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空位の魔王と反逆勇者の孫  作者: かわうそ
『学院』入学編
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24話 面接試験

「なんだこりゃっ?!」


演習施設のドアが開くと同時に開口一番、ノイアーが言い放った。


「おい、ドラゴ、リオレス無事か?」


「あ、ノイアー久しぶりだな」


俺は寝ころんだまま、近づいてくるノイアーに軽く手を振る。


「おいおい、結構なダメージじゃねぇか。見ただけで分かるぞ。それにこの有様」


ノイアーが見ているのは見るも無残な姿に変貌を遂げた演習施設だ。


床、壁、天井、至る所が皹割れ、破壊されている。

俺や柳玄の攻撃やリオレスの魔法の威力を物語る被害状況にノイアーが深い溜息をつく。


「はぁ、お前らの試験官に因幡柳玄が選ばれたって聞いた時からこうなるんじゃないかと思っていたが案の定だ。この演習施設の修繕は俺の仕事なんだよなぁ」


「それはご愁傷様」


「うるせー!それにしてもお前ら良く五体満足で済んだな、手足の1本くらい折られた上で白目向いて気絶させられるくらいを想像してたんだけど」


「大分手加減はされたな」


「そうだね、本当なら始まって30秒でノイアーさんが言うようになってもおかしくなかったからね」


確かに、舐めてかかった時点で本気で来られていたら一瞬で意識を刈り取られても不思議じゃなかったな。

そう考えると俺達の実力をしっかりと計った柳玄はちゃんと試験官だったってことか。


「それで?ノイアーが面接試験の案内なのか?」


「ん?ああ、そうだ。あと、お前らにちょっとショッキングな話がある」


「「ショッキングな話?」」


俺とリオレスは2人そろって首を傾げる。


「ああ、お前ら推薦組だろ?」


「そうだな」


「そうですね」


「今受けてる試験、自主受験組向けの試験だぞ」


「「ん?」」


俺とリオレスは2人そろって首を傾げる。


「お前らトーカって先生に会ったろ?そのトーカ先生に担がれたんだよ」


「「えええええええええええええええ??!!!」」


そんな馬鹿なっ!!


