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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
一章

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39/91

高架下

 アスモデウスの身体が激しく痙攣し、体内から黒く輝く槍が姿を見せた!


『んはぁっ! あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーっ♥あ゛っ♥ら、らめぇーーーっっ!!』

 ルクスリアを抜き終わると、アスモデウスはスゥッと消えてしまった。


「な、何だよあいつら……変な声出して……」

 ゲームマスターと言えども、少年はまだ幼い。

 なぜ自分がドキドキしているのか理解はできていなかったが、本能的にそれが恥ずかしいことだと認識していた。


「さて、覚悟はいいか?」

 俺は淫魔槍ルクスリアを一振りし、オーク・エンペラーに矛先を向けた。


『ブシュルルル…………ブグァーーーッ!』


 オーク・エンペラーが動き、踏み込んだ地面が割れた。

 次の瞬間、凄まじいスピードで放たれた右フックが繰り出される!


 まるで目の前に列車が迫るような迫力――。

 圧倒的な存在感を持った右フックは、一切の躊躇無く、俺の左側面を襲った。

 

「ふん!」


 俺は垂直にジャンプし、攻撃を躱す。

 だが、すぐにオーク・エンペラーの左手が羽虫を叩き落とすように迫る。


「黒炎弾!」


 立て続けに三発、手の平にお見舞いする。

 燃え広がった獄界の黒炎はオーク・エンペラーの手を焼いた。


『ブヒィッ⁉』

 驚いたような鳴き声を発し、咄嗟に手を引く。

 地肌に直接喰らうと、多少は効くようだな……。

 今度はこっちの番だ、喰らえ豚野郎ッ!


「オラァアアッ!!!」


 ルクスリアを振り抜く!

 黒い軌跡がオーク・エンペラーの右腕を切断した。


 ……軽い、それにこの威力、素晴らしい。

 オーク・エンペラーはまだ何が起こったのか気付いてすらいない。


『ブシュル……ブゴォッ⁉』


 大木のような右腕に走った一本の黒い線。

 その線から、ふつ、ふつと黒炎が噴きだし、一気に本体と右腕を完全に分離する。


『グオォォォーーーー!!』


 鈍い音を立て、巨大な肉塊となった右腕が地面に落ちた。


「そ、そんな馬鹿な……」

 ネクロマンサーの少年は両膝を地に付き、呆然とこっちを見ている。


「この槍で切り裂かれたら最後……、灰になるまで獄界の炎に焼かれる」

「う……、うるさい! オーク・エンペラー! そんな奴早くやっつけろ!」

 少年はそう叫び、何かを振り払うように手を払った。


「後でたっぷり叱ってやるから、そこで待ってろ」

 少年にルクスリアを向けて言った後、オーク・エンペラーに向き直った。


『グモァアアア!!!』

 オーク・エンペラーが怒声を発し、襲い掛かってくる!


「焼かれろ……獄界の炎にな!」

 俺は空高く飛び上がった。

「これで終わりだぁあああーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!」

 渾身の力を込めた俺の全力!

 黒い落雷の如く、淫魔槍ルクスリアで一気にオークの脳天を貫いた!


『ブゴォッ⁉』

 一瞬、くぐもった声を漏らしただけで、オーク・エンペラーはその場で硬直する。


「ど、どうした……オーク・エンペラー! 何してる! やれ! やれよ!」

 少年が悲痛な声で叫ぶ。

 だが、オーク・エンペラーは反応しない。


「言っただろ? 終わりだってな……」


 次の瞬間、オークエンペラーの身体から黒炎が噴きだした!

