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空位の魔王と反逆勇者の孫  作者: かわうそ
『学院』入学編
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10話 作戦会議

「私が見たところドラゴくんとリオレスくんの力は既に中堅冒険者を超えている。まったく、その歳で末恐ろしいことだが、この状況では頼もしい。レッサードラゴンの数を減らして、応援が到着するまで魔法障壁を持たせる可能性を上げておきたい。協力してほしい」


「ここでじっと待つってのも性に合わないからな。俺は協力させてもらう。リオレスはどうする?」


「ドラゴが戦っているのに僕だけ見てるってのもね。勿論、協力するよ」


リオレスも加わってくれるならありがたい。


「私もサポートくらいなら出来るよ!回復は任せて」


「ほー!ミレイちゃんは回復魔法が使えるのか。ドラゴくんも戦闘能力が高いし、リオレスくんも魔法に長けている。三者三様で優れた能力を持っている。やっぱり、君達面白いな」


ノイアーが褒めてくれるが、俺やリオレスは別に珍しくもない能力だが回復魔法は別だな。


ミレイ、流石は聖女候補ってことかな。


そもそも、回復魔法は適性がないと殆ど効果が見込めなくなるからな。

自分自信を回復するならそれ程難しくはないが、他人を回復させようとすると途端に別次元の難易度となる。

回復する相手の魔力に拒絶されないよう自分の魔力を調整しなければならないし、その調整も1人1人違ってくる。

針の穴を通すような緻密な魔力調整の才能と自身と相手の魔力とを同調させる為の経験値が必要だ。


超一流になれば部位欠損も回復できるが、そこまでの術者は滅多に現れない。

わずか11歳で回復魔法を他人に行使できるレベルなら、もしかするとミレイなら超一流の領域に届くかもしれないな。


その為には、この場を乗り切らなきゃないが。


「ノイアー、作戦はあるのか?」


「作戦の前に1つだけ話しておこう。このレッサードラゴンの群れによる襲撃は、おそらく何者かによって仕掛けられたものだ」


「根拠は?」


俺も、今回のレッサードラゴン達の襲撃には違和感を覚えているが、そこまで断言出来るのは何故なのか興味があるな。


おそらく、この話は今回の戦闘において重大なポイントとなるのだろう。


ノイアーの表情からもそれが窺える。


「まず、君達は知らないだろうが、この辺りにレッサードラゴンは生息していない。これは、定期便の運航にあたって担当者達が定期的に調査をしているから間違いない。危険なモンスターなどが発生していた場合、その対処も同時に行なっているしな」


ふむ。


俺は黙って続きを促す。


「次に、そもそもレッサードラゴンは戦闘能力において闘馬(バトルホース)に劣る種族だ。闘馬が数頭ならまだしもこれだけの数だ、いくらレッサードラゴンの方が多いといっても襲い掛かれば返り討ちに合う個体も少なくないだろう。だから、仮にレッサードラゴンの群れが自然発生だったとしても襲ってくることはない」


「なるほど。もしそれが事実だとすると2つの疑問が浮かんでくるな。まずは、」


そう言って俺は右手の人差し指を立てる。


「目的。その人物は、何故レッサードラゴンの群れで定期便を襲撃するのか?そして、2つ目」


俺はさらに中指を立てる。


「手段。どうやって大量のレッサードラゴンをけしかけてきたのか?」


「では、2つ目の疑問に答えよう。私には、レッサードラゴン達を使役、もしくは支配している人物に心当たりがある」


ノイアーの視線が一瞬だけミレイに向いたような気がするが、何事もなかったかのようにこちらに向き直った。


「誰だ?」


「ドートレス・フェクダ」


ドートレス・フェクダ?


「聞いたことがないな」


「聖ケルケト教会に所属する『七星』の1人、『眼星(がんせい)』だ。あまり表の仕事はしていない、主に教会の裏の仕事に携わっている」


また、『七星』かよっ!

そんな危険人物に1日で2人も関わり合いになるかよ普通。


しかし、相手が教会ってことはこの襲撃の狙いがミレイである可能性は高いな。

図らずも襲ってきた相手から目的も分かった。


ミレイの顔を見るとショックを受けているようだ。

無理もない。

平和的な思考のミレイにとって、所属先の教会が人々に危害を加えるような行いをしているのは耐え難いだろう。


「ミレイ、大丈夫かい?」


リオレスがミレイを気にかけている。

リオレスはミレイが苦手だが嫌いな訳ではないらしい。


「リオレスくん、ありがとう。私は大丈夫。でも、なんで教会がこんな襲撃をするの?何かの間違いじゃないの?ノイアーさん、何か知ってますか?」


「ミレイちゃんは聖ケルケト信者だったか。済まないが目的については分からないし、あくまでも私の推測だ。ただ、君には申し訳ないがドートレス、つまり教会が関与している可能性は高いと思う。」


ノイアーは理由が分からないとは言っているが、おそらく気づいているのだろう。

この襲撃の目的がミレイ・カタールコートの学院行きを阻むことだと。


先程の視線もそうだが、ノイアーは一介の御者の割に情報に精通しているみたいだし、そこまで知っていてもおかしな話じゃない。


問題は、学院行き阻止の手段がミレイを連れ去ることなのか、それとも、別の手段を選ぶのか、ということだ。


ミレイ自身も自分が襲撃の理由なんじゃないかと薄々察しているのではなかろうか。


それにしても、学院行きを阻止するならこんな大ごとにせずとも、出発前に拘束するなりすれば良かったんじゃないか?

