が制限されるわけでもなく、単に名簿のようなものらしい。

 それに、登録するとポータルに優先的に入れたり、討伐義務が免除されたりするそうだ。


 そんなことより、目の前にいる日南さんの方が重要だ。


「大丈夫? 寒くない?」

「うん、平気平気、いつもこんな感じだもん」


 ニッと笑う日南さんは、白いナース服に薄いピンク色のカーディガンを羽織っている。

 ショートボブの黒髪は、小顔の日南さんに良く似合っていた。


「折角の休憩時間なのに……俺なんかと一緒でいいの? 無理してない?」

「あの……、瀬名くんさ」

 日南さんが紅茶のカップを触りながら、じーっと上目遣いで俺の顔を見つめる。

「ん? 何?」

「私はハッキリ言うタイプだから、先に謝っとくね」

 笑顔で言われるとちょっと怖い……。

「ど、どうしたの?」


「この世に無理して嫌な奴と大事な休憩時間削ってまでお茶する女が存在すると思ってる?」

「お、思いません……」


「だよね? 私は瀬名くんの事が気になるし、もっと知りたいって思ってるから誘ったんだよ?」

「あ……う、うん! ごめん、ありがとう!」

 俺は頭を下げた。


 おいおいおい!

 こんなことが起こっていいのか⁉


 まるで恋愛ドラマじゃん!

 まさか自分の身に……しかも、激カワな女の子からアプローチされるなんて!


「ありがとうじゃなくてさ……」

「はい! 僕も日南さんの事が気になります!」

「ほ、ホントに⁉」

 見る見るうちに、ほっぺがピンク色に染まっていく。


 ――ふと、リディアの事が頭によぎった。

 これって、どうなんだろう?

 俺とリディアはハッキリと付き合っているわけではない。


 恐らく、リディアは俺に好意を持ってくれているし、俺もリディアが好きだ。

 むぅ……だが、目の前の日南さんが気になるのも事実……。


「ねぇ、瀬名くんは好きな映画とかある?」

「そうだなぁ……割と暗い映画が好きかも」

「救いようのないやつ?」

 日南さんがニヤリと笑う。

「うん、そうそう、バッドエンドなら最高かな」

「きゃーっ! すごいすごいっ、私もバッドエンド派なの!」

「本当? うわ、嬉しい。そうだ今度――」


 その時、ポケットの中でスマホが鳴った。


「あ、ごめん、いいよ出て」

 日南さんは特に気にする様子もなく、自分のスマホを触り始めた。

「ご、ゴメン、じゃあちょっと失礼して……」


 画面には『黒田』の文字。

 クソッ! あいつ絶対に許さねぇ……。

 俺は通話をタップした。


「はい、なんだよ、今忙しいんだって」

『悪い悪い、実は耳寄りな話があってな』


「何?」

『レベルBのポータルに参加できるぞ? しかもメリルのメンバーも揃ってるし、またがっぽり稼ごうぜ?』


 確かに、笹塚ポータルの分け前は驚くべき金額だった。

 最低レベルであれだもんな……レベルBなら、もっと稼げるんだろう。


 だが、俺は今、それどころじゃない。

 金では買えない時間を楽しんでいる最中だ。


「断る」

『え⁉ お、おい……どうした? えっと、ほら、ゲームマスターのガキも来るって噂だぜ? アイツには借りがあんだろ?』


 あのクソガキが来るのか……。

 尚更、行く気にならん。


「他を当たってくれ、じゃあな」

『あ⁉ おいっ!』


 俺は通話を切り、電源を落とした。


「おまたせ、ごめんねー」

「ううん、いいの? 何か大変そうだったけど……」


「大丈夫大丈夫、何かポータルがあるよーって、知り合いが教えてくれただけだよ」

「ふぅん、そっか。あ、そろそろ時間だ……。ごめんね、瀬名くん」

 時計を見て、名残惜しそうな顔を見せる。

 むぅ……日南さんとの貴重な時間を黒田のせいで……。


「え、そんな、俺が電話してたから……その、日南さん、また今度……ゆっくり会えないかな?」

「うーん……」

 すんなりOKを貰えると思っていたが、日南さんは唇をもきゅっとさせて目線を外した。


「だ、駄目なら……仕方ないか、あはは……」 

「瀬名くん、正直に言って欲しいんだけど、付き合ってる子いる?」

「え⁉ いや……その……いない、かな」


 リディアとはお互いに確認したわけじゃないし、付き合ってはいないもんな。


「ほんとに?」

 日南さんが片眉を上げ、ぐいっと顔を近づける。


 うわー、めっちゃ肌綺麗だな……。

 それにちょっとクールな切れ長の目にも、思わず見入ってしまう。


「ちゃ、ちゃんと、付き合ってる人はいないよ……」

「その言い方だと、気になっている人はいるのね?」

「ぐ……」


 突然、日南さんがクスッと笑う。


「大丈夫、私は負けるつもりないし」

「え……?」


 ――心臓が跳ねた。


「でもね、駄目だって思ったら、潔く諦めるタイプなの。だから……」


 俺は日南さんの言葉を待ち、生唾を飲む。


「安心しちゃ駄目だよ?」


 やばい……この人、上級者すぎるわ……。

 ウン十年彼女無しDTだった俺には、とても太刀打ちできそうにない。

 完全に掌で転がされる未来を想像しながら、俺は日南さんと別れて家路に着いた。

 家に帰って布団に入っても、小悪魔のような笑顔が頭から離れなかった……。

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[良い点] モテ期! もてあそばれる期!
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