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リディアの能力

 なるほど、相手にデバフが掛かっても、リディアにバフが掛かるのか……。


 このままリディアのレベルが上がって、蘇生(リザレクション)全体治癒(フィールド・ヒール)みたいな高レベルスキルを覚えたら、正直、デバフのデメリットなんて気にならないくらいの恩恵が得られるぞ⁉


 なぜ、こんなスキルを持っているのに、誰もリディアに近づこうとしなかったのか……。

 今まで、ステータス共有までに至る相手がいなかったってことなのか?


「なあ、リディア。俺は皆が言うほど、君のデバフはデメリットに思えないんだが……」

「パッシブスキルのこと?」


「うん、この先を考えれば、リディアは将来、かなり有能な回復術師(ヒーラー)になると思うんだけど」

「ふふ、ありがと。でもね、私は、今の私を受け入れてくれる人を探してたの」


「それなら、黒田は?」

「お断り! あんな四六時中、いやらしい目で見られたくないわ!」と、リディアが顔を歪めた


「ははは、そうなんだ。俺は大丈夫?」

「うん、安心して。まぁ……ユキトなら別にいいけど」


「えっ⁉」

「あはは、何でもない。それにしてもユキトのステータス、これはちょっと異常ね……」

 リディアは急に真剣な表情になった。


「そんなに……凄いのか?」


 ゲームだとこのくらいのステータスは良く見るが……。


「うん、私、何度か上位レベル覚醒者のステータスを見せて貰ったことがあるんだけど、それと比べても全然ユキトの方が上よ」

「え……」


「……下手すると、監視課が付くレベルかも」

「監視課?」


「ええ、一定以上の能力を持った覚醒者には、覚醒管理局から監視が付くの」

「監視⁉ 何で?」


「そりゃあ、そんな力を持った覚醒者が他国に渡ったらどうするの? それにクーデターの可能性もあるし、とにかく、制御が難しいレベルの覚醒者は色々とリスクを内包しているから……国としても当然の処置だと思うわ」

「そうか……」


 となると、あまり目立っても良いことは無さそうだ。

 俺としてはそこそこの覚醒者になって、良い暮らしをして、可愛い子と楽しく遊べれば……。


「ねぇ、デュオ登録したのは私が初めてよね? 間違いない?」

「え、ああ、そうだけど?」


「ユキト次第だけど……このスキルを公にすれば、多分、すぐに大手ギルドから声が掛かると思う。もしくは管理局からスカウトが来るかも」

「できれば、ちょっと遠慮したいな……」

「それって……、あまり目立ちたくないってこと?」

 リディアが上目遣いで訊いてくる。


「あ、うん……できれば、ちょっと贅沢な生活ができて、楽しく暮らせればいいかなぁって」

 魔物なんかより、女の子の方が良いに決まってる!

 何より、俺は青春をやり直したい。


「そうなの⁉」

 突然、リディアの顔がパッと明るくなった。


「じゃ、じゃあ、もし良かったら、その……私と討伐に参加してくれないかな?」

「え、も、もちろん、そのつもりだけど……」


「ほんとに⁉ ありがとうっ!」


 リディアが俺に抱きついてきた。

 瞬間、何とも言えない良い匂いに包まれる。


 おぅふっ! む、胸が当たってる⁉

 30年以上女性の胸なんて縁がなかったのに、覚醒して一ヶ月も経たずに二度も⁉

 本当に覚醒して良かった……。


「あ、ご、ごめんなさい、へへへ……」

 リディアがパッと離れる。


「い、いや、別にハ、ハグだし……あはは」


 そうか、俺が居なくなれば、リディアはまたソロで討伐に参加することになるのか……。

 あの広場での雰囲気を見た限り、討伐ではもっと嫌な目にあってきたんだろうな。

 可哀想に……。


「心配すんなって、これからも俺はリディアと組むよ」

「うん……、ありがとう」


「それより、さっきも言ったけど……、俺はなるべく目立ちたくはないんだ。どうすれば良いと思う?」

「えっと、そうねぇ……、なら、模擬戦では、ギリギリで勝つようにした方が良いわね。一度ダメージを喰らったふりをして、私が何度か治癒(ヒール)を掛けてから倒すとか……」


「それいいな! よし、とりあえず、最初にやられる振りをすればいいか」


 その後、俺とリディアは何度か模擬戦のシミュレーションを行い、魔素(マナ)ルームを後にした。

 残された時間は一週間だが、これならすぐにでも模擬戦ができそうだ。


「ねぇ、一週間あるけど、どうする?」

「え? んー、まぁ、基礎トレーニングはやっておこうと思ってるけど」

「じゃあさ、その……私も一緒にトレーニングしよっかなぁ……なんて」


 少し恥ずかしそうにリディアが言う。

 マ、マジか……。照れてる姿も、めちゃくちゃ可愛いんだが……。


「も、もちろん! 色々教えてくれると助かる……お願いしてもいい?」

「そ、そうね! ユキトは初心者なわけだし、ちゃんと私がコーチしないとね! 任せて!」


 と、その時、目の前から黒田が歩いてきた。

 隣には背が高くてやたら露出の高い女を連れている。


「おやおや、お二人さん。随分と余裕じゃないか?」

「ねー、黒くん誰ぇーこの女?」


 黒田の連れた女が、高圧的な目でリディアを睨んだ。

 おいおい、普通、初対面の相手に言うか?


「知ってるだろ? 湊リディアだよ」

「あー、あのCMの? へぇ、顔違くて全然わかんなかったしー」


 うわー、わかりやすく煽ってくるなぁ……。

 正直、引くわー。


「行こ」

 リディアが俺の手を引く。

 良かった、リディアは相手にしていないようだ。


「おい、僕ちゃ~ん、わかってるよな? 逃げられねぇぞ?」

 黒田がニヤニヤと煽ってくる。


「……」


 何でここまで自信過剰になれるんだろう?

 それに、他人に対して、こんなにも素直に敵意をさらけ出せるなんて……、正直、黒田が羨ましい。


「何? 黒くん、この人達と何かするの?」

「そうだ、お前も見に来いよ? 一週間後にこいつらと模擬戦やるから」

「えー、大丈夫なの?」

「ははは! 大丈夫に決まってんじゃん! こんな雑魚に負けるわけねーし!」

「ちょっと、雑魚とかウケるー!」


 頭大丈夫なのかな?

 すると、リディアが俺の耳元で、「一週間の我慢よ」と囁いた。


 まあ、別に我慢なんてしてないが……。

 一週間後、恥をかくのは黒田――お前だからな!


「じゃあ、用がないのなら……」

 立ち去ろうとすると、黒田が舌打ちをした。


「後で謝っても絶対に許さねぇぞ!」


 俺は立ち止まり、

「……その言葉、絶対に忘れないでくださいね?」と微笑んだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 相手に色欲のヴェールがヒットして可哀想になってくる未来しか見えません。 そして、あのアキトだと気づいて更に挫けるのかな。 模擬戦が楽しみだ。 ところで初心者主人公でも回復系の高レベルスキル…
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