病院
連れて行かれた建物は、ポータル事案の患者を専門とする病院だった。
俺のようにポータルの出現に巻き込まれた人や、覚醒者の負傷者のみを受け付けているらしい。
ワゴンから降りた俺は、覚醒していたため、皆とは別の検査を受けることになった。
看護師の若い女の子が、俺にタブレットを差し出す。
名札には日南と書かれていた。
「あのー、こちらにご記入いただけますか?」
「あ、はい」
可愛い子だなぁ……。
黒髪のボブショートで、くるんとした睫毛。大きな瞳は猫みたいに綺麗なアーモンド型をしている。
思わず見とれていると、日南さんは恥ずかしそうに目を逸らした。
え⁉ いま、照れたような感じに見えたけど……。もしかして、いまの俺がイケメンだから……?
いやいや、ちょっとまて俺――。
それは流石に、自意識過剰かも知れない。
でも……、ちょっと試してみるか?
んー、以前の俺が笑顔を向けたなら、恐らく『何このおっさん?』みたいなリアクションが返ってくるはず……てか、間違いなく返ってくる。
よし……やってみよう。
「すみません、これ、記入終わりました」
タブレットを返しながら笑顔を向けると、日南さんの頬が赤く染まった。
おいおい、マジかよ……、偶然じゃない……。
今……絶対、照れたよな?
マジか……何このぬるゲー。
イケメンって、人生イージーモードじゃないか?
見た目が9割って言うけど、あれ本当だったのか⁉
いかんいかん、落ち着け。
ちょっと顔が赤くなっただけじゃないか……。
もしかすると、何か別の理由で赤面しただけかも知れないし。
俺はゆっくりと深呼吸をした。
そうだ、焦ることはない。
これからいくらでも確かめることができるんだからな。
その後、一時間程度の覚醒検査を終え、ソファに座って待っていると診察室に案内された。
*
「失礼しまーす」
「どうぞ、お掛けになってください」
「あ、はい」
椅子に座ると、医師は「院長の鹿島です」と頭を下げた。
聞き取りやすい声だ。見た感じは、四十代くらいだろうか?
フレームレス眼鏡を掛けていて、髪の毛には所々白髪が混じっている。
とても知的な雰囲気のある先生だった。
「えー、検査の方ですが、数値に異常はありませんでした。こちらは検査結果になります」
縦長のモニターに俺のカルテが表示された。
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簡易測定版 Ver2.01_b
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年齢:18 名前:瀬名 透人
レベル:1
異能区分/E 召喚師
HP:94 MP:63
筋力:8 体力:8
知能:6 抵抗:6
反射:5 精神:6
スキル:ステータス可視化 LV.1
:ソロモンズ・ポータル LV.1
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これが覚醒者のステータスか、本当にゲームみたいだな……。
ふーん、俺は召喚師か、魔物とか呼び出せるのかな?
お、年齢が18才になってる……若っ!
画面に見入っていると、鹿島院長が口を開いた。
「では、さっそくステータスの方から説明させて頂きたいのですが……、瀬名さんはRPGゲームで遊ばれた事はありますか?」
「ええ、何作かやったことがあります」
「それでしたら、感覚的に理解できているかも知れませんが……、この数値は覚醒者用の簡易能力測定器というもので、瀬名さんの能力を解析したものになります。それぞれに意味があるのですが、わかりにくいのはこの〈抵抗〉と〈反射〉それに〈精神〉辺りでしょう」
そう前置きした後、モニターに六角形が表示された。
「一番上の頂点から時計回りに、筋力、抵抗、精神、体力、反射、知力となっています。この対角線上の関係にある項目同士は、互いを高め合う性質をもっていまして……、例えば、筋力が成長すると、それに伴い体力も上がると言った具合ですね」
「なるほど……」
「瀬名さんの場合、『ステータス可視化 LV.1』のスキルをお持ちですので、ご自身のステータスを確認する際は、そちらを参考にしていただくと良いでしょう」
「その、ステータス可視化っていうのは、他人のも見られるんでしょうか?」
「いえ、他人のステータスを見るとなると『鑑定』というスキルが必要になります。これは錬金術師のスキルですね。あとは回復術師の『霊視』、気功師や剣聖などの高位前衛職が持つ『心眼』というスキルでも、似たような情報を得る事ができます。それと……私はお目に掛かったことはないのですが、商人の『目利き』というスキルもあるそうです」
「むぅ……色々あるんですね」
でも、自分のステータスを確認できるのはツイてたな……。
これがあるのと無いのでは全然違う気がする。