11話 退治して対峙
どうにも上空に飛んでいる存在が気になるので、ノイアーに聞いてみるか。
「レッサードラゴン達が飛んでいるさらに上空に何か飛んでるんだけどあれが何か分かるか?」
「上空に何か飛んでる?」
ノイアーが空を見上げる。
「湖の真ん中辺りの上空だな。結構高い位置で円を描きながら飛んでいるぞ」
「湖の真ん中の上空?そんなに高い所を飛んでいるレッサードラゴンは見当たらないが」
ん?なんだろう、話が噛み合っていない気がする。
「飛んでるのはレッサードラゴンじゃないぞ。もっとでかいドラゴンだ。リオレス、見えるだろ?」
俺の隣で空を見上げているレオレスにも見えてる筈だ。
確かに、そいつが飛んでいるのはかなり高い所だが肉眼で見えない大きさじゃない。
「ごめん、ドラゴ。僕にもレッサードラゴンの群れしか見えない。ドラゴが言っている大きなドラゴンは見つけられないよ」
「ん~、私にも見えないよ」
リオレスとミレイも空を見上げて首を捻っている。
どういうことだ?
俺以外の3人には見えていない?
「ん?ちょっと待って、つまりドラゴにしか見えていない?」
ん?ちょっと待てよ。
俺にしか見えないってことは、
「ドラゴ、もしかして!」
リオレスも気がついたか。
「「隠蔽!」」
俺にだけ見えているのは上空を飛んでいる存在が魔法で姿を隠しているから。
そして、あのドラゴンの背にはドートレスがいるはずだ!
姿を消して襲撃の様子を観察しているに違いない。
「君達、一体なんの話をしているんだ?」
俺とリオレスが話す内容が分からずにノイアーとミレイが困惑している。
「ドラゴの目には隠蔽されているものを見破る力があるんですよ、ノイアーさん」
リオレスの発言を聞いたノイアーは興味深そうに俺に視線を向ける。
「つまりドラゴくんの眼にも特殊な能力があるってことか?」
「自分でもよく分からないが、俺の眼はどうやら隠蔽看破の魔眼らしい」
「へ~、それは驚いた!私の人生で再び魔眼を持つ者に会えるとは驚きだ。もし、ドートレスが現れれば3人目だ。それで、ドラゴくんの眼には確かに姿を隠して上空を飛んでいるドラゴンが見えるんだね?私には全く見えないが」
ノイアーは、俺には見えているドラゴンが自分の目に本当に映らないのか確認するように再び空を見上げている。
「間違いない、ドラゴンが飛んでいる。たぶん背中にはドートレスが乗っているんじゃないか?地上からじゃ姿は確認できないけどな」
「おそらく間違いないだろう。襲撃の目的が何であれ、不測の事態に備えて見張っていると考えられるからな」
しかし、なぜドートレスは自分で仕掛けてこずに使役したレッサードラゴンで襲撃するという回りくどい方法を取るのだろう?
「ノイアーさん、ドートレスはなぜ上空で隠れているのだと思いますか?レッサードラゴン達に襲わせるより、『七星』である本人が襲撃した方が目的を達成し易いと思うのですが」
リオレスも同じ疑問を浮かべたようだ。
「ここは奴らにとってアウェイだ。他国で大っぴらに襲撃を行うほど奴らも馬鹿じゃない。いくら『七星』、いや聖ケルケト教会でもリドゥエンドーマに正面切って宣戦布告になるような真似は出来ないさ」
「つまり、学園国家には人族最高戦力を含む教会戦力や、聖戦となった場合、教会に協力するであろう信仰国を退けるだけの戦力があると?」
「仮にも国家を名乗るんだ、自衛の手段としての戦力は持っている。だが、あくまでもリドゥエンドーマは人々に学びの機会を提供する為の国だ。他国を脅かすことはしない、戦闘を行う場合は自国を守る為だけだ。ところでドラゴくん、ドートレスが乗っていると思しきドラゴンに降りてくる様子はないんだね?」
リオレスの質問に答えていたノイアーが、今度は俺に質問をしてくる。
「そうだな、降りてくる様子はない」
「それは都合がいい。では、そのドラゴンは取り敢えず放置だ。刺激したところでこちらにはデメリットしかない。奴が介入してこない内に、当初の作戦通りレッサードラゴンの数を減らすぞ」
「了解。それじゃ、ドートレスの奴が動き出したら俺が牽制する。奴はまだ俺たちが気付いているとは思っていないから、不意を衝けばダメージも与えられるはずだ」
「どうやって牽制するつもりだ?ドラゴくんには遠距離攻撃の手段がないだろ?」
「身体能力を強化してその辺の岩でもぶん投げる」
今の俺が本気で投げれば50キロ程度の重さなら音速で投げられる。
それで倒せる程甘い相手とは思わないが、予め身体強化を発動しておけば岩を投げる際は魔法の気配もないから不意を衝くには持って来いだろう。
「岩を投げるって?まぁ、その辺にある岩を投げるつもりならこれ使いなよ。大地よ、その姿を改めよ!【岩石の創造物】」
ノイアーが魔法を詠唱すると地面から岩で作られた三叉槍が生えてきた。
槍には装飾の類が殆どないため無骨な印象を受ける。
「岩を投げるよりも投げやすいだろ。それに強度もある。レッサードラゴンぐらいなら余裕で貫通させられるぞ」
俺は身体強化をして三叉槍を手に取ってみる。
槍は見た目から判断出来ないほど重量があり、とてもじゃないが身体強化をしていなかったら持ち上げるどころかピクリとも動かせなかっただろう。
かなりの質量を圧縮して形成されているみたいで、重い上にノイアーが言ったようにかなり硬い。
これならわざわざ貫通させることもない、思いっきりぶっ叩けばレッサードラゴンのか細い首なんて骨ごと粉砕できる。
「ありがたく使わせてもらうよ」
「さてと、やりますか。ミレイちゃんは魔法障壁の中にいてね」
「分かりました。ドラゴくん、リオレスくん、頑張って!」
「ああ」
「やれるだけやってみるよ」
ミレイからの激励に答えた俺達は魔法障壁の外へと向かう。
「ノイアーが外に出てもこの魔法障壁って維持できるのか?」
「それは問題ない。俺が意識を失わない限りは障壁は維持される」
俺、リオレス、ノイアーの3人は障壁の外へと出る。
内側から出る分には障壁の影響を受けないようだ。
ちなみに避難して来た時は、ノイアーが許可を出したから入れたみたいだ。
「それじゃあ、リオレスくんからどうぞ」
レッサードラゴン達は魔法障壁から出てきた俺達を攻撃するべく、けたたましい鳴き声を上げながら群がってくる。
GYAAAAAA!!!