ドートレスが襲撃を企てる労力を割くくらいなら、同じ『七星』であるニクスがミレイの出発を認めなければ済んだ話だ。

だが、ニクスはミレイの学院行きを渋々だが認めた。

その結果、ミレイが襲撃に遭うことをニクスは教えられていなかったのか?


んー、もう少し教会内の情報がないと全容が把握出来そうもないな。

まあ、派閥の争いなんかがあればニクスを陥れる為にミレイを狙うなんてこともあるかもしれない。


「そのドートレスって奴はどうやってレッサードラゴンを操ってるんだ?」


「ドートレス・フェクダは魔眼持ちだ。左眼だけだがな。これは奴の情報に基づく推測だが、魔眼の力は強烈な暗示による洗脳、支配などの類ではないかと考えられている。これは、ほぼ間違いない。ただし、能力使用に関しての詳しい条件はまだ分かっていない。精神的もしくは肉体的な強さを持つ者はその魔眼の力に抵抗出来るみたいだな」


相手を洗脳、支配する魔眼か。

やっかいだな。


「ノイアー、俺とリオレスならその魔眼に抵抗出来ると思うか?」


「君達ならまず間違いなく大丈夫だと思う。戦闘中に魔眼の力を行使するのは結構難しいらしいからな。ドートレスは魔眼の能力を最大限に活かしたい場合、時間をかけてじっくりと対象を支配すると聞いている。逆に言えば、捕まってしまったりすると、強者でも支配されるリスクが高まってしまうということだ」


つまり、目を合わせた一瞬で支配されたりすることはないと考えてよさそうだ。


「では、作戦の話に戻ろうか。作戦はシンプルだ。私とドラゴくんとリオレスくんでレッサードラゴンをできる限り討伐し数を減らす。二人は広範囲の攻撃手段を持っているか?」


「僕はありますよ。連続使用は難しいですし、レッサードラゴンを一撃で倒せるほどの出力は今は出せませんが。せいぜい飛行能力を奪うくらいですね」


「十分だ。ドラゴくんは?」


「俺は持っていないな。俺は基本的に身体強化魔法しか使えない。あとは補助として閃光魔法が使えるだけだ」


「それじゃあ、ドラゴくんには私とリオレスくんの範囲攻撃から漏れた個体の討伐をお願いしよう。状況に応じてレッサードラゴンの動きを阻害するために閃光魔法を使っても構わない」


分かりやすい作戦だな。

まあ、初めて組むメンバーとの戦闘で碌に連携も取れないだろうから妥当なところだが。


「1つ確認しておきたいんだが、ドートレスがこの襲撃に関わっているなら、レッサードラゴンが倒されれば出てくるんじゃないのか?」


この襲撃が単なる脅しじゃないなら、ミレイを狙って必ず現れるはずだ。


「懸念はそこだ。やつの支配の力は対象の傍にいる必要がないから、この近くにいるかどうかは分からない。仮に奴が現れたとしたらこっちは応援が到着するまで耐えるしかない。今ここにいる戦力だけでドートレスを倒すことは多分、不可能だ」


俺とリオレス、ノイアーがいれば倒せそうだがな。

1番最初に見た『七星』がニクスだったからだろうか?

俺の中での『七星』の強さが大したことのないイメージになってしまっている。

まぁ、ニクスもきっと強いのだろうが、俺の中では残念で哀れな護衛のイメージが強すぎる。


「そんなに強いのか?」


「周辺の国で奴ら『七星』と対峙して無事でいられる者は少ないとだけ言っておこう。ちなみに私は無理だな。『七星』が人族の最高戦力と呼ばれるのは伊達(だて)じゃない」


「もし、ドートレスが現れた場合に応援が来るまでどうやって耐えるつもりだ?」


「私が時間を稼ぐしかないだろうな。こう見えてもそこそこ強いぞ」


自分が犠牲になるつもりか。

ノイアーが強いのはなんとなく分かるが、話しぶりからしてドートレスの強さは誇張じゃなさそうだし、おそらく本当に勝てないのだろう。


時間を稼ぐくらいなら俺でもなんとかなるか?

どちらにせよ、やらなければやられるだけだ。


「いざとなったら俺も戦うさ。ノイアーがやられれば俺たちにも後がないからな」


「そうだね。その時は僕も一緒に戦うよ」


「私もできるだけ頑張るよ」


リオレスとミレイも覚悟は持っているみたいだな。


だが、これはミレイを守るための戦いでもある。

ミレイを危険に晒さずに済めば越したことはない。


どうやら、俺は自分で思っている以上にリオレスとミレイを気に入っているらしい。


普段なら出会って間もない女の子1人の為にリスクを取ることはしない。

その子を差し出しさえすれば俺やその他の乗客も助かる公算が高いのであれば、今回の場合、「ミレイを差し出す」という答えが合理的というものだろう。


中身は28歳の大人が11歳の子供と本気で仲良くしているなんて知ったら、前世の俺なら笑っていただろうな。


「君達にそんなことを言われたら意地でも応援が来るまで耐えてみせないとね。それじゃあ、あまり長話をしている時間もなさそうだしレッサードラゴンの駆除と行くか」


「ノイアー、その前に気になることがあるんだが」


「なんだ?」

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