 耳、目、鼻、口、穴という穴から噴きだす黒い炎の舌は、瞬く間に全身を包み込み、オーク・エンペラーを焼き尽くす。


「ああっ!! ぼ、僕のオーク・エンペラーが⁉」

 四つん這いになり、消し炭となったオーク・エンペラーを見つめる少年。


「お遊びは終わりだ。説明してもらおうか?」

 襟首を掴み、少年を持ち上げその目を覗く。


「ひっ……こ、怖くなんかないぞ! スキルさえ使えればお前なんてワンターンキルできるんだからな!」

「ったく、大人しく負けを認めろよ」


 そこに黒田達が集まってきた。

「おーい、瀬名! ははは! やっちまったな! あのオークエンペラーを一撃かよ!」

「ユキトー! すっごく、格好よかったよ!」

「全く、セナくんには驚かされてばかりですね」


「ありがとう、皆。待たせたて悪かった、それよりこいつどうする? とりあえず、襲われた理由くらいは聞きたいんだけどさ」

 襟首を掴まれたまま、じたばたする少年に黒田が問いかけた。

「君はGUILTY(ギルティ・) ROCK(ロック・) BROTHERs(ブラザーズ)のゲームマスターだよな?」

「ふん、だったら何だよ?」

 少年は強がっているのか、ふてぶてしく答えた。


「俺は今回の討伐責任者の黒田だ。今回の件……、上は知ってるんだろうな?」

「……」

「少なくとも俺とポールはMERRILL(メリル・) TRIAD(トライアド)のメンバー、その俺達に矛を向けたんだ、どう落とし前を付ける?」

「メリルをどうこうしようなんて思ってないよ。ウチがそういうの興味ないって知ってるよね?」

「まあ、確かにな……」

 黒田はふんと鼻を鳴らし、どうしたもんかと頭を掻く。


「ねぇ、ユキト……降ろしてあげない? 苦しそうだわ」

「まあ、リディアが言うなら……」


 俺は少年を離してやった。

 ゲームマスターは首を撫でながら、

「虐待だ! クソッ! 訴えてやるぞ!」と悪態を吐く。

「ちょ、大丈夫だった? 今、治癒(ヒール)掛けてあげるから」

 リディアはしゃがんで少年に目線を合わせ、治癒を掛けた。

 少年が緑色の燐光に包まれる。


「あ、ありがとう……」


 プイッとそっぽを向きながら礼を言う少年。

 こいつ、超わかりやすい性格してるな……。


「ねぇ、なんで私達を襲ったのかな? 誰かに頼まれたの?」

 リディアが優しく訊ねると、少年はモジモジしながら答える。


「し、師匠に……ていうか、タトゥー! お前のせいだ! お前が変なスキルを使うからこんなことになるんだよ!」

 少年はそう言い捨てて逃げ出した。


「あ、ちょっと!」

「大丈夫、逃げられやしないさ」

 と、俺が追いかけようとした、その時。


「バーカバーカ! 次は許さないからな!」

 少年は懐から青い水晶を取り出し、地面に叩き付けた。

 瞬間、少年は青白い光に包まれ、忽然とその姿を消してしまった。


「え? 消えた……?」

「帰還石ですね、あんな高価なアイテムを使うなんて……」

 呟くポールさんに、俺は訊ねた。

「アイテムですか?」

「ええ、高レベルポータルの討伐では、必須のアイテムです。かなり値段は張りますが、命には替えられませんからね」

「ま、とにかくお疲れさまだな、お前のお蔭で命拾いしたぜ」

 黒田が俺の肩を叩く。

 一瞬、派遣時代の記憶が蘇ってイラッとした。

「どういたしまして……」

 俺は黒田の肩をガシッと掴む。

「いて! いてて! 何だよ⁉ ちょ……痛ぇよ!」

「ははは! もう少し鍛えた方が良いぞ?」

「ったく、何なんだよ……」

 肩を摩りながら黒田は、「よし、じゃあ撤収だな」と皆を見た。


 *


「やれやれ……やっと出られたな」

 俺は一足遅れて、ダンジョンから外に出た。


 アンドロマリウスと同じく、アスモデウスまでポータルを通らないと帰れなくなっているせいで時間が掛かってしまった。

 まあ、悪魔とはいえ、あんな美少女に名残惜しそうにされるのは悪くない

 ――アスモデウスとのやりとりを思い出す。


『悪魔城? そうだな、いずれ主を我が居城に招待できるかも知れぬが……、それはまだ、当分おあずけだ』

「そうなのか……わかった」

『早く強くなって、我を主のものに……』

 そう言って、アスモデウスは俺の頬を撫で、ポータルの闇へと消えた……。


「なあ、瀬名」

 黒田の声にハッと我に返る。

「今回は変な邪魔が入ったが……、良い討伐があれば一緒に回らないか?」

「んー……まあ、いいよ」

「本当か⁉ よし、じゃあ連絡先を交換しておいてくれ」

 慌てて黒田がスマホを出す。


 まあ、色々と思うところはあるが良いだろう。

 俺は黒田と連絡先を交換し、隣に居たポールさんとも交換した。


「じゃあ、また討伐の時は連絡する。あ、今日の報酬分配は二日後、口座振り込みだからな」

 そう言い残すと、黒田とポールさんはその場を去った。


「ユキト、お疲れ様」

 髪を触りながら、少し照れくさそうな笑みを向けるリディア。

「ああ、お疲れさま。頑張ってたよね、さすがだよ」


「え、ホントに? やったぁ、嬉しい!」

 無邪気に喜ぶ姿が、たまらなく可愛く見えた。


「初討伐も無事に済んだし、ねぇ、近くに魔素(マナ)ルームあるからシャワー浴びていかない?」

「いいね、流石にベタベタのまま電車はきついよな」

「じゃ、決まりね! 行こっか」

「うん」


 俺とリディアはそのまま近くの魔素(マナ)ルームに向かった。


 * * *


 ――渋谷区、某路線高架下。

 人気の無い高架下の路上に一台のSUVが停まっていた。

 運転席に座っている近藤は、側にあるフェンスで囲まれた空き地を見ている。


 空き地では、スーツ姿の乾が誰かを待っていた。

 しばらくすると、そこにコートを着た中年の外国人が現れる。


「やあ、久しぶりだね……五年ぶりになるかな?」

 と、愛想の良い笑みを浮かべる外国人。

 だが、乾は表情を変えず、「撮れたか?」とだけ訊いた。


「君って奴は……相変わらず無愛想だね、暗殺者(アサシン)時代の癖が抜けないのかな?」

「ポール、今の俺は監視課の乾だ。他の何者でもない」


 突然、高架を電車が走り抜け、けたたましい音が響いた。

 互いに無言で見つめ合う二人。


 電車が通り過ぎると、ポールが小さく鼻で笑った。

「ふふ、まさか、君が監視課とはね」

「お前には関係のない事だ」


 一瞬、ポールの顔から表情が消えた。

 だが、すぐに元の愛想の良い笑みに戻る。


「OK、わかったよ――召喚」


 指を鳴らすと同時に、青白い炎と共に双頭の鳥が現れた。

 右肩にとまった鳥の頭に手を伸ばし、

「グッボーイ、ライト」と優しく撫でた後、もう一方の頭に手を伸ばした。


「……グッボーイ、ダーク」


 ダークと呼ばれた頭は、ポールの手に自分の顔を擦りつけた。


読んでくださってありがとうございます!

如何でしたでしょうか?


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― 新着の感想 ―
[良い点] やはり只者ではなかったポール氏。 黒田くんの上への報告は無駄に終わるのかー
[一言] 普通に殺されそうになったんだからこんな軽い対応しないと思いました。
[一言] ショートスピア的な槍なんかな?
感想一覧
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