26話 入学式
怒涛の急展開だった面接試験を終え、晴れて?俺とリオレスは学院の入学受験に合格した。
「おう、お疲れ」
部屋を出ると学院長が言った通りノイアーが待っていた。
「面接はどうだった?」
「ん〜、疲れた!あと、合格だってさ」
「ははは、だろうな。それにしても、学院長に振り回されて大変だったなお前ら。まあでも、とりあえずは合格おめでとう!本当に大変なのはこれからだけどな!」
「どうも」
「ありがとうございます、ノイアーさん」
「どういたしましてだ、それじゃあ外まで送るぞ」
俺とリオレスは歩き出したノイアーの後に続く。
「そういえば、ミレイは大丈夫か?俺たちが受けた試験にはいなかったと思うんだが」
「ミレイちゃんなら推薦組と一緒だ。身体の方はしっかり回復してるよ。心の方もだいぶ良くなったが、こればかりは時間が掛かる。何か大きなきっかけでもなければな」
「そうか」
「無事に合格できればいいね」
「大丈夫だろ」
試験に臨めるくらいには回復したということなら一先ずは大丈夫みたいだな。
ミレイの回復魔法なら実技試験は高い評価が貰えるだろうし、面接試験も問題ないだろう。
「入学式で会えるさ」
「今度は時間通りに来ようね」
「あははは、そうだな!」
早起きは三文の徳なんていうけど早すぎるのは考えものだな。
3日後。
俺とリオレスは真新しい制服に身を包み、学院の門の前に立っている。
紺色のブレザーに白いスラックス、ネクタイの色はワインレッドだ。
日本の中学、高校でもよく見かけるような至ってオーソドックスな制服だ。
ちなみに女子はスカートで、ネクタイではなくリボンだ。
門の前に堂々と立っている俺たちを邪魔くさそうに避けて、新入生と思しき少年少女が塔の中へと歩いていく。
「ドラゴくん!リオレスくん!」
待ち人来たり。
長い青髪を靡かせながら走ってくるのは晴れて学院生となったミレイだ。
実は受験が終わって宿で休んでいる間に、ノイアーからミレイが合格した件を伝えられていた。
その際に、入学式の日に学院の門の前で待ち合わせをする旨をノイアーからミレイに伝えてもらえるように頼んでおいたのだ。
「久しぶりっ!」
「ああ、久しぶりだな。無事合格したようでなによりだ」
「久しぶり、僕たちもいろいろあったけど何とか合格したよ。これでお互いに学院生だね」
「そうね、改めてよろしくね2人とも」
「よろしくな」
「よろしく」
体や魔法力の方は本当に大丈夫そうだな。
ただ、明るく振る舞ってはいるが心の回復はまだまだかかりそうだ。
辛い心を努めて明るく振る舞うことで誤魔化しているってところかな。
「それじゃあ、もうすぐ時間だし入学式に行きますか」
「ああ」
「ええ」
俺たち3人は入学式の会場へ向かうべく塔へと歩みを進める。
塔の入り口を守る竜の像に学生証を見せ中に入る。
ちなみに学生証は宿で休んでいる間に制服と一緒に届けられた。
学生証とは言っても日本の学校でよくあるカードタイプの物ではなくシルバーの指輪だ。
少し太めの指輪に学院の紋章が施されており、利き手の親指に着用するように指示がされている。
竜の像は学生と利き手につけられた指輪を同時に認識するとデータベースに登録する。
次回以降は自動で通行を許可してくれるのでいちいち指輪を掲げて見せる必要はないとのことだ。
顔パスってやつだな。
吹き抜けのエントランスへと進むと俺とリオレスの面接を担当していた人物が立っており魔法陣で次々と生徒をどこかへ転送している。
名前は確か、
「こんにちは、ディミトリス先生」
ああ、そうだ。ディミトリス・コンクラーダだ。
「ああ、君達は」
どうやらディミトリスも俺たちのことを覚えていたらしい。
それにしてもリオレス、1回しか聞いていない上に緊張した場面で聞いた面接官の名前がよくすらすら出てくるな。