迫ってくるレッサードラゴンに動揺することなくリオレスが魔法の詠唱を始める。
「遍く風よ刃となり、その速さ、その鋭さ、その強さをもって敵を尽く斬り滅ぼせ!【風刃の大嵐】」
ゴウッ!!!!
リオレスの詠唱が終わるとともに唸りを上げて現れた竜巻が、レッサードラゴンの群れを覆いつくし風の刃でその体を切り刻む。
ズタズタに切り裂かれたレッサードラゴンから噴出す血が風に巻き上げられる為、今や竜巻は天と地を繋ぐ真っ赤な柱のようだ。
リオレスの長文詠唱か、初めて見たな。
顔に疲労の色が浮かんでいるところを見るとかなり魔力を注ぎ込んだみたいだな。
それにしても、何が飛行能力を奪うくらいの威力だ。
謙遜もほどほどにしないと嫌味にしかならないぜ、リオレス。
「はははははっ!素晴らしいね!11歳でこの魔法の規模、威力!申し分ないよ、リオレスくん!」
ノイアーが興奮している。
そんな笑い方する奴だったっけ?キャラ変わってないか?
リオレスが風刃の大嵐を解除すると、魔法の影響範囲にいたレッサードラゴン達が落ちてくる。
地面で横たわるレッサードラゴン達は、風の刃に切り裂かれて見るも無残な姿となっている。
バラバラ死体となっている固体も少なくない。
今の魔法だけで半分以上は倒したな。
「ん~、結構数が減ったな。それじゃあ、次は私の番だな。雷よ!【連鎖する雷撃】」
ノイアーが掲げた右手から電撃が迸る。
放たれた電撃はこちらへと飛んできた1頭のレッサードラゴンに命中した。
次の瞬間!
バチッバチッバチッバチッ!!!!
初めに電撃が当たったレッサードラゴンの体から数多の電撃が放たれ、他のレッサードラゴン達に襲い掛かる!
その雷はまるで意思を持っているかのように次々とレッサードラゴンに襲い掛かり、ついには1頭も残さずに丸焦げの死体を量産した。
「あの~、俺の出番がないんだが?」
「いや、次が来たな」
「まじか?!」
湖を囲む木々の上から再びレッサードラゴンが姿を現す。
いやいや、一体全体何頭のレッサードラゴンを使役してるんだよ。
「リオレスくん、魔法力はまだ大丈夫か?」
「はい、大技は暫く使えませんが」
「では、無理はせずサポートを頼む。ドラゴくんは私の魔法の巻き添えを喰らわないように好きに立ち回ってくれ」
「了解」
ノイアーが再び魔法を行使しようとした時、
上空の気配が動いた!!
「おらぁああああ!!」
俺は気配を察知した瞬間、三叉槍を上空から急降下してくるドラゴン目掛けて投擲するが、ドラゴンの反応が速く僅かに掠めただけだった。
しかし、攻撃によって隠蔽が解除されたのか、ドラゴンとその背中に乗った人物が姿を現す。
「ちっ!だめか。ノイアー!リオレス!降りてきたぞ、奴だ!」
「分かっている!お前ら巻き込まれるなよ!破壊の化身たる雷よ!【天砕く雷槌】」
天から極大の稲妻が降ってくる。
湖の4分の1を呑み込む大きさだ。
ドッッゴォォォーーーーーーーンッッッッ!!!!!
雷光が視界を白く染め、襲いくる爆音と爆風。
くそっ!なんて、威力だ!
俺は吹き飛ばされないように身を屈めて踏ん張る。
少し離れた場所では、リオレスが風の防壁を張って耐えている。
魔法障壁に守られている馬車は無事だったようだが、ノイアーの魔法が直撃したレッサードラゴン達は跡形もなく消滅し、範囲外にいた固体は爆風で吹き飛ばされた。
「やったか?」
ノイアー、それは言ったらあかんやつや!
「おいおい、いきなり上級魔法をぶっ放して来やがって」
ほら。
爆風によって巻き上がった土埃が晴れると、そこにいたのは無傷の紫竜。
そして、その背中に右眼を黒い眼帯で覆った人物。
癖のある白髪を肩まで伸ばし、まるでモデルの様な長身痩躯の男は、白い装衣に身を包んでいる。
左右の腰にある禍々しい気配を発する短剣が気になるな。
こいつがドートレス・フェクダか。
強者の気配がひしひしと伝わってくるぜ。
「俺の従僕達を随分殺ってくれたみたいだな。お返ししてやるぜ」




