フレンドリスト
「初めは毎日ステータス可視化を行って、LV3(Max)まで上げる事を目標にしてみてください。習慣化すると良いですよ」
「何か変わるんですか?」
「ええ、LV3で自己ステータスがフルオープンとなりますから」
「あ、そうなんですね、わかりました」
何だか楽しみになってきた。
自分を育てるって何か変な気持ちだけど、数値や結果が目に見えるのはモチベーションが上がる。
「それと……、瀬名さんの場合、実年齢とギャップが出てますね」
「そうなんです……私は36才だったはずなんですが、なぜか若返ってしまって……」
「なるほど、ええ、最初は驚かれますよねぇ」
身体を俺に向け、頷きながら優しい笑みを見せる。
「心配は要りませんよ。若返りの場合、大抵は2~3才戻るケースが多いのですが、瀬名さんの場合、ちょっと大きく戻ってしまったという事でしょう。色々なケースがありますが……、覚醒には身体の変化を伴うことが多いんです」
「え⁉ そうなんですか!」
「ええ、他にも例をあげますと、そうですね……、これはつい先日、共有されたケースですが、アメリカで覚醒した青年の身長が、175㎝から一気に189㎝になったそうです。あとは、瞳の色だったり、肌の色や顔付きだったり、逆に背が縮んだ方もいますし、本当に様々なケースが報告されています」
「なるほど……あの、僕みたいに若返ってしまった場合、国民IDとかってどうなるんでしょうか……」
「ああ、それでしたら問題ありませんよ。先ほどの検査結果を元に、覚醒管理局が登録証を発行しますし、この先、以前のIDを使うことはありませんので」
じゃあ、完全に十代として生活できるのか……。
まだ実感が何もない。
ていうか俺が……覚醒者?
もしかして、これから魔物と戦う日々が始まったり⁉
うーん、それは……ちょっと遠慮したいが……。
ふいに浮かぶ200万という言葉。
そうだよなぁ……石井さんの話が本当なら、怖いけどやる価値があるかも知れない。
「では……そうですね、三日ほど入院して経過を見ましょう……まあ、入院と言っても経過観察ですから、普段通りの食事で結構ですし、当院の設備はその辺のレジャーホテルより充実していますからね、ゆっくりと身体を休めてください。その後、覚醒管理局の者が登録にあたってのヒアリングにお伺いしますので、その際はご協力をお願いします」
「わかりました」
「では、以上ですが……、何かご質問はありますか?」
「いえ、大丈夫です」
「では、病室にご案内しましょう」
そう言って鹿島院長は、看護師にアイコンタクトを送った。
お、さっき案内してくれた日南さんだ。
やっぱり可愛いなぁ……。
「では、こちらにどうぞ――」
*
瀬名が診察室を出ると、鹿島はぐったりと力が抜けたように天井を見上げた。
「何てことだ……」
ポータル事案専門の病院長である鹿島も、覚醒者の一人だった。
彼は異能区分/Cにカテゴライズされる『錬金術師』であり、対象の持病から異能区分、スキル、相手によってはステータスの細部までを見通す『鑑定』を持っている。
そして、この病院は、覚醒者治療を主目的として設立された病院だが、もう一つ、特別な役割があった。
それは、要監視対象スキル保有者リスト(通称:フレンドリスト)に載せるスキル保有者の発見、及び報告だ。
この覚醒管理局が独自管理する、国内外のS級スキル保有者のデータベースは、最重要国家機密であり、国の存続を左右すると言っても過言では無い。
これまで、鹿島が秘密裏に鑑定してきた覚醒者は数百名にも上る。
だが、その鹿島でさえ、瀬名のようなケースを見るのは初めてだった。
表向きは何の変哲も無い召喚師……、ステータスも最低レベル。
初期スキルに至っては、たったの二種類しか持っていない……。
だが問題は、その中のひとつ――。
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〈ソロモンズ・ポータル〉
自身で創り出したポータルから悪魔召喚が可能
――――――――――――――――――――
普通、召喚師は一体の魔物を呼び出し使役する。
その魔物は弱く、魔石集めや補助くらいにしか使えず、戦闘における召喚師の貢献度は低い。覚醒者達の間でも不遇クラスとして認知されている程だ。
鹿島自身も、何度か討伐に参加したことがある。
そこで目にした召喚師の待遇は、お世辞にも良いとは言えなかった。
だが、これは……何だ?
「悪魔を召喚できる能力……しかも、ポータルを創り出すだと? ハッ、何の冗談だ……」
悪魔がどれほどの力を持つのかがわからないが……、もし、ポータルから出現する魔物に匹敵する力を持っているとすれば、これは紛れもないS級――しかも、その中でも非常に稀有な固有スキル……。
今はまだ、彼は最低レベルの召喚師に過ぎないが……。
いや、もしかすると、自分の鑑定では開示できない領域があるかも知れない。
モニターを見つめていた鹿島は、思い立ったようにスマホを手に取った。
「ポータルケアセンターの鹿島です、監視課の斑鳩課長をお願いできますか――」
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