「どなた?」
どうやらミレイは面識がないらしく小声で訪ねてくる。
「学院の先生。俺たちの面接試験の担当だった人」
「そう、エルフなのね。とっても綺麗」
「お褒めにあずかり光栄ですね、ミレイ・カタールコート」
おっと、聞こえていたようだ。流石エルフ、耳がいいな。
「改めて入学おめでとう諸君。今から魔法陣で入学式の会場へと転送するのでこちらへ」
ディミトリスに指示され、床に描かれた大きめの魔法陣の上に3人一緒に立つ。
「では、良い入学式を」
次の瞬間、目の前の景色が切り替わる。
転送先は少し狭めの部屋だ。
「はい、魔法陣から出て下さいっと」
転送先で案内をしているのは見覚えのない先生だった。
足元に目を移すと転送される前に乗った魔法陣と同様の魔法陣が床に描かれている。
双方向の転移魔方陣か?いや、転送って言っていたから魔法陣はあくまでも転送魔法を行使する際の目印か。
「ドラゴ、何してんの早く行くよ。邪魔になってる」
「ああ、悪い」
転送された部屋から出るとそこは筆記試験会場よりさらに広い巨大な講堂だった。
すり鉢状の講堂はほとんどが空席だが、低い位置にある席には結構な人数が座っている。
「ようこそ我らが偉大なる学び舎、『学院』へ!ここは『地下大講堂』。君たち新入生の席はあそこだよ。案内するからついておいで」
「あなたは?」
「ああ、ごめんごめん。自己紹介がまだだったね。イザイヤ・ラ・ヴァスコラーナ・ウルディン、7年生だ。イザイヤと呼んでくれたまえ」
イザイヤと名乗った青年は7年生、つまり年齢でいうと17歳ぐらいか。
やけに長い名前だ。貴族かなにかか?
それに若干だが血の匂い?がするし、一見人間に見えるが、青白い肌、色素を失ったような白い髪の毛から察するに人間とは別の種族だろう。
だが、イザイヤという人物と相対した時に最も目を惹くのは、鮮やかな赫い瞳だ。肌や髪の毛から色素を奪い取って輝いているかのような鮮やかすぎる瞳によって、人外の印象が強くなっている。
「新入生のドラゴ・グリントだ」
「同じくリオレス・アーロティガです」
「同じくミレイ・カタールコートです」
「よろしくね。それじゃあ、後の予定もあることだし席まで案内するよ」
イザイヤに案内をされて座った席は最前列から4番目の列だった。
前の列はほとんど埋まっており、新入生同士がおしゃべりを繰り広げている。
俺たちの後ろの席も埋まり、ほとんどの新入生が席についたと思われる頃、上段の席が埋まり始める。
どうやら在院生のようだ。
新入生だけでも大人数だが全学院生が揃うと圧巻だな。
あれだけ広かった『地下大講堂』がかなり狭く感じる。
「すごい数ね。全部で何人くらいいるのかしら?」
「新入生だけで300人以上いたと思うし、さっき案内してくれたイザイヤって人が7年生って言ってたから単純計算で2000人以上はいるだろうね」
「ちょっとした村の人口より多いわね」
在院生が席に着くと講壇に学院長、トト・カーン・ハーラが現れた。
「静粛に」
静かな声だ。
だが、ある種の圧力を伴って発せられた声に講堂内は水を打ったように静まり返る。
「よろしい、今日は学道を共にする新たな仲間が、この学院に加わる記念すべき日だ。
まずは、新入生諸君、入学おめでとう。我が『学院』へようこそ、歓迎する。
この『学院』はあらゆる分野の学びの場だと思ってもらって構わない。
学びは常に共にあるものだ。
探求に必要なものは1つを除いてすべて『学院』にある。
そう、1つを除いてだ。
あと1つ、必要なものは君たちのちょっとした遊び心。
自らの好奇心に従いなさい。
さぁ、大いに学びたまえ!!若人よ!!!」
万雷の拍手が大講堂を揺らす。
俺の、俺たちの学院ライフがいよいよ始まる。




