表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/91

腐臭

「よし、ここのボスは毎回『ハイオーク』と決まってる、瀬名なら問題ないだろうが、俺とポールさんでフォローに回る、湊は後衛で回復役に徹してくれ」


「わかった」

「うん、回復は任せて」


 俺達は顔を見合わせて頷く。

 正直、黒田がここまでしっかりしてるとは思わなかったな……。

 性格に難ありだとは思うが、少しだけ見る目が変わった。


「じゃあ、行くぞ――」


 俺は先頭を切って奥に進んだ。


 * * *


「ふわぁ……やっと来た……」


 ふーん……あれが噂の新人か、わわっ⁉ すごいタトゥーが入ってる⁉

 あれは絶対悪い奴だ……、うん。


 ただでさえウチは悪そうな人が多いのに、これ以上いらないんだけどなぁ……。

 ったく、何で僕がこんな面倒なことをしなきゃいけないんだか……。


 ブツブツとぼやきながら、物陰からそっと広間の様子を窺う白髪の少年。


「さぁて、お手並み拝見といきますか」


 少年は手を翳し、

『――Re:Born(リ・ボーン)』と呟く。

 すると、広間中央にハイオークが出現した。


「ふふ、僕の駒相手にどれだけ戦えるのかな?」

 少年は笑いを堪えた後、楽しそうにハイオークに指示を出す。


「ハイオーク、ターゲット固定、自動戦闘(オート・モード)で、ターンエンド!」

 そう言って、少年は目を輝かせながら、自らのゲームの盤面である広間を眺めた。


 * * *


 奥の広間に入ると、そこには原始的な集落のようなオーク達の住処があった。


「結構、広いんだな……」

「ほんとね……、篝火が置いてあるわ」

 リディアが言うと、ポールさんが答える。

「ハイオークは群れの長としてコミュニティを形成するんです。オークの特性として、同胞の数が増えるほど上位個体にクラスアップする可能性が高いので、そのせいかも知れませんね」


「それより……ハイオークはどこだ?」

 黒田が辺りを見回している。


「というか、気配がありませんね……普通ならオークも何体かいるはずなんですが……」

 ポールさんが不審げな表情を見せた、その時――。

 突然、広間の中央にハイオークが現れた。


「で、デカい‼ みんな、下がれ!」


 黒田達が慌てて距離を取った。


 白く濁った眼、黒ずんだ肌、強烈な腐敗臭……。

 ハイオークは『ブシュル……ブシュゥ……』と不気味な鼻音をたてている。

 手に持った棍棒には謎の粘液が垂れ、揺れる篝火の灯りが反射していた。


「こいつ……生きてんのか?」


『グォガアアアーーーーー!!』

 緑がかった粘液をまき散らしながら、ハイオークが雄叫びを上げる。


「お、おい! こいつ何かおかしくないか?」

「ボス……あれは死霊術師(ネクロマンサー)が使う『屍兵(ゾルダ)』ですよ……なぜこんな場所に……」

「これは……いやいや、そんなはずは……このポータルには俺達が最初に入ったはず」

 黒田は戸惑いの表情を見せる。

「死霊術師って……そんな希少クラスの覚醒者なら、先回りしててもおかしくないんじゃない?」

 リディアの言葉に、黒田は舌を鳴らす。


「瀬名! 罠だ、何者かが介入している可能性がある! 一旦、戻るぞ!」

「は? ちょ……そんな急に言われても……」


 その瞬間、まるで話を聞いていたかのように、ハイオークが襲い掛かってきた!

『ブモォーッ!』

 雄叫びを上げると、棍棒を躊躇なく振り下ろす!

 上位種だけあって、オークとは比べものにならないスピードとパワーだ。

 俺が避ける度に、地面に小さなクレーターが出来ていく。


『グモオオオ!!』

「あ゛ーーーっ! うっせぇ!」

 俺はハイオークの腹に蹴りを入れた。

 くの字に身体を曲げたまま、ハイオークが広間の壁まで吹っ飛ぶ。

 壁に当たった身体が二つに分かれ、別々の場所へ落ちた。


「うわ……足の裏ベトベトしてる……」


「や、やりやがったハイオークだぞ? ……はは、ははは!」

「ハ、ハイオークを一蹴するとは……」

「きゃーっ! やったやった、ユキトーっ!」


 足を地面に擦りながら、

「どうした、介入って何かあったのか?」と黒田に訊ねる。

「……あのハイオークは死霊術師が使う屍兵だ、自然発生するようなモンじゃない」

 辺りを警戒しながら黒田が早口で言った。


「死霊術師……」

 横からポールさんが説明する。

「国内に三人しか存在しない超希少クラスですよ。確かM.S.Aに一人、GUILTY(ギルティ・) ROCK(ロック・) BROTHERs(ブラザーズ)に一人、そして金曜会に一人……」

「一体、何の目的が……?」

 ポールさんと目を合わせた黒田が口を開く。

「俺の予想だと――」


「ちょっとちょっと、まだ終わってないよー」

 突然聞こえた声に、俺達は口をつぐんだ。


「タトゥーのお兄ちゃん、結構強いんだねー。僕、びっくりしちゃった」


「子供……?」

「どこだ! 出てこい!」


 奥の物陰から、白髪の少年が姿を見せた。

 白シャツにリボンネクタイを締め、短パンからはか細い足が見えている。

 シャツ以外は全部黒尽くめで、育ちの良いお坊ちゃんって感じだ。


 少年を見て、黒田が舌打ちをする。

「クソッ! ネクロマンサーで白髪の子供っていやぁ一人しかいねぇ……GUILTY(ギルティ・) ROCK(ロック・) BROTHERs(ブラザーズ)の『ゲームマスター』だ……」


 黒田が言うと、少年はクスッと笑った。


「お兄ちゃん達、言っとくけど……まだ、僕のターンだからね?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] あーやっぱり覚醒は子供でも起こりうるんですね。 いつ誰に降ってくるかわからないのは夢も希望もあり、そして厄介だ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