封印されし豚皇帝
ポータルからアスモデウスが姿を見せた。
その立ち姿は、何度見ても思わず見とれてしまいそうになる。
悪魔ってのは、どうしてこんなに美しいのか……。
「主よ……我を呼んだか?」
「ア、アスモデウス、訳あって急いでるんだ、力を貸して欲しい!」
慌てて言うと、アスモデウスは悪戯な笑みを浮かべた。
「ほぅ……急いでおるのか、それはそれは……」
そう言って右手を腰に当て、左手の指先で白金の髪を触る。
一向にその場から動く気配はない。
「あ、あの……ホントごめん! 急いでる!」
「それは聞いた、急いでおるのだろう?」
「え、あ、うん……」
「我はいつでも良いぞ?」
ニヤッと笑い、俺を見て唇に長い舌を這わせた。
こ、これは、もしかして自分から来い……と?
俺は生唾を呑み込み、そっと近づく。
いざ、こうして自分から触れようとするとめちゃくちゃ恥ずかしいっ!
ただでさえ、相手は目も眩むような美少女……照れるなというには無理がある。
「い、いきますよぉ……」
そっとアスモデウスの肩に手を置く。
「あ……」
「⁉」
アスモデウスの吐息に思わずビクッと身体が震えた。
「ふふ……ほら、主……」
「ちょ⁉」
大きな口を開け、舌を突き出すアスモデウス。
い、いくら何でもこれはハ、ハードルが高すぎる!
「さ、さすがにそれは……」
「やれやれ……、仕方のない主じゃ」
アスモデウスはガッと俺の後ろ髪を掴み、顔を上に向ける。
「え……」
そして、有無を言わさず、俺の口に舌をねじ込んだ。
強烈な快感が、電流のように脳内を突き抜ける!
「うほぉおおおおーーーーーーっ!!!!」
――憑魔、完了。
レベルが上がったせいか、今回のは何か凄かったな……。
俺はステータスを確認する。
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年齢:18 名前:瀬名 透人
レベル:32
異能区分/E 召喚師/憑魔術師
HP:94(+2934)
MP:776(+7213)
筋力:8(+478)
体力:8(+312)
知能:32(+411)
抵抗:6(+356)
反射:5(+321)
精神:146(+441)
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憑魔:アスモデウス
・影人形(500MP/一体)
下級悪魔を召喚する
・色欲のベール(1500MP/回)
対象に〈発情〉の効果付与、全ステータス35%↓
・黒炎弾(100MP/回)
対象に獄界の炎を飛ばす
・大罪の淫魔槍 ルクスリア(2000MP/召喚)New!!
七つの大罪のうち「色欲」を司るアスモデウスの固有武器を召喚
・■■■
現LVでの使用不可
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〈パッシブスキル〉
・使役魔の手綱 LV.3→5
LVが上がる程、高位の悪魔を憑依させることができ、悪魔の能力を引き出すことができる
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〈スキル〉
・ステータス可視化 LV.3(Max)
自身のステータスをフルオープンにできる
・ソロモンズ・ポータル LV.2→3
自身で創り出したポータルから悪魔召喚が可能
一度に召喚できる個体数及び種別は術者の力量により変化する
・召喚 LV.1→3
自身のLVに応じて魔獣を召喚できる
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アスモデウスにも新たなスキルが発現していた。
「大罪の淫魔槍か……」
てっきり悪魔城かと思ったが、違うんだな。
今までは素手だったから、武器があるのはありがたい。
レベルは20から32まで上がり、配分可能だった60ポイントは全て精神にぶちこんだ。
そのお蔭か、使役魔の手綱はレベル5に。
ソロモンズポータルはレベル3へ、召喚もレベル3に上がった。
アスモデウスのステータスも上がっているな……。
ただ、ひとつ気がかりなのは、あれだけオークを倒したわりには、レベルが上がっていない気がするのだ。
もしかして屍兵って、いくら倒してもレベルに影響しないんじゃ……。
とにかく、今はこの場を切り抜けることが先決。
さっさと蹴散らしてやりますか!
*
大半のオークを喰らったハイオークは次の段階を迎えていた。
身体は極限まで膨張し、血走った眼は鈍い輝きを放っている。
『ブシュルルルル……』
ネクロマンサーの少年が召喚した、謎の王座に向かうハイオーク。
そこにいる赤黒い鎖に拘束された巨大な何か――。
ハイオークはそれを捕食するつもりだった。
「お、おい……あいつ何処行くんだ?」
「大丈夫かしら……」
「しかし……私達には止めようがありません」
ハイオークが鎖に手を伸ばした。
『グガッ⁉』
手が焼け焦げ、煙が立ち上る。
だが、ハイオークはそのまま鎖に手を掛けると、力任せに引きちぎった。
『ブモォオオオーーーーーッ!!』
――封印が解ける。
膨張したハイオークよりも巨大なオークが、ゴロンと王座から崩れ落ちる。
「あ、あれは! オーク・エンペラーです! オ、オークの最上位種ですよ⁉」
「でも、動かないわね……どうしたのかしら?」
「み、見ろ! 喰らってやがる!」
ハイオークはオーク・エンペラーの屍体を貪り始めた。
みるみるうちに限界と思えた身体がさらに膨れ上がっていく!
「ど、どうしよう! あんなの……無理よ!」
リディアの脚が小刻みに震えている。
「ポ、ポールさん、オーク・エンペラーって、どのくらい強い?」
「……少なくともA級覚醒者数人で対応するレベルです」
「おい……それ、マジ詰みじゃねぇか……」
黒田達は、膨れ上がるハイオークを呆然と見つめていた。




