SMN72
「ピピピピ……」
俺はランニングマシンから降りて、スポーツドリンクを飲んだ。
ソファに座り、少し休憩を取る。
今日は一人だ。
リディアが居ないのはちょっと寂しい気もするが、撮影だと言っていたので仕方が無い。
あれから、毎日欠かさずに基礎トレーニングを積んでいる。
モデルの仕事が無い時は、リディアも率先して協力してくれた。
そのお蔭もあってか、俺のレベルは順調に上がっている。
―――――――――――――――――
年齢:18 名前:瀬名 透人
レベル:16
異能区分/E 召喚師/憑魔術師
HP:87(-) MP:58(-)
筋力:8(-1) 体力:8(-1)
知能:6(-1) 抵抗:6(-1)
反射:5(-1) 精神:6(-1)
〈デバフ全体:-16.2%〉
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〈パッシブスキル〉
・使役魔の手綱 LV.1
LVが上がる程、高位の悪魔を憑依させることができ、悪魔の能力を引き出すことが可能。
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〈スキル〉
・ステータス可視化 LV.3(Max)
自身のステータスをフルオープンにできる。
・ソロモンズ・ポータル LV.1
自身で創り出したポータルから悪魔召喚が可能。一度に召喚できる個体数及び種別は術者の力量により変化する。
―――――――――――――――――
〈デュオ〉
・回復術師:湊 リディア
―――――――――――――――――
配分可能なポイント:80
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リディアのデバフは約15~20%とあったが、俺の場合は16.2%と低い水準に止まっていた。
こうして見ると、俺とリディアの相性は悪くないようだな。
ポイントもかなり貯まってきたし……。
さあ、そろそろお待ちかねのポイントを割り振ろうと思う。
俺の場合、憑魔をしてしまえば、強烈なステータス補正が掛かるからな。
バランス良く配分するよりは、憑魔を活かす方向にした方がいいと思う。
恐らく、〈知能〉と〈精神〉のどちらかに振れば、召喚師の方のスキルも増えるんじゃないかと睨んでいる。
リディアに聞いたところ、〈精神〉はダイレクトにスキルに効く項目だと言っていた。
ならば、話は早い――。
「よーし、行ってみるか……」
俺は80ポイントを全て〈精神〉のカテゴリにぶち込んだ。
「もう変わったのかな? んー、今のところ、悟りが開けるわけでもないし……特に変化は感じられないな」
俺はステータスを確認してみた。
―――――――――――――――――
MP:30 → MP:471(-45)
知能:6 → 22(-2)
精神:6 → 86(-9)
〈デバフ全体:-16.2% → -10.2%〉
―――――――――――――――――
〈パッシブスキル〉
・使役魔の手綱 LV.1 → LV.3
―――――――――――――――――
〈スキル〉
・ソロモンズ・ポータル LV.1 → LV.2
・召喚 LV.1(New‼)
自身のLVに応じて召喚獣を召喚できる。
―――――――――――――――――
「おぉっ!」
一気にスキルレベルも上がった⁉
やはりダイレクトに効いてる!
使役魔の手綱はLV3に、ソロモンズ・ポータルもLV2に上がった。
さらに、MPがかなり増加していたのと、デバフが少し緩和され、知能の項目にも相乗効果が加わっているようだ。
そして、狙い通り、召喚師のメインスキルである『召喚』が発現した!
個人差があるらしいが、リディアの話では小動物的な召喚獣を使役できるようになるらしい。
よし、この先も知能と精神をメインに割り振っていこう。
この際、筋力や反射などは捨てる。
召喚師のクラスで筋力や体力に振ったところで意味は無い。
それに、憑魔さえすれば、俺のステータスは爆発的に増えるのだから、わざわざ上げる必要もないだろう。
肝心の悪魔はどうだろう?
―――――――――――――――――
〈召喚可能悪魔一覧〉
・アスモデウス
・アンドロマリウス(New‼)
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おっ⁉
増えてる……。
普通に考えれば、精神ポイントが上がったからだろうな。
てことは、この調子で精神を強化していけば、もっと呼び出せる悪魔は増えるわけだ。
とりあえず……試してみるか。
ちょっとドキドキするな……。
俺はスキルブースに移り、
「コントロール・演習場」と言って、フィールドを変更した。
よし、やってみるか……。
大きく深呼吸をした後、俺は手のひらを正面に翳した。
「――ソロモンズポータル!」
目の前に黒い空間が現れた。
うーん、何度見ても不思議だ……。
「よし……いくぞ! 来い……、アンドロマリウス!」
空間から真っ白な冷気が漏れ出して来た。
な、何だ⁉ アスモデウスの時とはパターンが違うのか⁉
そう思った瞬間――。
「あわわわわーーーーーーーーーーーっ⁉」
ポータルからやたらと露出の高いゴス風メイド服を着た、黒髪で前髪ぱっつんのメガネっ娘が飛び出してきた!
