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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
一章

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35/91

スキル

「き、キッズじゃん⁉」

 驚いたな。何でこんな子供がダンジョンに?

 子供の覚醒者って聞いた事がなかったけど……。


「大人はみんなそう言うね、その子供に勝てない癖にさ……クスクス」


「わかったわかった、いい子だからもう帰りな? 明日も学校あるんだろ?」

 俺が宥めるように言うと、少年が激高した。

「ば……馬鹿にしたな! 僕はそうやって馬鹿にされるのが一番嫌いなんだ! いいよ、お兄ちゃんには特別に僕のコンボを見せてあげる!」


『――Re:Born(リ・ボーン)!』


 少年が俺を指さしながら言うと、背後から数十体のオークが現れた。


「げっ⁉ な、何だよこれ⁉」

「馬鹿! 相手は子供でもネクロマンサーだぞ⁉ 煽んじゃねぇ!」

 黒田が慌てて身構える。


「まだまだ、僕のターンだよ?」


『オーク、ターゲット固定、自動戦闘(オート・モード)で配置――さらに、Re:Born(リ・ボーン)!』


 オーク達の中に、一際大きな個体が現れる。


『ハイオーク三体、オートスキル発動、オークの特性『種の暴食』により全体攻撃力30%上昇――さ~ら~にっ、Re:Born(リ・ボーン)……!』


 ――ゴゴゴゴ……。

 奥の方に大きな王座が現れる。

 そこには、赤黒い鎖でぐるぐる巻きにされた巨大な何かが座っていた。


「はい、トラップカードを場にセットし、ターン終了~、っていうか、これもう『詰み』だからね、クスクス……」


 少年は鼻歌まじりに奥の方へ歩いて行く。


「セナくん、非常にマズいです! この数のオークはとてもじゃないですが……」

「わかった。数を減らせばいいんだな?」

「え……」

「ポールさん、リディアを頼む!」


 俺は身を低くして、オークの集団に突っ込む。

 数を一気に減らすには、雑魚から!


「手加減は無しだぞてめぇらぁーーーっ!」


 先頭のオークの顔面を思い切りぶん殴る。

 殴った感覚は無い。

 ただ、次の瞬間にはオークの頭部が消し飛んでいた。


『ブモォッ⁉』

 狼狽えるオークの腹部にそのまま回し蹴りを入れると、分厚い身体が背中から破裂した。


「オラァ! まとめて掛かってこい!」

『ブ、ブグモォオオーーッ⁉』

 狙いを黒田達に変えたオーク達がリディアに襲い掛かる!


「きゃあっ! ちょっと……こっち来ないでよ! ――治癒(ヒール)!」

『ボヒィィーーッ! ボッ……⁉』


 アンデッドにとって、治癒は浄化魔法と同じ効果をもたらす。

 緑の燐光に包まれたオークの身体から、黒い煙が抜けていった。

 だが、一体を浄化したのも束の間、次から次へとオークの波は激しさを増す。


「ちょっ……このままじゃMPが……。もーっ! ウザいんだけどーーっ!」

「リディアさん! 無理は禁物ですよ、二人でやりましょう!」

 ヘルプに入ったポールさんが短剣でオークに斬り掛かると、上空を旋回していたライトも加勢に加わった。


「あ、ありがとうございます!」

「さあ、もうひと踏ん張りですよ!」

 ポールさんはリディアを元気づける。


「チッ……次から次へと、うぜぇんだよ! これでも喰らいやがれ!」

 キレた黒田がスキルを放った。


『――全体負荷(オール・ヘイト)!』

 場にいるオーク達が青い光に包まれ、動きが緩慢になった。


「瀬名! これで少しの間、こいつらの足が止まる! 頼んだぞ!」


 叫ぶ黒田に手を上げて応え、俺は駆けだした!


「どけどけどけーーーーーーーーーーーーっ!!」


 オーク達を蹴散らしながら、俺はハイオークに狙いを定めた。

 屍兵か何だか知らねぇが、所詮はオーク! 雑魚は雑魚らしく……死んどけや!


「臭ぇんだよ!」

『グモォッ⁉』

 ボディーブローを一発入れると、腹を貫通し、謎の粘液が噴き出す。


 汚ねぇ……、クソッ、あのお子様絶対許さねぇぞ!


 * * *


 奥の王座の横に座り、戦いを眺めていた少年が腕組みをして唸った。


「う~ん……」


 これは予想外……。

 あのお兄ちゃんがここまでやるとは思ってもなかった。

 師匠が気にするだけのことはあるのかも。


 あ~あ、結構、駒が減らされちゃった。

 補充しても良いんだけど、それは卑怯だしなぁ……。


 うん、僕は大人みたいな卑怯な真似はしないぞ。

 追加屍兵はしないと、最初に自分で決めた縛りに従うんだ!


 でも……ここから挽回する手ってあんのかなぁ……。


「……」

 やっぱ、あと一回だけ追加OKってことにしよ。


 悪戯っぽい笑顔を浮かべ、少年は両手を瀬名に向けて翳した。


『――Re:Born(リ・ボーン)!』


 * * *


 あれが最後のハイオークか!


「おらぁああああっ!!!」

 脳天に踵落としを叩き込む!

 ハイオークの頭部が身体に埋まった。


「よし、これで片付い……は?」


 振り返ると、まるで時間が戻ったかのようにオーク達が復活していた。 


「う、嘘だろ……きりがねぇ……」


 あの少年がいる以上、いくらオークを倒してもまた復活する。

 ネクロマンサーってのは厄介だな……。


「あ……!」


 そうだ、こっちもスキル使えば良いんじゃん!

 スキルロックってのがあったな、ちょっと試してみるか。


 俺はオーク達をかき分け、奥の王座に突き進む。

 居た――、あの少年だ。


 ―――――――――――――――――

  レベル:20

  MP:571(+2710)

 ―――――――――――――――――

  ・スキル・ロック(800MP/1回)

   対象のスキルを一定時間封印する。

 ―――――――――――――――――

 

 MPは十分……行くぞ!


 少年は俺を見て、ほんの一瞬、眉間に皺を寄せた。

「ふぅん、僕を直接狙いに来たってわけ? それはあまりにも単純すぎないかな?」

「お前さえ潰せば終わりだ」

「どうやらお兄さんは、本気で僕を怒らせたいみたいだね……いいよ、もうここで発動しちゃおっと!」


『フフフ……トラップカード発動~! オーク・エンペラーをRe:Bor――⁉』

『させるかよ! ――スキル・ロック!』


 俺に浮かび上がったのと同じ紋様が少年を包む。

 紋様は黒い流体になり、二つの角を持つ悪魔のような影になった。 


「な、何これ⁉」


 言葉を発した瞬間、影が少年を抱擁する――。

 直後、少年の頭上に封印刻限(ロックタイム)が表示された。


〈10:48〉


 これがスキルロックか……。

 頭上の時間、すぐに変化しないってことは、残り10時間48分か。


「クックック、お仕置きには十分な時間だな……」


 俺は少年を見て、ニタァっと笑った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大人の階段登る。 果たして瀬名さんは躾と教育が上手いのか
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