「大体おかしいと思わなかったのか?受験票に試験時間が書いてあるだろ?推薦組の試験はこの後だぞ」


「いやだって、受験票に記載されている時間が間違っているって説明された上に、試験がもう始まるって言われて落ち着いて考えてる暇なんてなかったんだよ」


というか、教員に騙されるとは考えてないって。


「あ~、そういう感じか、なら仕様がないか。トーカ先生の方が上手(うわて)だったってことだな」


「え?でも、俺達って推薦組だけど自主受験組の試験受けて大丈夫なのか?」


「それは問題ないな。トーカ先生が手続したってのもあるが、推薦組の試験は実技試験と面接試験だから内容は大差ない。筆記は免除だけどな」


「それじゃあ僕たちは受けなくてもいい筆記試験を受けさせられたって訳か。なんでトーカ先生はそんな真似を?」


「う~ん、正直俺には理由までは分からない。あの方は愉快犯的な部分があるからなぁ、う~ん」


ノイアーはうんうん唸りながらトーカの動機を考えているが、正直今更どうでもいいな。


「話を戻すけど、俺たちはこのまま次の面接試験を受ければ受験自体は終わりってことでいいのか?」


「そうだな。筆記試験はともかく、実技試験は受けたんだ。今から推薦組の試験を受け直す必要はないだろうな。このまま面接試験を受けたあとは合否を待つだけだ」


「なんか釈然としないけど合否判定に支障がないならいいか」


「そうだね」


「それじゃあ面接試験に案内するぞ」


面接会場は、実技試験を行った演習施設がある階層より2階層上らしい。

今回は移動する階層が少ないため螺旋階段を使用して移動した。


「面接ってどんな感じ?」


移動しながら面接試験についてノイアーに聞いてみる。


「面接?幾つか質疑応答をするだけだな。質問の内容は担当の試験官が独自に考えるからどんなことを聞かれるかは分からないけど、そんなに難しいことは聞かれないはずだ」


以外にも答えが返ってきた。

ノイアーなら「試験官が試験内容について受験生に話せない」とかなんとか言いそうなもんだが。


「質問内容を統一してないの?」


リオレス、良い質問だ。

確かに普通なら学校側から受験生への質問を統一すると思うんだが。


「質問への答えの正しさを見るわけじゃないんだよ。学院側は生徒の個性が知りたいのさ」


「なるほど」


「それじゃあ、質問タイムは終わり。着いたぞ、ここが面接会場だ」


目の前にあるのは両開きの木製の扉。

扉に使われている木材は重厚で、かなり年季が入っているように見える。


「中で先生方がお待ちだ。頑張れよ2人とも」


「ああ!」


「頑張ります!」


扉を開くとそこは学校の教室程の広さの殺風景な部屋だった。

目の前には3脚の丸椅子。

その先には長机があり3名の面接官がこちらを見つめている。


「失礼致します。ドラゴ・グリントです」


「失礼致します。リオレス・アーロティガです」


面接官の1人は見覚えがある人物だ。

先程まで話題になっていたトーカが真ん中に座っている。

トーカの両隣は知らない人物だ。


「では、2人とも座ってください」


トーカに促されて俺とリオレスは椅子に座る。

面接官から見て一番右の椅子にリオレス、真ん中に俺だ。


俺とリオレスが座ると面接官の3人が立ち上がった。


「私は担当面接官のトーカです。本来、面接試験は面接官3名、受験生3名で行うのですが、今回は特例であなた方お2人と私たちで面接を行います」


「同じく面接官のヤーダダダ・メッシュと申す」


「ディミトリス・コンクラーダです」


3人は名乗り終えると再び席に着いた。


ヤーダダダ・メッシュと名乗ったのは深緑色の蓬髪を腰まで伸ばしたドワーフ族の男だ。

俺が今までこの世界で生きてきて出会ったドワーフ族はズズ爺1人だけだ。

ズズ爺はいわゆる物語で出てくるドワーフ族のイメージ(背は小さいが体つきはがっしりして力が強い)そのままだったが、ヤーダダダは筋肉質で背の小さい人間の成人男性といった感じだ。

そんな人間にも見えるヤーダダダがドワーフ族だと確信を持つに至った理由、それは長い髭を束ねている紐についている紋章だ。

ズズ爺の指輪にも同じ紋章が刻まれていた。ドワーフ族の国の紋章らしい。


ディミトリス・コンクラーダはエルフ族の女性だ。

薄水色のショートカットの髪型が似合う美人で、エルフ族にしては珍しく眼鏡を掛けている。

白衣を着ていることから窺うに研究者なのだろうか?

ただ、立ち振る舞いを見るに戦闘力も高そうだ。


しかし、エルフなのにリオレスの姓に反応を示さなったな。

リオレスの姓がエルフ族の中でも有名ならちょっとは反応がありそうなものだが、違うのか。

もしくは事前に知っていたからか?無表情過ぎて全く読めないな。


「では、面接を始めます」


おっと、考え事はここまでだな。


「では、まずはリオレスくんに質問です。私の道案内はいかがでしたか?」


トーカからリオレスへの質問だが変な質問だな。


「え、えーと、」


分かるぞ、この質問は答えに困る。


「試験会場まで行く時はあの通路が凄く長く感じました。でも実際は大した長さじゃなかったのでどうしてそう感じたんだろうと疑問に思っています。僕には魔法や幻術を使われた気配も感じられませんでした」


確かに、俺も魔法とかを使われた気配は感じなかったな。


「ありがとうございます。では、次にドラゴくんに質問です。私とあなた、今戦ったらどちらが勝ちますか?」


えっ?

今戦ったらどっちが勝つか?トーカの能力や戦闘スタイルが分からないことには何とも言えないぞ。


「正直に言いますと分かりません。可能性だけで言わせて頂ければ先生が勝つ可能性の方が高いと思います」


「ありがとうございます。ヤーダダダ先生、ディミトリス先生、ご質問は?」


「俺からはないでごわす」


(わたくし)からもございません」


トーカから話を振られた2人は首を横に振りながら答えた。

しかし、この2人、俺とリオレスより緊張しているように見えるんだが気のせいか?


「では、面接試験を終了します」


えっ?!終わりっ?!


トーカからの突然の試験終了の宣言に戸惑うのは俺だけではなく、隣に座っているリオレスも同様だ。


「リオレスくん、ドラゴくん、君達に私から謝りたいことがあります」


状況を飲み込めずにいる俺たちに掛けられた声はトーカからの謝罪の言葉だった。

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