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空位の魔王と反逆勇者の孫  作者: かわうそ
『学院』1年生編
33/36

30話 基礎魔法クラス

明けましておめでとうございます。

更新が滞ってしまい申し訳ありませんでした。

またよろしくお願いします。

ノイアーとの話が終わり、朝食を済ませた俺は転移魔法陣で学院へとやってきた。


「さて、今日の時間割はっと」


時間割は学院の掲示板で確認することができる。

2週間分の時間割が表示されており1週終わる毎に更新される。

ちなみにこの掲示板も魔道具だ。

掲示板の担当者がイメージした図が板上に浮かび上がるので、従来の掲示板の様に紙を貼る必要がない。地球でいう電子掲示板みたいなものだ。


「ドラゴ、おはよう」


「おはよう、ドラゴ君」


掲示板の前で俺に声を掛けてきたのはリオレスとミレイだ。


「おはよう、2人とも」


「ドラゴの時間割はどんなかんじ?」


「えーと」


俺は自分の寮の掲示板を確認する。

掲示板は寮毎に分かれていて、学年毎の時間割と連絡事項が表示されている。


「1限が基礎魔法クラス・座学、2限が基礎戦闘クラス・座学、3限が基礎戦闘クラス・実技、4限と5限が魔道具クラスだな」


「そっか、じゃあ3限は一緒になるかもね」


「そうなのか?」


「僕たちは1限が基礎戦闘クラス・座学で2限が基礎魔法クラスだからね」


「俺って寮の特色は製造や研究だろ?戦闘の授業もあるんだな」


「まぁ、基礎ってなっているクラスはどの寮生でも必修科目なんだろうね」


成程、日本でいうところの主要5教科みたいなもんか。

理系でも現代文とかやるからな。


「そういうことか。ところで、リオレス達は4限と5限はなんの授業なんだ?」


「僕たちは4限が魔法陣のクラスで5限が魔法理論のクラスだね」


どうやら、4限と5限の授業が寮の特性に合わせた授業のようだな。


「分かった、じゃあ3限で会えるのを楽しみにしておくよ」


--------


「ここが基礎魔法クラスの教室か」


基礎魔法クラスの教室は、塔の中層階に位置している。


扉を開け教室へと入る。


「受験の筆記試験を思い出すな」


講堂の大きさはあの時よりもだいぶ小さいが、それでも200席近くはあるだろう。

授業開始まであと15分程あるが、1番最初の授業ということで多くの生徒が席に着いている。

どうやらプロメーテの生徒だけではなく、アーレウスの生徒も一緒に受けるようだ。


「ドラゴ、こっちこっち!」


名前を呼ばれた方向を見ると前の方の席でフェンがこちらの手を振っている。


無視するのもなんだしな。


俺はフェンの座っている席まで移動する。


「フェン、さっきぶりだな」


「ドラゴもな!席取っておいたぜ!」


なるほど、通りで3人掛けの席に1人で座っているわけだ。

この席なら講義も聞きやすそうだし、せっかくのフェンの好意を無下にするのも心苦しい。


「ありがとな」


「いいってことよ!それに俺って魔法が苦手なんよね。ドラゴ、入試1位ってことは勉強も出来るんだろ?分からない時は教えてくれよ」


そういうことか。


「俺だって魔法についてはそんなに知らないぞ。詳しい奴は知ってるけど」


「ええっ?!そんなっ!」


そんなに悲痛な顔するなよ、まったく。


「まあ、俺に分かる範囲でフェンが分からない事があれば助けてやるよ」


「ドラゴ、いや、ドラゴ様!ありがとう!」


フェン、よっぽど嬉しいんだな、千切れそうなくらい尻尾を振ってるよ。


「あら?見覚えがある顔だと思ったらドラゴじゃない!」


げっ、この馬鹿みたいにデカい声は、、、


後ろから掛けられた声に恐る恐る振り返ると、そこにいたのは真っ赤な髪の毛が特徴の獣人族の女の子。


「シャーリーか、なんか用か?」


「なんか用か?っじゃないわよ!あんた、私に嘘ついたわね!」


は?


「なんで俺がわざわざお前に嘘つく必要があるんだよ」


「だってあなた推薦組試験にいなかったじゃない!」


あーそういうことかー。


「ちょっと手違いで自主受験組と一緒に試験を受けたんだよ」


「何それ?!今の話だけじゃ、あんたが推薦組だったって証拠にならないじゃない!」


あーうるせー。


「じゃあ、誰か先生にでも聞けばいいだろ?「ドラゴ君は推薦組ですか?」ってさ」


「それもそうね、わかった。この話はこれくらいでいいわ」


おっ、やけにあっさり引き下がったな。


「それなら良かった。じゃあな」


「まだよ!あなた入試成績1位らしいわね、勝負しなさい!」


出た!ホント面倒くさいなこの子!


「元気が良いのは良いことですが、そろそろ席に着くことをお勧めしますよ。シャーリー・ロマ・グレゴール」


げっ!