覆い被さるように俺に飛びつき、そのまま倒れ込む。
「うぎゅーっ⁉」
顔が柔らかいモノに押し潰された。
「あわわーっ⁉ ご、ごめんなさーいっ!!」
俺に胸を押しつけたまま、メガネっ娘が泣き出しそうな顔で謝る。
あ、悪魔ってのは、みんなエロいのか⁉
「ちょ、い、息が……⁉」
「す、すみません! あわー! わたしってば……」
アンドロマリウスは飛び退き、申し訳なさそうに上目遣いで俺を見ている。
んー、一見すると清楚系っていうか、気弱な文系女子って感じだけど……ホントに悪魔なんだろうか?
関わってはいけない地雷オーラがムンムンに漂っている。
ていうか……ニーハイとか悪魔も履くのな……。
「あの、本当に悪魔……なんだよね?」
「あ、はいっ! こう見えて伯爵位もいただいてますし……ちゃんとした悪魔ですっ!」
「は、伯爵……?」
どう見ても、そんな凄い悪魔には見えないけど……。
「オホン! では、失礼して……」
アンドロマリウスは俺に向かって小さく膝を曲げて礼を取った。
「はじめましてマスター、わたしはSMN72(ソロモン・セブンティトゥー)の一人、伯爵位を授かるアンドロマリウスと申します☆」
「ど、どうも……」
笑顔がどうにも可愛くて、見ているこっちまで頬が緩んでしまった。
なんかアイドルみたいだな……。
うーん、こうして見ると、ゴスメイドも中々良い。
やはりメイド服ってのは、本能的に何かをくすぐるんだろうか?
いかんいかん、そんなことよりも憑魔だな、しっかりしないと。
「マスターはどんな味がするんでしょうか……」
「……え?」
「ん? どうかされましたか?」
眼鏡をクイッと直して小首を傾げた。
笑顔が逆に怖い……。
「い、いや……その……」
「大丈夫ですっ! こう見えてリードするのは得意ですからっ!」
そう言って、アンドロマリウスは有無を言わさず、俺に唇を重ねた。
「――⁉」
「ふぃつれいふぃまふ」
吐息混じりに、し、舌が入ってくる……⁉
次の瞬間、アンドロマリウスの姿は消え、俺は憑魔状態になった。
「す、すごい……」
お、恐ろしいまでの力が漲っている!
ていうか、俺はこの先、果たして普通のキスで満足できるのだろうか……。
そっちの方が恐ろしいんだがっ!
憑魔って一々キスしないと駄目なのか⁉
ま、まぁ、俺からするとラッキー以外の何物でもない。
だが、しかし……、さすがに見た目は可愛い女の子とはいえ、中身は悪魔なんだもんな……。
人間よりも悪魔との経験数が多いとか……何か複雑な気分だ。
ま、とりあえず、ステータスを確認しておこう。
―――――――――――――――――
HP:94(+2808) MP:471(+2701)
筋力:8(+303) 体力:8(+503)
知能:22(+495) 抵抗:6(+410)
反射:5(+413) 精神:86(+390)
〈デバフ全体:-5%〉
()内数値、デバフ反映済
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憑魔:アンドロマリウス
・千里眼(900MP/一体)
対象のステータスをフルオープンにする。
・スキル・ハック(500MP/1回)
対象の持つスキルを盗用できるが、効果は半減する。
・スキル・ロック(800MP/1回)
対象のスキルを一定時間封印する。
・■■■
現LVでの使用不可
・■■■
現LVでの使用不可
―――――――――――――――――
なるほどね。
やはり、ステータス補正はエグいな。
ふーん、アンドロマリウスは、間接的な攻撃スキルを得意とするのか。
デバフも軽減されているし、厄介なスキル持ちの相手にはかなり使えそうだ。
現時点での戦い方は……相手のスキルを封印して、ステータスの暴力でねじ伏せる感じかな。
アスモデウスとは違った魅力がありそうだ。
――俺は憑魔を解く。
「ふぅーっ……」
さあ、後はあいつらの鼻をへし折ってやるか……。
ニヤッと笑い、俺はスポーツドリンクを飲み干した。
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