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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
一章

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33/91

ボスの間

「道が狭くなる、ここからは瀬名が先頭を、後ろは俺とポールさん、湊はセンターで補助に集中してくれ」

「わかった」

「ええ、任せて」

 ポールさんは、「うん、良い判断ですね」と頷いた。

 

「よし、行こう」


 進み始めた瞬間、何やら不穏な空気を感じる。

 何だろう、この身体がムズムズする感覚は……。


『グモォオオオオ!!!』


 くぐもった獣の鳴き声が通路に響いた。


「ボス、挟まれてる!」

「チッ、瀬名、オークだ! 前と後ろ両方から来るぞ!」


 黒田が叫ぶと同時に、正面からドスドスと足音を立てながら、全身を筋肉の鎧で包んだような豚頭の化け物が、尖った石を片手に走ってきた。


「うわっ⁉」

 躊躇無く振り下ろされた太い腕を掴む。


 ……ん? あれ? 意外と平気かも……。


『グモォォオ! グルッ……グフッ!』


 オークは半狂乱の形相で、涎を飛ばしながら暴れようともがく。

 うへぇ~、間近で見るとすげぇ迫力だ。


 だが……、俺の方が力は強いみたいだな――。


 握った手に力を込める。

 ギリギリギリ……ミシッ……バキッ!


 お、砕けたか?


『グモォーーーッ⁉』

 オークが必死に振りほどこうとする姿を見て、俺は楽しくて仕方なくなる。

 ククク……、へぇ、化け物でも痛がるんだな。


 おっと、またか。

 やっぱり気を抜くと完全にドSになってしまう……。


 ただ、アスモデウスの時よりは落ち着いている気がする。

 もしかすると、悪魔によって個人差みたいなものがあるのかも知れない。

 どちらにしても憑魔によって、精神的な影響を受けるようだ。


 振り返ると、ポールさんと黒田が迫るオークを凌いでいる。 

 リディアも心配だし、さっさと片付けて加勢するか。


 オークをぶん殴ろうとした時、ふと、アンドロマリウスの言葉を思い出した。


 そういやあのメイド娘、新しい力とか言ってたな……。

 俺は自分のステータスを確認してみた。


 ―――――――――――――――――

  憑魔:アンドロマリウス

  ・千里眼(900MP/一体)

   対象のステータスをフルオープンにする。

  ・スキル・ハック(500MP/1回)

   対象の持つスキルを盗用できるが、効果は半減する。

  ・スキル・ロック(800MP/1回)

   対象のスキルを一定時間封印する。

  ・悪魔城(全MP)New!!

   48時間の間、アンドロマリウスの支配する城へ行くことができる。

  ・■■■

   現LVでの使用不可

 ―――――――――――――――――

 

「な、何だ……悪魔城って⁉」

 

 もしかして、ブネが言っていたのは……この事か⁉

 でも全MP、48時間って……時間制限?


 とてもじゃないが、今調べるのは無理だな……気にはなるが、後回しだ。


 俺はオークの腕を放し、裏拳を入れた。


「おらっ!」

『――ガモォッ⁉』


 俺の倍はある巨体が吹っ飛ぶ。

 オークは独楽のようにきりもみ回転しながら、壁に激突して床に落ちた。


 首が完全にねじれ、顔と胴体が違う方向を向いている。


 よし、まずは一体……。

 テンション上がってきたぞー!


 次に黒田達を襲っていたオークの側面に移動し、回し蹴りを叩き込んだ。


「よっと――」

『――グギュッ!』

 そのまま壁に激突し、蹲るようにして倒れた。


「チッ……死んだのか?」

 何だよ、脆いな……これじゃ遊べねぇな。


 足でオークの死骸を転がす。

 オークはぐったりとして、既に事切れていた。


「はは、ははは! マジかよ⁉ やっぱお前すげーわ……!」

 黒田が目を輝かせる。


「それより、これがオーク?」

「ああ、普通はそこまで警戒する相手ではないんだが、俺達みたいに近接ディーラー不在だと手こずる可能性はあるかな」

「へぇ、そうなの?」


「やっぱ、ユキトすごいじゃん!」

 リディアが横から手の平を向けてくる。

「ありがと」

 俺はその手にタッチした。


「セナくんの力がこれほどとは……これなら、セナくんが居れば問題なさそうですね」

 ポールさんが眉を下げて笑った。


 *


 向かってくるオークと、巨大な蝙蝠を倒しつつ最深部を目指す。

 やっぱ、低レベルポータルのダンジョンだと、出てくる魔物も弱い。

 はっきり言って雑魚だな、雑魚。

 こんなもんいくらでも倒せるぞ……。


 ふと見ると、俺が倒した魔物の死骸から、ライトが二つの嘴で挟み取るようにして、赤黒い石を取り出している。


「あれが魔石……」


 ダンジョンの魔物には、魔石と呼ばれる石が埋め込まれているらしい。

 討伐で得られる報酬の大半は、この魔石を売った金だ。


 高レベルポータルで発生するダンジョンともなると、希少価値の高いアイテムが手に入ることもあるという。


 もし、運良く手に入ることがあれば、それだけで一生遊んで暮らせる額の金が手に入るそうだが、そのようなアイテムは、金では買えない特別な力が宿っていることが殆どなので、売ろうなどと考える奴はいない。


 何本かの分かれ道を進んだ後、暗闇の奥からライトが戻り、ポールさんの腕にとまった。


 ライトから何かを感じ取ったのか、ポールさんは闇に向かって指をまっすぐ伸ばして言った。


「――あの奥にボスがいます」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 悪魔城は悪魔ごとにあるんでしょうかね。 全部訪れると何かいいことがあるのか
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