31話 魔王の血族
お久しぶりです。
2限目は基礎戦闘クラスの座学だった。
講師はアイザック・ランパート。
学院の卒院生で元『金』ランクのそこそこ名の通った冒険者だったらしい。
座学は退屈だろうと思っていたが、豊富な経験から得た見識を踏まえた授業は、実に実践的なものだった。
俺以外の生徒にとってはかなり有意義な授業だろうな。
なんせ、1年生の授業で教わりそうなことは大方、師匠と爺ちゃんに教わっている。
だが、授業自体は面白く地獄の日々で学んだことを復習するには丁度良さそうだし、別の視点から学ぶことも大切だろう。
「あの先生元『金』ランクの冒険者ってスゲーよな!な!『金』ランクって言えば冒険者のランクでも上から2番目!最上位の『白金』ランクの冒険者なんて世界に20人もいないことを考えれば、冒険者の中でも事実上のトップランカーだぜ」
授業を終え、次の教室へと移動を始めると堰を切ったように話し始めたのはフェンだ。
この世界の冒険者の階級は色で表されている。
低い順に 『白』、『黄』、『緑』、『青』、『紫』、『黒』、『銅』、『銀』、『金』、そして『白金』。
この10段階で冒険者はランク付けされており、さらに5つの級に分けられる。
『白』から『緑』ランクは初級、『青』と『紫』は下級、『黒』と『銅』は中級、『銀』と『金』が上級、『白金』が超級と呼ばれている。
俺とリオレスはノイアーから中堅冒険者以上という評価を貰っているが、実際の冒険者のランクとは差異があるだろうな。
冒険者に必要な能力は何も戦闘力だけじゃない。
パーティを組んだ際には統率力や協調性、周囲を把握する広い視野なんかが必要だろう。
魔物やダンジョンの知識も言わずもがな。
また、相手にするのは魔物とは限らない、護衛任務では相手を殲滅する能力よりも護衛対象を庇いながら戦うといった器用さも求められる。
確かに、俺とリオレスは戦闘力だけを見れば銀ランク、もしかすれば金ランクに届くかもしれない。
だが、冒険者として活躍するためには圧倒的に経験が足りないことを考えれば、現状では黒ランクかよくても銅ランクが関の山だろう。
「俺は学院を卒業したら冒険者になるぜ!ドラゴも一緒にどうだ?」
冒険者か。
転生して、この世界が異世界だと分かってから考えたこともある。
日本で暮らしていた時は、ラノベやアニメを見て「異世界といえば冒険者!」なんてイメージを持ったりもしていた。
だが、この世界の冒険者は俺のイメージする冒険者ではなく、所謂便利屋、もしくは傭兵みたいなものだ。
ダンジョン攻略なんかをメインとして活動する冒険者もいるにはいるが、数が少ない。
ちなみに俺の母やリツィーはその数少ない冒険者に含まれていた。
まあ、学院を卒業してからの進路についてはいずれ考えなければならなし、今のところ当てもない。
冒険者も候補の1つとして入れておいてもいいだろう。
「まあ、他にやりたいことがなければな」
「そうか!ドラゴなら『白金』ランクの冒険者も夢じゃないぜ!」
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3限目。
基礎戦闘クラス・実技。
「さて、俺がこの基礎戦闘実技を受け持つトーマ・アイスリーだ。よろしく頼もう」
入試の実技試験で使用した演習室と似たような教室に集まったのはプロメーテとメーティスの生徒達。その生徒達の前ではトーマが自己紹介をしている。
「では、早速だが模擬戦でもしてもらうか。えーと、それじゃあ各クラスの序列1位同士でやってもらおうか。君たちの実力がどの程度か一番強い者同士で戦ってもらえば分かるからな」
序列1位。
プロメーテ寮生達の視線が俺に向く。
ですよね。まあ、メーティスの序列1位はリオレスだろうし、模擬戦はちょっと楽しみだな。
「おっ、プロメーテ寮の1年序列1位はドラゴ・グリントか」
寮生の視線を浴びながらトーマの前に移動する。
「そして、メーティス寮はと」
メーティス寮生の集団が割れ、1人の女の子が歩いてくる。
リオレスじゃないのか?
メーティス寮生の中にいたリオレスと目が合うと苦笑しながら首を振っている。
「なるほど、アリスタ・リ・エ・クレアードだな」
「はい」
腰まで伸びた漆黒の髪、整った顔立ち、そして真紅の瞳。
アリスタと呼ばれた少女は「美」そのものを具現化させたかのような容姿に加え、恐ろしいまでに凝縮された魔力を緻密にコントロールする魔法力を持っていた。
これは、とんでもない子供がいたもんだ。
11歳として考えればリオレスも相当おかしいが、この少女はその比じゃない。
もしかして、俺より強いか?
「では、ドラゴくんとアリスタくんで模擬戦を行ってもらおう。まずはこの腕輪をつけてくれ」
そう言ってトーマは俺とアリスタに金属で出来た腕輪を渡してきた。
「それは簡単に言えば安全装置だな。致命傷や大怪我を負うレベルの攻撃を受けると判断されると強力な障壁が発生する。その腕輪が起動した時点で模擬戦は終了だ。また、俺が終了と判断した場合も同様だな。軽傷なら用意してあるポーションでなんとかなるから思う存分力を振るってくれ。俺はお前たち全員の実力を推し量れるし、模擬戦の当人同士はいい経験になる、見学する生徒は目標とするべきレベルが分かる。うん、いいことだらけだな」
俺とアリスタは安全装置である腕輪を装着し、互いに距離を取る。
見学の生徒達も俺とアリスタから離れていく。
「障壁展開」
トーマの声に反応して床に描かれていた魔法陣が光を放ち、俺、アリスタ、トーマの3人を包む障壁が展開された。これで、見学の生徒に流れ弾が飛ぶ心配はなさそうだ。
「貴方、私と同じ色の瞳ね。魔族なの?」
トーマが障壁の作動確認をしている最中にアリスタが話しかけてきた。
「いや、人間だよ」
「そう。なら1つ忠告しておくわ。本気で来なさい。次期魔王である私の力見せてあげるわ」
「次期魔王?今の魔族に王はいないはずだろ?」
現在の魔族は王制ではなく貴族制をとっており、『肆鬼帝」と呼ばれる四家が国を治めている。
「空位になっているだけで魔王の座はあるのよ。あの玉座は正当な後継者を待っているの、この私をね」
「へー。だったらそっちも本気で来なよ。次期魔王が人間に負けると困るだろう?」
「言うわね、なら、遊んであげるわ」
トーマが障壁の確認を終え戻ってきた、おしゃべりはここまでか。
「さて、2人とも準備はいいか?」
「「はい」」
「では、模擬戦、始めっ!!」