シャーリーが後ろを振り向くとそこにいたのはディミトリス・コンクラーダ。


このクラスの担当はディミトリスか。


「あなたは?」


どうやらシャーリーはディミトリスを知らないらしい。


(わたくし)は、この基礎魔法クラスを担当する教師、ディミトリス・コンクラーダです。間もなく始業時間です。ご自分の席に戻られては?」


ディミトリスは鋭い視線でシャーリーを見つめる。

流石のお転婆娘も先生には敵わないようだ。小さく「はい」と返事をして自分の席へと戻っていった。


ディミトリスはシャーリーが席に戻るのを確認すると教壇へと移動した。


お、おっかねぇ。

ディミトリス、いや、ディミトリス先生を怒らせるのはやめておこう。

そう固く決心する俺であった。


ん?そういえばフェンが全然喋らなくなったな。


隣の席に視線を向けると、尻尾を丸め耳を倒してガタガタと震えているフェンがいた。

そんなにディミトリスが怖かったのか?


「おい、フェン。大丈夫か?」


「あ、ああ。めっちゃ怖いぜ、あの先生」


「ああ、そうだな。逆らわない方がよさそうだ」


「それに、獅子人族の姫がいるなんて」


「獅子人族の姫?」


フェンに詳しく聞こうとしたその時、講堂内に始業ベルが鳴り響く。


「では、基礎魔法クラス、座学を始めます」


ディミトリスが授業の開始を宣言し、話し始める。


ん~、授業中の私語はさっきのディミトリスを見た後じゃリスクが高すぎるな。席も前の方だし。

シャーリーが獅子人族の姫ってのはちょっと気になるけど、授業が終わった後でフェンに話を聞いてみるか。


シャーリーの件は一旦保留だ。

俺はディミトリスの話に集中する。


「この基礎魔法クラスで皆さんが学ぶのは、文字通り魔法の基礎です。皆さんは生まれてからこの学院に入学するまで、さまざまな魔法を目にしてきたと思います。その魔法がどのように生まれ、発展してきたのか。そもそも魔法とはなんなのか。そういった歴史的知識や学術的知識。また、実際に魔法を使用する為に必要な実践的知識。このクラスで教えるのはそんな知識の一端です」


ディミトリスが生徒を見渡しながら話し続ける。


「偉大な先達が切り開いた道を歩むことで効率よく魔法について学ぶことができます。それと同時に常に新たな発見と閃きを得られるよう努力してください。我等が学院長はおっしゃいます。「世界とは常に変化をしていくもの、頑迷な頭ではその変化を見落としてしまう」と。知識は宝です。ですが、現在の知識が絶対のものではないということを頭の隅に置いて授業に取り組んでください。必要なのはそう、ちょっとした遊び心です。授業中に羽目を外すということではないのでそこはお気を付けを」


最後の一言に込められた僅かな殺気と氷の視線が生徒たちを震え上がらせる。


「では、教科書を配ります」


〈『魔法』とは?


まず、この世界には大気中に『魔素』と呼ばれる物質が漂っている。

それを体内に取り込み『魔力』へと変換する能力を『魔法力』を呼ぶ。


魔法力が高い者ほど魔素を取り込む量や速度が大きくなり、また、魔素から魔力への変換速度や変換効率が良くなる。

セルミラーレに存在する人間、そして生物は、呼吸によって取り込んだ魔素を魔力へと変換して体内に魔力を蓄えている。しかし、あくまでも無意識の内にだ。魔法力を意識的に使用する為には訓練を要する。また、体内に蓄えられる魔力の量も魔法力に依存する。


では魔法とはどういった現象なのか。

魔素から変換した魔力を使用して様々な事象を引き起こす力、あるいは技術を魔法と呼ぶ。魔法の威力や規模は使用された魔力量や魔力の質、使用者の想像力や集中力に依存する。例えば、生活魔法として馴染みのある〈水創造ウォータークリエイト〉は使用者の魔力をそのまま水へと変質させて水を生み出すものだが、魔法力が乏しければコップ一杯の水を創り出すだけで体内の魔力を使い切ってしまう。一方、魔法力の高い者が扱えば鉄砲水並みの水量を生む。


魔法力は後天的に鍛えることもある程度は可能だが、絶対値は先天的に決まっているとされる。また、種族による違いも大きい。


ちなみに、『魔法』と『魔術』は別物である。


魔術は、魔素を使用してあらかじめ用意した魔術媒体や魔法陣を起動し事象改変を行う技術である。魔力は必要としない為、魔道具さえあれば魔法力が低い者でも魔法と同じような効果を得られる。〉


なるほどね。

今まで何気なく使ってたけど魔道具って魔法じゃなくて魔術だったのね。


それにしても爺ちゃんが俺に魔法を教えなかったのは、教えられなかったからなのか?


爺ちゃんの魔法はこの世界の(ことわり)から外れてるって言ってたからな。

上位者のシステムが何たらかんたらって。


その後、ディミトリスの授業は若干堅苦しくはあるが存外に面白く退屈せずに済んだ。

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